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令嬢13歳・パラディスコ王国への到着・後
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「マクシミリアン。貴方本当にいい加減にして!心臓が止まるかと思ったんだから!」
「はい、お嬢様」
悪びれない様子のマクシミリアンとそんな会話をしながら甲板に戻ると、ノエル様と鉢合わせた。
「あら、ノエル様」
「ビアンカ嬢、マクシミリアン!もうすぐパラディスコだね」
今日も眩しい爽やかな笑顔でノエル様が言う。
青い空と眩しい太陽をバックに笑顔が尚更眩しく見える。
「楽しみですね。お嬢様、ノエル様」
「ええ本当に!楽しみだわ!」
マクシミリアンもその会話に加わり、わたくしもそれに笑顔で返した。
頭の中でパラディスコ王国の地図を描き、行きたい場所を思い浮かべてにこにこしてしまう。
するとノエル様はわたくしとマクシミリアンを交互に見て、口を尖らせた。
「いいなぁ。マクシミリアンとビアンカ嬢は相変わらず仲良しで」
「えっ!?」
一瞬、船室での一幕を見られたのかと、ドキリとした。
ジョアンナが開けるまで完全にドアは閉まっていたはずだけど。
あれを見られていたら、流石に不味い……。
「昔からマクシミリアンとだけ素で喋ってる時が多いよね?言葉使いがちょっと違うというか」
「ああ……そういう事ですの」
船室の件じゃなくて良かったと内心安堵する。
この世界での暮らしももう長く、お嬢様言葉も板に付いたと自負していたのだけど、確かにマクシミリアンとは……前世と同じとまではいかないけれど軽い口調で話してしまっている気がする。
でもそれはジョアンナや庭師のジムに対してそうだし……もしかすると昔から一緒に居て精神的に甘えてしまっている人に、そうなってしまっているのだろうか。
……つまりわたくしは、マクシミリアンに甘えているのね。
「俺にも砕けた口調で話して欲しいなー。そろそろ付き合いも長いんだし、いいでしょ?」
「う……そうですわねぇ……」
「ノエル様。お嬢様は淑女なので無理を言わないで下さい」
そう無邪気に笑って言うノエル様に曖昧に返事を濁すと、横からマクシミリアンの援護射撃が入った。
確かにノエル様とはもう付き合いも長いし良い友人だから、前世であればタメ口万歳なのだけど……。
ノエル様に許すとフィリップ王子にも強請られ雪崩式にとなりそうだし、複数の男性とあまりに親し気な態度で過ごすというのは令嬢として流石にどうかと思ってしまう。
……ゲーム中のヒロインが上位貴族のご令嬢にそれで疎まれてたのよね。線引き、大事。
「ビアンカ嬢っ」
その時腰の辺りに衝撃が走った。ミルカ王女が……勢いを付けて腰に抱き着いたのだ。
この方ほんとにピンポイントで腰を狙ってくるわね?!
「ミ……ミルカ王女っ」
「そろそろ着くよ~!」
そう言われて海の方を見ると、フィリップ王子と見た陸地が目の前に近付いていた。
マリア様とゾフィー様も陸地を指して楽しそうに歓談している。
フィリップ王子も陸地を眺めながらハウンドと何か話をしていた。
目視出来る距離になった港はとても立派なもので沢山の帆船が停泊しており、あれは漁船であれは運送用かしら……なんてしげしげと興味深く観察してしまう。
港では沢山の人々が働いており、男女共に薄着で露出度が高め……という自国では考えられない服装。
前世の価値観に照らし合わせるとむしろそちらに近い気がする。
ああ、あれってショートパンツじゃない!久しぶりに履きたい!あれはキャミソール!あれも着たい!久しぶりに身軽な格好でブラブラとしたい。
……マクシミリアンに全力で止められそうだけど。
船はゆっくりと港に停泊し、いよいよなのだと思うと胸が高鳴った。
「お嬢様」
「なに?マクシミリアン」
耳元で、マクシミリアンが話しかけてきたので振り返って応じると。
彼は……口元を手で隠して皆から見えない角度で頬に唇を落としてきた。
例え誰かに見られても、内緒話をしているように見えただろう絶妙な角度だ。
「……私達が、将来一緒に住む国ですね」
そしてそう優しく今度は本当の内緒話でわたくしに囁くものだから、わたくしは呆気に取られ……赤くなってしまった。
「そ、そういうのは止めてって言ってるでしょう!?」
「ふふ、事実になる事ですので。お嬢様に、駆け落ちできるような他の懇意な男性を作らせる気なんてありませんしね?」
マクシミリアンの言葉に二の句も継げずに口をぱくぱくしていると、とても楽しそうに笑われてしまった。
「ほ~ん……」
わたくしとマクシミリアンを見比べて何かを察したらしいミルカ王女が生温かい目線でこちらを見ている。
こちらを見てサポートキャラにはお見通し!みたいな目をしないで!?
……ミルカ王女に参考までにマクシミリアンの好感度を訊いてみたい……なんてゲーム脳が疼いたけれど。
きっと彼のゲージはMAXまで振り切れているのだろう……。
「はい、お嬢様」
悪びれない様子のマクシミリアンとそんな会話をしながら甲板に戻ると、ノエル様と鉢合わせた。
「あら、ノエル様」
「ビアンカ嬢、マクシミリアン!もうすぐパラディスコだね」
今日も眩しい爽やかな笑顔でノエル様が言う。
青い空と眩しい太陽をバックに笑顔が尚更眩しく見える。
「楽しみですね。お嬢様、ノエル様」
「ええ本当に!楽しみだわ!」
マクシミリアンもその会話に加わり、わたくしもそれに笑顔で返した。
頭の中でパラディスコ王国の地図を描き、行きたい場所を思い浮かべてにこにこしてしまう。
するとノエル様はわたくしとマクシミリアンを交互に見て、口を尖らせた。
「いいなぁ。マクシミリアンとビアンカ嬢は相変わらず仲良しで」
「えっ!?」
一瞬、船室での一幕を見られたのかと、ドキリとした。
ジョアンナが開けるまで完全にドアは閉まっていたはずだけど。
あれを見られていたら、流石に不味い……。
「昔からマクシミリアンとだけ素で喋ってる時が多いよね?言葉使いがちょっと違うというか」
「ああ……そういう事ですの」
船室の件じゃなくて良かったと内心安堵する。
この世界での暮らしももう長く、お嬢様言葉も板に付いたと自負していたのだけど、確かにマクシミリアンとは……前世と同じとまではいかないけれど軽い口調で話してしまっている気がする。
でもそれはジョアンナや庭師のジムに対してそうだし……もしかすると昔から一緒に居て精神的に甘えてしまっている人に、そうなってしまっているのだろうか。
……つまりわたくしは、マクシミリアンに甘えているのね。
「俺にも砕けた口調で話して欲しいなー。そろそろ付き合いも長いんだし、いいでしょ?」
「う……そうですわねぇ……」
「ノエル様。お嬢様は淑女なので無理を言わないで下さい」
そう無邪気に笑って言うノエル様に曖昧に返事を濁すと、横からマクシミリアンの援護射撃が入った。
確かにノエル様とはもう付き合いも長いし良い友人だから、前世であればタメ口万歳なのだけど……。
ノエル様に許すとフィリップ王子にも強請られ雪崩式にとなりそうだし、複数の男性とあまりに親し気な態度で過ごすというのは令嬢として流石にどうかと思ってしまう。
……ゲーム中のヒロインが上位貴族のご令嬢にそれで疎まれてたのよね。線引き、大事。
「ビアンカ嬢っ」
その時腰の辺りに衝撃が走った。ミルカ王女が……勢いを付けて腰に抱き着いたのだ。
この方ほんとにピンポイントで腰を狙ってくるわね?!
「ミ……ミルカ王女っ」
「そろそろ着くよ~!」
そう言われて海の方を見ると、フィリップ王子と見た陸地が目の前に近付いていた。
マリア様とゾフィー様も陸地を指して楽しそうに歓談している。
フィリップ王子も陸地を眺めながらハウンドと何か話をしていた。
目視出来る距離になった港はとても立派なもので沢山の帆船が停泊しており、あれは漁船であれは運送用かしら……なんてしげしげと興味深く観察してしまう。
港では沢山の人々が働いており、男女共に薄着で露出度が高め……という自国では考えられない服装。
前世の価値観に照らし合わせるとむしろそちらに近い気がする。
ああ、あれってショートパンツじゃない!久しぶりに履きたい!あれはキャミソール!あれも着たい!久しぶりに身軽な格好でブラブラとしたい。
……マクシミリアンに全力で止められそうだけど。
船はゆっくりと港に停泊し、いよいよなのだと思うと胸が高鳴った。
「お嬢様」
「なに?マクシミリアン」
耳元で、マクシミリアンが話しかけてきたので振り返って応じると。
彼は……口元を手で隠して皆から見えない角度で頬に唇を落としてきた。
例え誰かに見られても、内緒話をしているように見えただろう絶妙な角度だ。
「……私達が、将来一緒に住む国ですね」
そしてそう優しく今度は本当の内緒話でわたくしに囁くものだから、わたくしは呆気に取られ……赤くなってしまった。
「そ、そういうのは止めてって言ってるでしょう!?」
「ふふ、事実になる事ですので。お嬢様に、駆け落ちできるような他の懇意な男性を作らせる気なんてありませんしね?」
マクシミリアンの言葉に二の句も継げずに口をぱくぱくしていると、とても楽しそうに笑われてしまった。
「ほ~ん……」
わたくしとマクシミリアンを見比べて何かを察したらしいミルカ王女が生温かい目線でこちらを見ている。
こちらを見てサポートキャラにはお見通し!みたいな目をしないで!?
……ミルカ王女に参考までにマクシミリアンの好感度を訊いてみたい……なんてゲーム脳が疼いたけれど。
きっと彼のゲージはMAXまで振り切れているのだろう……。
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