悪役令嬢は南国で自給自足したい

夕日(夕日凪)

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令嬢13歳・〇〇ヒロイン確定?

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入学式を終え、講堂を出ると。
そこにはマクシミリアンと……華やかな笑顔を浮かべたお兄様が居た。
18歳になったお兄様は美貌に拍車がかかり、その美しい顔で甘い笑みを浮かべられると血縁のわたくしでも蕩けそうになる。
周囲の令嬢からきゃー!!!っと黄色い声が上がった。
それにしても美形2人のツーショットは眩しい…!
2人の色合いが白と黒なのもあって絵的にとても映える…アイドルデビュー出来そうですね!

「お兄様!こちらにいらしてたの?」

現在お兄様は領地へ戻り、叔父様の手を借りてその運営に携わっている。
シュラット家の領地は辺境にある為なかなか最近はお会い出来なかったのだけど…。

「天使ちゃんの記念すべき日だからね。ちゃんとこの目に焼き付けたかったんだ」

ふふっと笑ってお兄様がわたくしを抱きしめる。
久々のお兄様のハグにわたくしの頬も弛んでしまった。
毎日だとお兄様のテンションが高いのもあって暑苦しさの方が勝るけど、たまにだったらいいわね。

「ああ…ビアンカ。僕はビアンカと結婚したい…」

言いながらお兄様がわたくしの頭に頬をすりすりした。
適齢期で、地位もあり、尚且つずば抜けた美形。
そんなお兄様の元には現在お見合いが殺到中なのだ。
しかしお兄様のお眼鏡に敵う女性がなかなか居ないらしく、お見合いは難航している。
どういう条件のご令嬢を探しているのかはあえて聞いていない…。
だって万が一『ビアンカみたいな子がいい』なんて言われたら責任を感じてしまうもの。

「お兄様…諦めて下さいね?」

お兄様と血の繋がっていない義理の兄妹だったら、お兄様のお嫁さんになり、なんだかんだわたくしに甘いお兄様に畑作りも許して貰って幸せな領地スローライフ…そんな未来もあったかもしれない。
ああ…それって素敵ね。攻略キャラじゃないからバッドエンドの心配も無いし。
しかし残念ながら、お兄様とはがっつり血が繋がっているのだ。
学園の生徒達は抱き合ったまま離れないわたくし達をチラチラと横目で見ている。

『ねぇあれって…』
『シュラット侯爵家のご兄妹よ。お二人ともなんてお美しいの』
『まるで絵画のよう…』

なんてひそひそ話す声が聞こえて来る…。
好意的な声だからまだマシだけれど…お姫様抱っこに続き、恥ずかしい姿を晒している気がする。
ブラコンの噂が立ったらどうしよう…!

「お兄様!そろそろ離して下さいませ!」

ぺしぺしと腕を叩くと、お兄様は残念そうにしながらもようやく解放してくれた。

「ビアンカ。辛い事があったらいつでも言ってね。僕が駆け付けるから」
「お兄様。領地経営頑張って下さいね!」

本当に駆け付けて来そうなので間髪入れずににべも無く言った。
しゅん、と捨てられた子犬みたいな顔をされたけどそんなにしょっちゅう領地から来られても、父様も叔父様も困るから…。


「……えっ、嘘。あんな攻略キャラ居なかったよね?隠し??あのキャラ欲しいんだけど」


その時、そんな小さな呟きが…だけど確実にわたくしの耳に聞こえた。
思わずその方向に目線をやると……。

そこにはヒロイン――シュミナ嬢がこちらを…と言うよりもお兄様を凝視していた。

(攻略キャラ…?転生ヒロイン…確定…?)

彼女に見ている事がバレないように目線をすぐにお兄様の方へ戻す。
お兄様を夢中で見ている彼女は、わたくしの表情には気付いていない…本当に良かった。
心臓がバクバクと変な音を立てていて、胸がとても苦しかった。

「天使ちゃん、どうしたの?」

わたくしの様子に気付いたお兄様が心配そうに顔を覗き込んで来る。
ああ、どうしよう。なんでもないって言わないと。

「おにい…さま…」

想定していたよりも掠れた声が口から漏れて自分でも驚く。
酷く喉が渇いて、張り付く感じがする。
ああ、平静を保ちたいのに。

「アルフォンス様。お嬢様はご気分が優れないようなので」

マクシミリアンが眉を顰めながらお兄様に言う。お兄様も頷いてそれに応えた。

「そうだね、医務室に連れて行こう」

突然体が、ふわりと浮き上がった。
きゃー!!っとまたもや周囲の令嬢から黄色い悲鳴が上がる。

……今度は、お兄様にお姫様抱っこで抱えられていた。

ああ…わたくし今日は何回お姫様抱っこされるの…。

「悪役令嬢のくせに。なんで大事にされてるの…?」

悪意を含んだシュミナ嬢の声が、そんなに大きな声では無いのに鋭くわたくしの耳朶を打って。
思わず、ぐずぐずと熱を持つ頭をお兄様の胸に押し当てた。
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