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令嬢13歳・楽園へ行こう!
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マクシミリアンが説得をしてくれたお陰で、父様からパラディスコ行きの許可が降りた。
夏休暇は最初は領地でお兄様と、次は王都の邸で父様と。
そして残りの期間をパラディスコで、という事になった。
目まぐるしいけれど帰らないと父様もお兄様も泣いちゃうからなぁ……。
「そんな訳で、パラディスコに行ける事になりましたの!」
わたくしは意気揚々と学園の食堂でミルカ王女にご報告をした。
今日はマリア様とゾフィー様もご一緒だ。ふふ、女子会ね!
マクシミリアンは勿論控えているし、ミルカ王女の執事……ハウンドも居る訳だけど。
ミルカ王女と仲良くなってハウンドとはよく顔を合わせるようになった。
彼はパラディスコ人らしく小麦色に焼けた健康的な肌で、金色の髪のサイドを細かい三つ編みにして後ろでポニーテールにし、耳には沢山のピアスを付けている。
最初は……元体育会系のホストか何かかと思った。
顔は美男子なのだけど……パーティピープル……って感じの見た目なのである。
しかもミルカ王女とメイカ王子の従兄……つまり彼は王家筋らしい。
キャラが、濃い。なんで王家筋が執事をしているの。
気になって前に聞いたら『暇なんスよね、国に居ても。ミルカとメイカにくっ付いてたら色々なとこに行けるんで……退屈しないんス』ってこれまた元体育会系のホストみたいな口調で理由を言われた。
なんなの貴方。生まれた街には何にもないから歌舞伎町に出てきました、みたいな言い草ね。
ちょっと羨ましいくらいにゆるいわ……パラディスコ王国。
「嬉しい~!じゃあ沢山一緒に遊ぼうね!」
わたくしの報告を聞いたミルカ王女は、ふわっと笑いながら嬉しそうに手を叩いた。
「お土産話お待ちしておりますわ!」
「そうですね、ゾフィーさんと楽しみにしております」
ゾフィー様はハムスターのように頬張ったスパゲッティを慌てて飲み込みながら、
マリア様は眼鏡の奥の瞳を理知的に輝かせながら口々に言う。
すると、ミルカ王女の目が丸くなった。
「マリア嬢とゾフィー嬢は来ないの?」
それを言われたお二人が、今度は目を丸くする。
すごい!ミルカ王女、それはとても楽しそうね!
憧れの女子旅行ね!素敵なご提案だわ……!
「でも私達じゃお邪魔になっちゃいますわ!」
「そうですよ。お邪魔です!私のような下々の者が……」
と二人は慌てて顔の前でぶんぶんと手を振って遠慮する。
下々って……二人共貴族よね?何を言っているの……!?
「わたくしも来て欲しいですわ。折角お友達と沢山遊べる機会なんですもの。お二人のご予定が大丈夫で、ご迷惑じゃなければ……ですけど」
わたくしがスコーンにシロップをかけながらそう言うと、二人は迷うように顔を見合わせて、もじもじと視線を送り合っている。
迷っているという事は、脈があるという事かしら?ご予定が合うと良いのだけど……。
「じゃあ決まりだね~!」
ミルカ王女がニコッ!と笑ってその場を強引に取りまとめてしまった。
ああ……お二人共、他の夏のご予定があったのかもしれないのに……!!
まぁでも……お二人が最終的には嬉しそうに頷いてくれたので良しとしよう。
本当に楽しみだわ!
夏休暇まではもう一か月を切っている。
女子旅行楽しみだな~なんてのほほんとしていたある日。
「ビアンカ嬢、ずるいよー。パラディスコ王国に旅行に行くんだって?俺も一緒に行く!」
図書室から借りたパラディスコ王国関係の本を教室で読んでいると、ノエル様が頬を膨らませてそんな声をかけてきた。
「だっ……誰からお聞きになったの!?」
「えっ。ハウンドだよ」
あのパリピ系駄ホスト……!!と悪態を吐きそうになったけれど、
(ああ見えて王家筋、王家筋だから…!悪態なんて吐いたら国際問題……!!)
心の中で何度も呟いて心を落ち着ける。
ノエル様に言わなかったのは、経由してフィリップ王子に伝わり万が一『一緒に行く』なんて言われたら面倒だと思ったからだ。
だってフィリップ王子が一緒だと身軽な旅行なんて出来なさそうだし……婚約者候補が王子と旅行だなんて、婚約者決定か!みたいな噂になっても困るし。
王族は、そんなに暇じゃないと思うんだけれど、念の為ね。念の為。
「フィリップ様には……?」
内心冷や汗を掻きながらノエル様に訊ねてみると……。
「ハウンドが話してくれた場に、フィリップ様も居たから。ばっちり伝わってるね」
と、輝く笑顔で返されてしまった。
(駄ホストぉー……!!!)
わたくしは、心の中で絶叫しながら思わずその場で机に突っ伏してしまう。
い……嫌な予感がするわ……。
「ビアンカ!俺もパラディスコに行くぞ!」
案の定、教室に勢い良く入って来たフィリップ王子に堂々とした所作でそう言い放たれた。
王族って……意外と暇なのかしら……?
わたくしは思わず遠い目になる。
女子旅行が思わぬ大所帯に……。
まぁ、これはこれで、楽しいのかしらね……?
マリア様とゾフィー様に、フィリップ王子とノエル様も来る事を伝えると……。
『尊さが増しすぎて圧死する……。眩しさで眼鏡が割れてしまうわ……』
『眩しくて、焼き殺されますわね。私達の限界値はビアンカ様だけでもキャパシティーオーバーですのよ?!』
と嘆きながら床に突っ伏してしまった。
そしてマクシミリアンは、お2人が増える事を知って苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
……怒るならハウンドに怒ってね……?
夏休暇は最初は領地でお兄様と、次は王都の邸で父様と。
そして残りの期間をパラディスコで、という事になった。
目まぐるしいけれど帰らないと父様もお兄様も泣いちゃうからなぁ……。
「そんな訳で、パラディスコに行ける事になりましたの!」
わたくしは意気揚々と学園の食堂でミルカ王女にご報告をした。
今日はマリア様とゾフィー様もご一緒だ。ふふ、女子会ね!
マクシミリアンは勿論控えているし、ミルカ王女の執事……ハウンドも居る訳だけど。
ミルカ王女と仲良くなってハウンドとはよく顔を合わせるようになった。
彼はパラディスコ人らしく小麦色に焼けた健康的な肌で、金色の髪のサイドを細かい三つ編みにして後ろでポニーテールにし、耳には沢山のピアスを付けている。
最初は……元体育会系のホストか何かかと思った。
顔は美男子なのだけど……パーティピープル……って感じの見た目なのである。
しかもミルカ王女とメイカ王子の従兄……つまり彼は王家筋らしい。
キャラが、濃い。なんで王家筋が執事をしているの。
気になって前に聞いたら『暇なんスよね、国に居ても。ミルカとメイカにくっ付いてたら色々なとこに行けるんで……退屈しないんス』ってこれまた元体育会系のホストみたいな口調で理由を言われた。
なんなの貴方。生まれた街には何にもないから歌舞伎町に出てきました、みたいな言い草ね。
ちょっと羨ましいくらいにゆるいわ……パラディスコ王国。
「嬉しい~!じゃあ沢山一緒に遊ぼうね!」
わたくしの報告を聞いたミルカ王女は、ふわっと笑いながら嬉しそうに手を叩いた。
「お土産話お待ちしておりますわ!」
「そうですね、ゾフィーさんと楽しみにしております」
ゾフィー様はハムスターのように頬張ったスパゲッティを慌てて飲み込みながら、
マリア様は眼鏡の奥の瞳を理知的に輝かせながら口々に言う。
すると、ミルカ王女の目が丸くなった。
「マリア嬢とゾフィー嬢は来ないの?」
それを言われたお二人が、今度は目を丸くする。
すごい!ミルカ王女、それはとても楽しそうね!
憧れの女子旅行ね!素敵なご提案だわ……!
「でも私達じゃお邪魔になっちゃいますわ!」
「そうですよ。お邪魔です!私のような下々の者が……」
と二人は慌てて顔の前でぶんぶんと手を振って遠慮する。
下々って……二人共貴族よね?何を言っているの……!?
「わたくしも来て欲しいですわ。折角お友達と沢山遊べる機会なんですもの。お二人のご予定が大丈夫で、ご迷惑じゃなければ……ですけど」
わたくしがスコーンにシロップをかけながらそう言うと、二人は迷うように顔を見合わせて、もじもじと視線を送り合っている。
迷っているという事は、脈があるという事かしら?ご予定が合うと良いのだけど……。
「じゃあ決まりだね~!」
ミルカ王女がニコッ!と笑ってその場を強引に取りまとめてしまった。
ああ……お二人共、他の夏のご予定があったのかもしれないのに……!!
まぁでも……お二人が最終的には嬉しそうに頷いてくれたので良しとしよう。
本当に楽しみだわ!
夏休暇まではもう一か月を切っている。
女子旅行楽しみだな~なんてのほほんとしていたある日。
「ビアンカ嬢、ずるいよー。パラディスコ王国に旅行に行くんだって?俺も一緒に行く!」
図書室から借りたパラディスコ王国関係の本を教室で読んでいると、ノエル様が頬を膨らませてそんな声をかけてきた。
「だっ……誰からお聞きになったの!?」
「えっ。ハウンドだよ」
あのパリピ系駄ホスト……!!と悪態を吐きそうになったけれど、
(ああ見えて王家筋、王家筋だから…!悪態なんて吐いたら国際問題……!!)
心の中で何度も呟いて心を落ち着ける。
ノエル様に言わなかったのは、経由してフィリップ王子に伝わり万が一『一緒に行く』なんて言われたら面倒だと思ったからだ。
だってフィリップ王子が一緒だと身軽な旅行なんて出来なさそうだし……婚約者候補が王子と旅行だなんて、婚約者決定か!みたいな噂になっても困るし。
王族は、そんなに暇じゃないと思うんだけれど、念の為ね。念の為。
「フィリップ様には……?」
内心冷や汗を掻きながらノエル様に訊ねてみると……。
「ハウンドが話してくれた場に、フィリップ様も居たから。ばっちり伝わってるね」
と、輝く笑顔で返されてしまった。
(駄ホストぉー……!!!)
わたくしは、心の中で絶叫しながら思わずその場で机に突っ伏してしまう。
い……嫌な予感がするわ……。
「ビアンカ!俺もパラディスコに行くぞ!」
案の定、教室に勢い良く入って来たフィリップ王子に堂々とした所作でそう言い放たれた。
王族って……意外と暇なのかしら……?
わたくしは思わず遠い目になる。
女子旅行が思わぬ大所帯に……。
まぁ、これはこれで、楽しいのかしらね……?
マリア様とゾフィー様に、フィリップ王子とノエル様も来る事を伝えると……。
『尊さが増しすぎて圧死する……。眩しさで眼鏡が割れてしまうわ……』
『眩しくて、焼き殺されますわね。私達の限界値はビアンカ様だけでもキャパシティーオーバーですのよ?!』
と嘆きながら床に突っ伏してしまった。
そしてマクシミリアンは、お2人が増える事を知って苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
……怒るならハウンドに怒ってね……?
応援ありがとうございます!
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