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エイデンは危ぶむ(エイデン視点)
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近頃、僕の可愛いシュミナの様子がおかしい。
彼女はビアンカ・シュラットが側にいる時、何か話しかけようとして……口籠り、目を反らす。
それは今までのように彼女を詰るとか、貶めるとか。
そんな事をしようとする表情では無くて……その表情から見える色は……まさか後悔?
シュミナ、ビアンカに今までの事を謝罪なんてしようとしているんじゃないだろうね。
ダメだよ真っ当になろうとするなんて。歪んでいる君だから美しいんじゃないか。
……そんな事、僕は許さない。
「ねぇ、シュミナ。最近様子が変だけれど、どうしたの? 元気がないね。僕に理由を教えて?」
僕はシュミナを膝に抱え上げてその可愛い耳に囁く。
……教室だから色々な生徒がこちらに目を向けているけど……知らないね、うん。
僕がこうする事で僕の『婚約者』の座を狙う馬鹿がシュミナに危害を加える可能性もあるけれど……。
誰かに虐められて泣いたり怒ったりするシュミナも見たいから、そんな馬鹿がちょっとくらい出てきても、まぁいいかな。
ふふふ、泣きながら僕に縋って来るのかな? 助けてエイデンって可愛い唇で言ってくれる? 楽しみだなぁ。
泣いて困って悲しむシュミナを楽しんだ後は虐めたやつの家は取り潰すから大丈夫だよ? だってシュミナは僕の大事な人だもの。
「ビアンカ嬢に虐められたの?……僕が、どうにかしてあげようか? 君が消せと言うなら僕は頑張るよ?」
彼女の耳に優しく優しく毒を吹き込む。
君は以前言っていたじゃない『エイデン、彼女を消して』って。
忌々しいくらいの権力を持っているシュラット侯爵家のご令嬢を消すなんて僕にもリスキー過ぎるからね、出来ればやりたくないのだけど。
……でも君が喜ぶなら、それもいいかな。
僕が犯人だっていずれバレるだろうし、その時シュラット侯爵は怒り狂うだろうけど……。
ああ、あのビアンカ・シュラットに夢中な馬鹿王子もか。
僕の家もシュミナの家もお取り潰しになっちゃうね。
そして僕らは死刑かなぁ……。
その時は二人で地獄に落ちようね? それはそれで……楽しい考えだね。
「……エイデン、いいの。それはもういい、しなくていい」
シュミナは驚いた顔で僕を見つめてゆっくりとした動きで、ふるふると頭を左右に動かす。
……いいの? どうして? 以前の君なら喜んですぐにでも頷いていただろうに。
誰か悪いヤツが、シュミナによからぬ事を吹き込んだのかな。……少し、調べてみないとね。
ダメだよ、歪んで捻じ曲がって美しい僕のシュミナを『まとも』にしようなんて。
そんな悪いヤツはちゃんと排除しないと。
「……エイデンは、私がその。……ううん、なんでもない」
シュミナは僕の目を救いを求めるように見つめた後に、そっと逸した。
シュミナ、どうしたの? 僕に助けられる事ならなんでも言って?
浅はかな君の、浅はかな悩みを、僕に教えて?
……まともになりたいなんて事以外なら何でも聞いてあげるから。
「メイカー! 教科書貸してー!」
パタパタと軽い足音を立てて、赤い髪を翻したミルカ王女が僕らの目の前を通り過ぎる。
可愛いけれど割と真っ当でつまらないメイカ王子の妹君。
僕はちらりと目を向けたけれど興味が無いからすぐに逸した。
「ミルカ、また教科書忘れたの?」
「メイカうるさい。いいから貸して!」
双子はわいわいと騒がしくしている……なんというか、嫌になる程健全な空気だね。
ふと、ミルカ王女がこちらに目をやって……驚いたように目を見開いて数度瞬きした。
……彼女はシュミナを見ている? どうして?
僕は嫌な予感を感じて、シュミナの肩を強く抱いた。
シュミナは今のままでいいんだ。僕のシュミナに、余計な事はしないでね?
彼女はビアンカ・シュラットが側にいる時、何か話しかけようとして……口籠り、目を反らす。
それは今までのように彼女を詰るとか、貶めるとか。
そんな事をしようとする表情では無くて……その表情から見える色は……まさか後悔?
シュミナ、ビアンカに今までの事を謝罪なんてしようとしているんじゃないだろうね。
ダメだよ真っ当になろうとするなんて。歪んでいる君だから美しいんじゃないか。
……そんな事、僕は許さない。
「ねぇ、シュミナ。最近様子が変だけれど、どうしたの? 元気がないね。僕に理由を教えて?」
僕はシュミナを膝に抱え上げてその可愛い耳に囁く。
……教室だから色々な生徒がこちらに目を向けているけど……知らないね、うん。
僕がこうする事で僕の『婚約者』の座を狙う馬鹿がシュミナに危害を加える可能性もあるけれど……。
誰かに虐められて泣いたり怒ったりするシュミナも見たいから、そんな馬鹿がちょっとくらい出てきても、まぁいいかな。
ふふふ、泣きながら僕に縋って来るのかな? 助けてエイデンって可愛い唇で言ってくれる? 楽しみだなぁ。
泣いて困って悲しむシュミナを楽しんだ後は虐めたやつの家は取り潰すから大丈夫だよ? だってシュミナは僕の大事な人だもの。
「ビアンカ嬢に虐められたの?……僕が、どうにかしてあげようか? 君が消せと言うなら僕は頑張るよ?」
彼女の耳に優しく優しく毒を吹き込む。
君は以前言っていたじゃない『エイデン、彼女を消して』って。
忌々しいくらいの権力を持っているシュラット侯爵家のご令嬢を消すなんて僕にもリスキー過ぎるからね、出来ればやりたくないのだけど。
……でも君が喜ぶなら、それもいいかな。
僕が犯人だっていずれバレるだろうし、その時シュラット侯爵は怒り狂うだろうけど……。
ああ、あのビアンカ・シュラットに夢中な馬鹿王子もか。
僕の家もシュミナの家もお取り潰しになっちゃうね。
そして僕らは死刑かなぁ……。
その時は二人で地獄に落ちようね? それはそれで……楽しい考えだね。
「……エイデン、いいの。それはもういい、しなくていい」
シュミナは驚いた顔で僕を見つめてゆっくりとした動きで、ふるふると頭を左右に動かす。
……いいの? どうして? 以前の君なら喜んですぐにでも頷いていただろうに。
誰か悪いヤツが、シュミナによからぬ事を吹き込んだのかな。……少し、調べてみないとね。
ダメだよ、歪んで捻じ曲がって美しい僕のシュミナを『まとも』にしようなんて。
そんな悪いヤツはちゃんと排除しないと。
「……エイデンは、私がその。……ううん、なんでもない」
シュミナは僕の目を救いを求めるように見つめた後に、そっと逸した。
シュミナ、どうしたの? 僕に助けられる事ならなんでも言って?
浅はかな君の、浅はかな悩みを、僕に教えて?
……まともになりたいなんて事以外なら何でも聞いてあげるから。
「メイカー! 教科書貸してー!」
パタパタと軽い足音を立てて、赤い髪を翻したミルカ王女が僕らの目の前を通り過ぎる。
可愛いけれど割と真っ当でつまらないメイカ王子の妹君。
僕はちらりと目を向けたけれど興味が無いからすぐに逸した。
「ミルカ、また教科書忘れたの?」
「メイカうるさい。いいから貸して!」
双子はわいわいと騒がしくしている……なんというか、嫌になる程健全な空気だね。
ふと、ミルカ王女がこちらに目をやって……驚いたように目を見開いて数度瞬きした。
……彼女はシュミナを見ている? どうして?
僕は嫌な予感を感じて、シュミナの肩を強く抱いた。
シュミナは今のままでいいんだ。僕のシュミナに、余計な事はしないでね?
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