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令嬢13歳・南国の王子からの贈り物・前
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図書室での事件の後。
ミルカ王女とは3日後に改めて約束を果たそう、という話になった。
彼女との友達付き合いに関しては不安要素も多い…けれど、思い返す限りミルカ王女とシュミナ嬢が一緒に居るところを見た事が無い…気がする。
ゲーム内だと結構ベタベタに一緒に居た気がするんだけど。
と言うかシュミナ嬢…女性からのヘイトを平気で溜めている現状を見るに、そもそも女友達を作る気が無い…?
……女友達が居ないのはわたくしもなんだけど。
い…いや!ミルカ王女という友達(死亡フラグ付き)が出来たし!
これについては深く掘ると自分もダメージを受けそうだわ。
でも作ろうと思って作れないのと最初から作らないのは大きな差だと思います!
とにかく、次にミルカ王女に会う時に、シュミナ嬢との現在の関係について探りを入れてみよう。
そんな事を思いながらマクシミリアンと食堂へ向かう為、廊下を歩いていたところ…。
「ビアンカ嬢」
わたくし達の進行方向を、メイカ王子が塞いだ。
マクシミリアンが眉間に深い皺を寄せ…わたくしを姫抱きで抱え上げてからメイカ王子に背を向け、逆の方向へ進もうとする。
「マ…マクシミリアン!降ろして!他国の王子に流石にその態度は、無いからっ!」
堪らずわたくしが叫ぶと彼は渋々と言う感じで降ろしてくれたけれど…、メイカ王子からわたくしを隠すように背中に庇って彼を睨んだ。
一部始終を見ている生徒の方々は興味津々といったところ…。ああもう、勘弁して欲しい。
「メイカ王子、ごきげんよう」
マクシミリアンの背中から顔を出す形になってしまったけれど…取り合えず挨拶をする。
うう…我ながら失礼な姿だとは思うんだけど、マクシミリアンが前に出してくれない…ノーモア国際問題…!
「ビアンカ嬢。君の番犬はご機嫌斜めだね。……まぁ僕のせいなんだけどさ」
メイカ王子が苦笑いをしながら溜め息を吐く…アンニュイな雰囲気がセクシーですね…。
…謝罪は受け入れたとはいえ、先日の事、わたくし許してないのよ。
わたくしの精神状態が普通の状態であったとしても、初対面の男性にあんなに無遠慮に触られるのは無理だ。生理的に。
イケメンでも許されると思ってはいけない。
「何か…御用ですの?」
思わず彼を胡乱げな目で見てしまう。
「改めて、君に謝りたいと思って。お詫びを用意したから、少し時間を借りてもいいかな?心配なら勿論番犬も連れて来て?」
肩を竦めながら、メイカ王子が言う。
…先程から、マクシミリアンを番犬呼ばわり…先日の態度といい本当に失礼な人だ。
「わたくしの大切な執事を番犬呼ばわりする方に付いて行きたくありませんわ」
マクシミリアンの腕を取ってぎゅっとしがみつきながら言うと、マクシミリアンは少し驚いたようにわたくしを見て、嬉しそうに蕩けそうな笑顔を浮かべた。
うん、やっぱりマクシミリアンは怒っている顔よりも笑っている顔の方が、素敵よ。
えへへ、と顔を見合わせてわたくしも笑ってしまう。
「いや、その…申し訳ない。わざとでは無いんだけど…どうも僕は鼻につく言い方を選んでしまうみたいだね」
メイカ王子が困ったという感じで、美しい形の眉を下げた。
…嫌な人には違いないんだけど、ミルカ王女のお兄様だし…これ以上変な空気になるのも良くないわよね。
「謝罪はもういいですわ、先日頂きましたもの。それに何か頂いても困りますの…わたくし、物欲はあまり無い方ですし」
わたくしは軽く息を吐いて、メイカ王子に言った。
物欲が無い、というのは本当だ。
綺麗なドレスも宝石も見ればテンションは上がるけれど…別に無いなら無いでいいと思っている。
「お嬢様。そろそろ向かいませんと、食堂が混んでしまいます」
「そうね、マクシミリアン。メイカ王子、ごきげんよう」
わたくし達は、彼を置いて食堂へ再度足を向けた。
「…ミルカから、ビアンカ嬢はパラディスコ王国の農業に興味があるって聞いたんだけど」
「うっ…」
背後から聞こえたメイカ王子の言葉に思わず反応し、ちらりと振り返ってしまう。
するとメイカ王子が、してやったり…という感じでにやり、と笑った。
「実はその方面はミルカよりも僕が詳しいんだ。農家の視察にもよく行くんだよ?王家が支援する農業関係の事業がいくつかあるからね。と言う訳で、食堂でお昼でも食べながらお話しない?」
「ううう…。え…遠慮しておきま…」
「これ、パラディスコ王国の気候に適したトロナイモっていう作物の種なんだけど。他にも数種類パラディスコ王国にしか無い種を持って来ていて…」
「ぜ…ぜひ見せて下さいませ!!」
…………。
メイカ王子が取り出した種の袋に、ついつい食いついてしまった。
チョロいと言うなら、言うがいいわ。
「お嬢様…」
うう…マクシミリアン、そんな呆れた目で見ないで…。
普段全肯定レベルでわたくしに優しい貴方からそんな目で見られると割と傷つくの…。
「お嬢様の畑馬鹿を利用するなんて…迂闊だったな」
厳しい視線でメイカ王子を射抜きながら、マクシミリアンがぽつりと呟く。
は…畑馬鹿!?合ってるけど、ちょっと人聞きが悪い響きで辛い…。
農業への探求心には結局勝てず。
わたくしはのこのこと、トロナイモの種に釣られてメイカ王子に付いて行ってしまったのだった…。
ミルカ王女とは3日後に改めて約束を果たそう、という話になった。
彼女との友達付き合いに関しては不安要素も多い…けれど、思い返す限りミルカ王女とシュミナ嬢が一緒に居るところを見た事が無い…気がする。
ゲーム内だと結構ベタベタに一緒に居た気がするんだけど。
と言うかシュミナ嬢…女性からのヘイトを平気で溜めている現状を見るに、そもそも女友達を作る気が無い…?
……女友達が居ないのはわたくしもなんだけど。
い…いや!ミルカ王女という友達(死亡フラグ付き)が出来たし!
これについては深く掘ると自分もダメージを受けそうだわ。
でも作ろうと思って作れないのと最初から作らないのは大きな差だと思います!
とにかく、次にミルカ王女に会う時に、シュミナ嬢との現在の関係について探りを入れてみよう。
そんな事を思いながらマクシミリアンと食堂へ向かう為、廊下を歩いていたところ…。
「ビアンカ嬢」
わたくし達の進行方向を、メイカ王子が塞いだ。
マクシミリアンが眉間に深い皺を寄せ…わたくしを姫抱きで抱え上げてからメイカ王子に背を向け、逆の方向へ進もうとする。
「マ…マクシミリアン!降ろして!他国の王子に流石にその態度は、無いからっ!」
堪らずわたくしが叫ぶと彼は渋々と言う感じで降ろしてくれたけれど…、メイカ王子からわたくしを隠すように背中に庇って彼を睨んだ。
一部始終を見ている生徒の方々は興味津々といったところ…。ああもう、勘弁して欲しい。
「メイカ王子、ごきげんよう」
マクシミリアンの背中から顔を出す形になってしまったけれど…取り合えず挨拶をする。
うう…我ながら失礼な姿だとは思うんだけど、マクシミリアンが前に出してくれない…ノーモア国際問題…!
「ビアンカ嬢。君の番犬はご機嫌斜めだね。……まぁ僕のせいなんだけどさ」
メイカ王子が苦笑いをしながら溜め息を吐く…アンニュイな雰囲気がセクシーですね…。
…謝罪は受け入れたとはいえ、先日の事、わたくし許してないのよ。
わたくしの精神状態が普通の状態であったとしても、初対面の男性にあんなに無遠慮に触られるのは無理だ。生理的に。
イケメンでも許されると思ってはいけない。
「何か…御用ですの?」
思わず彼を胡乱げな目で見てしまう。
「改めて、君に謝りたいと思って。お詫びを用意したから、少し時間を借りてもいいかな?心配なら勿論番犬も連れて来て?」
肩を竦めながら、メイカ王子が言う。
…先程から、マクシミリアンを番犬呼ばわり…先日の態度といい本当に失礼な人だ。
「わたくしの大切な執事を番犬呼ばわりする方に付いて行きたくありませんわ」
マクシミリアンの腕を取ってぎゅっとしがみつきながら言うと、マクシミリアンは少し驚いたようにわたくしを見て、嬉しそうに蕩けそうな笑顔を浮かべた。
うん、やっぱりマクシミリアンは怒っている顔よりも笑っている顔の方が、素敵よ。
えへへ、と顔を見合わせてわたくしも笑ってしまう。
「いや、その…申し訳ない。わざとでは無いんだけど…どうも僕は鼻につく言い方を選んでしまうみたいだね」
メイカ王子が困ったという感じで、美しい形の眉を下げた。
…嫌な人には違いないんだけど、ミルカ王女のお兄様だし…これ以上変な空気になるのも良くないわよね。
「謝罪はもういいですわ、先日頂きましたもの。それに何か頂いても困りますの…わたくし、物欲はあまり無い方ですし」
わたくしは軽く息を吐いて、メイカ王子に言った。
物欲が無い、というのは本当だ。
綺麗なドレスも宝石も見ればテンションは上がるけれど…別に無いなら無いでいいと思っている。
「お嬢様。そろそろ向かいませんと、食堂が混んでしまいます」
「そうね、マクシミリアン。メイカ王子、ごきげんよう」
わたくし達は、彼を置いて食堂へ再度足を向けた。
「…ミルカから、ビアンカ嬢はパラディスコ王国の農業に興味があるって聞いたんだけど」
「うっ…」
背後から聞こえたメイカ王子の言葉に思わず反応し、ちらりと振り返ってしまう。
するとメイカ王子が、してやったり…という感じでにやり、と笑った。
「実はその方面はミルカよりも僕が詳しいんだ。農家の視察にもよく行くんだよ?王家が支援する農業関係の事業がいくつかあるからね。と言う訳で、食堂でお昼でも食べながらお話しない?」
「ううう…。え…遠慮しておきま…」
「これ、パラディスコ王国の気候に適したトロナイモっていう作物の種なんだけど。他にも数種類パラディスコ王国にしか無い種を持って来ていて…」
「ぜ…ぜひ見せて下さいませ!!」
…………。
メイカ王子が取り出した種の袋に、ついつい食いついてしまった。
チョロいと言うなら、言うがいいわ。
「お嬢様…」
うう…マクシミリアン、そんな呆れた目で見ないで…。
普段全肯定レベルでわたくしに優しい貴方からそんな目で見られると割と傷つくの…。
「お嬢様の畑馬鹿を利用するなんて…迂闊だったな」
厳しい視線でメイカ王子を射抜きながら、マクシミリアンがぽつりと呟く。
は…畑馬鹿!?合ってるけど、ちょっと人聞きが悪い響きで辛い…。
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