199 / 221
第四部 〜止まった時間と動き出す歯車〜
第百九十七話
しおりを挟む
アインと打ち合いの後、さらに検証相手を探す為にウロウロとする。
端っこの方でエマとラーニャさんが二人で型の練習をしている様子が見えた。
アルージェは逸材を見つけたと、ニヤリと笑い二人に駆け寄る。
「エマ、ラーニャさん。お疲れ様です!」
アルージェが手を振りながら、近付くとエマとラーニャが気付き笑顔で迎えてくれる。
「アルージェ君。お疲れ様」
「ふふふ、アルージェ君は元気ですね」
「はい!それはそれはとても元気です!なんたって今日は新しい武器の試運転の日ですから!」
「アルージェ君、鎧が出来てからも、ずっと頑張ってたもんね」
エマはアルージェがここ最近ずっと付与をしていたのを知っていた。
「新しい武器ですか?」
ラーニャは顎に人差し指を置いて首を傾げる。
アルージェは内心でラーニャが食い付いてくれたことに喜ぶが顔には出さない。
「はい!これなんですけどね」
背中に背負っていた無極流転槍を二人に見せる。
「この槍、誰でも最強にっていうコンセプトで作ってまして。ラーニャさんにも是非試してもらいたいんです!」
まさか指名されると思っていなかったラーニャは驚きの声を上げる。
「わ、私ですか?」
「そう、ラーニャさんです!一つだけ確認なんですけど宗教上の問題とかで血を使っての契約とかまずいとか無いですよね・・・?」
「えぇ、そう言ったものは問題ないですが、私に出来ることなんて無いように思いますが」
「いえ、むしろラーニャさんだからいいんです!」
アルージェはラーニャに無極流転槍を渡す。
「ちょっとだけこの槍に血を垂らしてもらえますか?」
アルージェは魔力を操作して、無極流転槍を使用者登録状態に変更する。
「分かりました」
ラーニャは槍の穂先を使って指先を切って血を無極流転槍に垂らす。
無極流転槍が光を纏い、ラーニャと血の契約のパスを繋げる。
その瞬間ラーニャは一瞬顔を歪めて、体がフラッと倒れそうになる。
槍からの初めてのフィードバックがラーニャにいったのだろう。
初めての時はかなりの容量になるので、学習内容が多ければ多いほど頭がクラっとする可能性が高い。
「ラーニャさん大丈夫ですか?」
アルージェはラーニャの体を支える。
「大丈夫ですよ。少し立ち眩みがしただけですので」
アルージェの問いにラーニャは笑顔で答える。
「無理そうだったら言ってくださいね」
「はい、でももう平気です。これから何を試せばいいんでしょう?」
ラーニャはアルージェの検証に付き合ってくれる気満々らしい。
「なら、まずはラーニャさんって最近棒術の練習してますよね?」
「してますけどまだ型しかしてないので、アルージェ君の相手にはなれないと思いますけど・・・」
「問題ないですよ!ラーニャさんが一番使いやすい棒を頭の中で想像してみてください!」
ラーニャは目を瞑り、頭の中で想像をする。
「想像できたら槍に魔力を流しながら、こんなイメージの武器が欲しいって考えてみてください」
数秒後、槍の穂先の刃物を魔力で被い、ただの棒の様な形状になる。
拡張化を付与しているおかげで魔力を実体化させること出来るからである。
「えぇ、ラーニャすごいよ!槍の穂先が隠れて棒になってる!」
エマの言葉にラーニャは目を開けて、確認する。
「驚きました。魔力を実体化させてこんな風に使うなんて。アルージェ君は本当に優秀な学生さんなんですね」
ラーニャはアルージェの成長を見ることが出来て嬉しそうである。
「まぁ、付与したら勝手になるので、僕の力というか付与の力ですよ!それにしっかりとイメージできないと、ここまで綺麗な形には出来ません。つまりラーニャさんが凄いんですよ!さぁ、さぁ、ラーニャさんが一番使いやすい武器が出来たので、いつも通り型の練習してみてください!」
アルージェに言われるままラーニャはいつも通り型の練習を始める。
あくまで体を動かす目的と軽い自衛の為にしか棒術をしていないので、ぎこちない動きだった。
だが何度も使っていく内に明らかに動きが洗礼されている。
洗礼されていくラーニャの動きを見て、アルージェは成功だ!と内心大喜びしている。
もしかしたら顔に出ていたかもしれない。
型の練習が終わったラーニャにアルージェは駆け寄り、声を掛ける。
「ラーニャさん!ちょっと打ち合いしませんか?」
「いいですけどアルージェ君強いので、私じゃ相手にならないと思いますよ」
ラーニャは渋々了承してくれる。
「大丈夫です!」
ラーニャが十分に休息を取った後に打ち合いを開始する。
「行きます!」
アルージェがアイテムボックスから剣を取り出し、身体強化を使わずにラーニャに肉薄する。
そしてラーニャが反応できそうな速度で剣を振るう、ラーニャは棒で受け流す。
これを繰り返しやることでラーニャの動きが徐々に良くなっていくのが分かった。
アルージェもこの速度に反応できるならもっと早く出来るなと判断したらどんどんと速度を上げて、ラーニャを攻める。
身体強化無しの本気の速度での攻撃もラーニャは対応してくる。
逆にラーニャから反撃が繰り出されるようになり。
「おぉ!」
アルージェは喜びで感嘆の声を上げる。
見ていたエマも目を丸くして驚いていた。
「これくらいで終わりにしましょうか!」
アルージェが剣を下ろすと、ラーニャもハァハァと肩で息をしながら頷き無極流転槍を下ろす。
ラーニャ自身もあそこまで動けるようになるとは思っていなかったようだ。
今回の検証で分かったこと。
それはどれだけ無極流転槍のおかげで反応できても人間側のスペックが不足していれば、今のラーニャさんの状態よりひどい状態になっていただろう。
全く運動をしない人が使っていたなら、おそらくは全身の筋肉が痛くてその場から動くこともできなかったかもしれない。
これはもう少し修正が必要かもしれない。
無極流転槍を返してもらい、普段使っている棒を渡す。
「ラーニャさんお疲れのところ申し訳ないんですけど、息が整ったらこれでもう一回だけ型の練習してもらえないですか?」
「はぁはぁ、わ、分かりました」
ラーニャさんが落ち着いた後で、型の練習をしてもらう。
若干拙いがそれでも無極流転槍を使う前と後では、使った後の方が格段に動きが良くなっていた。
端っこの方でエマとラーニャさんが二人で型の練習をしている様子が見えた。
アルージェは逸材を見つけたと、ニヤリと笑い二人に駆け寄る。
「エマ、ラーニャさん。お疲れ様です!」
アルージェが手を振りながら、近付くとエマとラーニャが気付き笑顔で迎えてくれる。
「アルージェ君。お疲れ様」
「ふふふ、アルージェ君は元気ですね」
「はい!それはそれはとても元気です!なんたって今日は新しい武器の試運転の日ですから!」
「アルージェ君、鎧が出来てからも、ずっと頑張ってたもんね」
エマはアルージェがここ最近ずっと付与をしていたのを知っていた。
「新しい武器ですか?」
ラーニャは顎に人差し指を置いて首を傾げる。
アルージェは内心でラーニャが食い付いてくれたことに喜ぶが顔には出さない。
「はい!これなんですけどね」
背中に背負っていた無極流転槍を二人に見せる。
「この槍、誰でも最強にっていうコンセプトで作ってまして。ラーニャさんにも是非試してもらいたいんです!」
まさか指名されると思っていなかったラーニャは驚きの声を上げる。
「わ、私ですか?」
「そう、ラーニャさんです!一つだけ確認なんですけど宗教上の問題とかで血を使っての契約とかまずいとか無いですよね・・・?」
「えぇ、そう言ったものは問題ないですが、私に出来ることなんて無いように思いますが」
「いえ、むしろラーニャさんだからいいんです!」
アルージェはラーニャに無極流転槍を渡す。
「ちょっとだけこの槍に血を垂らしてもらえますか?」
アルージェは魔力を操作して、無極流転槍を使用者登録状態に変更する。
「分かりました」
ラーニャは槍の穂先を使って指先を切って血を無極流転槍に垂らす。
無極流転槍が光を纏い、ラーニャと血の契約のパスを繋げる。
その瞬間ラーニャは一瞬顔を歪めて、体がフラッと倒れそうになる。
槍からの初めてのフィードバックがラーニャにいったのだろう。
初めての時はかなりの容量になるので、学習内容が多ければ多いほど頭がクラっとする可能性が高い。
「ラーニャさん大丈夫ですか?」
アルージェはラーニャの体を支える。
「大丈夫ですよ。少し立ち眩みがしただけですので」
アルージェの問いにラーニャは笑顔で答える。
「無理そうだったら言ってくださいね」
「はい、でももう平気です。これから何を試せばいいんでしょう?」
ラーニャはアルージェの検証に付き合ってくれる気満々らしい。
「なら、まずはラーニャさんって最近棒術の練習してますよね?」
「してますけどまだ型しかしてないので、アルージェ君の相手にはなれないと思いますけど・・・」
「問題ないですよ!ラーニャさんが一番使いやすい棒を頭の中で想像してみてください!」
ラーニャは目を瞑り、頭の中で想像をする。
「想像できたら槍に魔力を流しながら、こんなイメージの武器が欲しいって考えてみてください」
数秒後、槍の穂先の刃物を魔力で被い、ただの棒の様な形状になる。
拡張化を付与しているおかげで魔力を実体化させること出来るからである。
「えぇ、ラーニャすごいよ!槍の穂先が隠れて棒になってる!」
エマの言葉にラーニャは目を開けて、確認する。
「驚きました。魔力を実体化させてこんな風に使うなんて。アルージェ君は本当に優秀な学生さんなんですね」
ラーニャはアルージェの成長を見ることが出来て嬉しそうである。
「まぁ、付与したら勝手になるので、僕の力というか付与の力ですよ!それにしっかりとイメージできないと、ここまで綺麗な形には出来ません。つまりラーニャさんが凄いんですよ!さぁ、さぁ、ラーニャさんが一番使いやすい武器が出来たので、いつも通り型の練習してみてください!」
アルージェに言われるままラーニャはいつも通り型の練習を始める。
あくまで体を動かす目的と軽い自衛の為にしか棒術をしていないので、ぎこちない動きだった。
だが何度も使っていく内に明らかに動きが洗礼されている。
洗礼されていくラーニャの動きを見て、アルージェは成功だ!と内心大喜びしている。
もしかしたら顔に出ていたかもしれない。
型の練習が終わったラーニャにアルージェは駆け寄り、声を掛ける。
「ラーニャさん!ちょっと打ち合いしませんか?」
「いいですけどアルージェ君強いので、私じゃ相手にならないと思いますよ」
ラーニャは渋々了承してくれる。
「大丈夫です!」
ラーニャが十分に休息を取った後に打ち合いを開始する。
「行きます!」
アルージェがアイテムボックスから剣を取り出し、身体強化を使わずにラーニャに肉薄する。
そしてラーニャが反応できそうな速度で剣を振るう、ラーニャは棒で受け流す。
これを繰り返しやることでラーニャの動きが徐々に良くなっていくのが分かった。
アルージェもこの速度に反応できるならもっと早く出来るなと判断したらどんどんと速度を上げて、ラーニャを攻める。
身体強化無しの本気の速度での攻撃もラーニャは対応してくる。
逆にラーニャから反撃が繰り出されるようになり。
「おぉ!」
アルージェは喜びで感嘆の声を上げる。
見ていたエマも目を丸くして驚いていた。
「これくらいで終わりにしましょうか!」
アルージェが剣を下ろすと、ラーニャもハァハァと肩で息をしながら頷き無極流転槍を下ろす。
ラーニャ自身もあそこまで動けるようになるとは思っていなかったようだ。
今回の検証で分かったこと。
それはどれだけ無極流転槍のおかげで反応できても人間側のスペックが不足していれば、今のラーニャさんの状態よりひどい状態になっていただろう。
全く運動をしない人が使っていたなら、おそらくは全身の筋肉が痛くてその場から動くこともできなかったかもしれない。
これはもう少し修正が必要かもしれない。
無極流転槍を返してもらい、普段使っている棒を渡す。
「ラーニャさんお疲れのところ申し訳ないんですけど、息が整ったらこれでもう一回だけ型の練習してもらえないですか?」
「はぁはぁ、わ、分かりました」
ラーニャさんが落ち着いた後で、型の練習をしてもらう。
若干拙いがそれでも無極流転槍を使う前と後では、使った後の方が格段に動きが良くなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる