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未来のことを考えよう~オボロアナグマの肉うどんを添えて~9
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甘めに味付けたアナグマ肉のコンソメ煮を作り終えてから、コンソメをベースにして塩と胡椒で味付けしたシンプルなうどんスープを作成する。
そして寝かせているうどん生地の様子を見に行くと、寝かせはじゅうぶんのようだった。
──さて、今度はのしていくか。
のし板なんてものはないので大きめのまな板に打ち粉を振って生地を置き、さらに生地にも打ち粉を振る。俺の周囲には『異世界料理』に興味津々という顔の料理人たちの人垣が出来、その中にはアリリオ殿下とパルメダさんの姿もあった。
「よっ……と」
寝かせた生地を両手で押し、広げ。そして畳む。
綿棒を生地の上でころころと転がし、生地を薄く広げていく。生地を満足のいく薄さに伸ばし終ったら今度はそれを丁寧に畳み、あとはよい感じの細さに切ったら麺の完成である。
「椛音。今日は太麺と細麺どっちがいい?」
「お腹が空いてるから、食べ応えのある太麺がいい!」
椛音に訊ねると、元気のいい答えが返ってくる。
ふむ、濃厚な味わいのオボロアナグマの肉とは太麺の方が相性がいいかもしれないな。
「わかった。椛音の口に合う美味いうどんを作ってやるから待ってろよ」
にやりと笑ってみせつつそう言ってから、俺は生地に包丁を入れた。そしてトントンというリズミカルな音を立てつつ、椛音好みの太麺になるよう生地を刻んでいく。そうしながら、そろそろお湯を沸かしておくかと思い立つ。
「アリリオ殿下、大鍋にお湯を沸かしてもらっていいですか?」
「なぜ、僕が」
殿下に手伝いを頼めば、彼は思い切り顔を顰める。その隣で、パルメダさんはぷっと小さく吹き出した。
「ふふ。殿下に手伝いを頼むなんて怖いもの知らずですねぇ」
パルメダさんがそう言いながらくすくすと笑う。
アリリオ殿下が『いい子』なのがわかっているのでついつい頼んでしまったが、冷静に考えると王族にあれこれ頼むのはよろしくないな。
「魔法が得意な殿下に頼めば一瞬で沸騰したお湯ができるかなぁと思ったもので、つい。申し訳ありません、自分で準備します」
「やらないとは言っていないだろう」
アリリオ殿下はため息をつきつつ言うと、料理人がさっと用意した大鍋に手を翳す。そして、小さくなにかを呟いた。すると瞬きをする程度の時間で、鍋は熱湯で満たされた。
「すごい、一瞬だ」
「当然だ。僕は天才だからな」
何度見ても魔法というものは不思議な存在だ。俺は思わず声を漏らしてしまう。するとアリリオ殿下は小さく鼻を鳴らしながら、胸を張った。熱湯で満たされた鍋は、料理人がコンロに移動し火をつけ保温をしてくれた。
「ありがとうございます、アリリオ殿下」
「……これくらい、礼などいらん」
アリリオ殿下はそう言うと、ぷいと横を向いてしまう。
そんな殿下を目にしたパルメダさんと料理人たちは、孫を見るような顔で頰を緩めた。
「叔父さん、生地を切る手が止まってるよ~」
「ああ、すまんすまん」
椛音に言われて、俺は慌てて手を動かす。
長い同居生活で椛音の好みは完璧と言っていいくらいに把握している。椛音と暮らすようになってから、俺の料理は客に出すための料理から椛音のための料理になった。この可愛い姉の忘れ形見が喜ぶようにと、そればかりを考えていた。
──この姪が喜ぶ料理を作らせたら、俺はたぶん世界一の腕前だ。
そして寝かせているうどん生地の様子を見に行くと、寝かせはじゅうぶんのようだった。
──さて、今度はのしていくか。
のし板なんてものはないので大きめのまな板に打ち粉を振って生地を置き、さらに生地にも打ち粉を振る。俺の周囲には『異世界料理』に興味津々という顔の料理人たちの人垣が出来、その中にはアリリオ殿下とパルメダさんの姿もあった。
「よっ……と」
寝かせた生地を両手で押し、広げ。そして畳む。
綿棒を生地の上でころころと転がし、生地を薄く広げていく。生地を満足のいく薄さに伸ばし終ったら今度はそれを丁寧に畳み、あとはよい感じの細さに切ったら麺の完成である。
「椛音。今日は太麺と細麺どっちがいい?」
「お腹が空いてるから、食べ応えのある太麺がいい!」
椛音に訊ねると、元気のいい答えが返ってくる。
ふむ、濃厚な味わいのオボロアナグマの肉とは太麺の方が相性がいいかもしれないな。
「わかった。椛音の口に合う美味いうどんを作ってやるから待ってろよ」
にやりと笑ってみせつつそう言ってから、俺は生地に包丁を入れた。そしてトントンというリズミカルな音を立てつつ、椛音好みの太麺になるよう生地を刻んでいく。そうしながら、そろそろお湯を沸かしておくかと思い立つ。
「アリリオ殿下、大鍋にお湯を沸かしてもらっていいですか?」
「なぜ、僕が」
殿下に手伝いを頼めば、彼は思い切り顔を顰める。その隣で、パルメダさんはぷっと小さく吹き出した。
「ふふ。殿下に手伝いを頼むなんて怖いもの知らずですねぇ」
パルメダさんがそう言いながらくすくすと笑う。
アリリオ殿下が『いい子』なのがわかっているのでついつい頼んでしまったが、冷静に考えると王族にあれこれ頼むのはよろしくないな。
「魔法が得意な殿下に頼めば一瞬で沸騰したお湯ができるかなぁと思ったもので、つい。申し訳ありません、自分で準備します」
「やらないとは言っていないだろう」
アリリオ殿下はため息をつきつつ言うと、料理人がさっと用意した大鍋に手を翳す。そして、小さくなにかを呟いた。すると瞬きをする程度の時間で、鍋は熱湯で満たされた。
「すごい、一瞬だ」
「当然だ。僕は天才だからな」
何度見ても魔法というものは不思議な存在だ。俺は思わず声を漏らしてしまう。するとアリリオ殿下は小さく鼻を鳴らしながら、胸を張った。熱湯で満たされた鍋は、料理人がコンロに移動し火をつけ保温をしてくれた。
「ありがとうございます、アリリオ殿下」
「……これくらい、礼などいらん」
アリリオ殿下はそう言うと、ぷいと横を向いてしまう。
そんな殿下を目にしたパルメダさんと料理人たちは、孫を見るような顔で頰を緩めた。
「叔父さん、生地を切る手が止まってるよ~」
「ああ、すまんすまん」
椛音に言われて、俺は慌てて手を動かす。
長い同居生活で椛音の好みは完璧と言っていいくらいに把握している。椛音と暮らすようになってから、俺の料理は客に出すための料理から椛音のための料理になった。この可愛い姉の忘れ形見が喜ぶようにと、そればかりを考えていた。
──この姪が喜ぶ料理を作らせたら、俺はたぶん世界一の腕前だ。
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