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花屋のうさぎとその友人1
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花屋を出てから大きな通りを一本越えて、飲食店が密集している狭い通りに入る。お昼時なのもあって通行人は多く、僕はそのことにほっとした。……『オメガの誘拐事件』なんてことを聞いてしまうと、やっぱり少し不安になってしまうから。
目当ての定食屋は通りに入って三軒目の建物の一階に入っている、『白熊亭』という小さな店だ。白熊族のご主人が経営しており、白熊族サイズに合わせた大きな調理器具で調理されるその料理は安くてボリューム満点なのだ。
店の扉を開けて中を見渡すと、茶色の髪のうさぎ族の男が一人で食事をしているのが目に入った。友人のロランだ。
「ロラン、居た!」
彼は山盛りのオムライスを小さな口を動かしてもぐもぐと食べているところで、僕を見ると軽く手を振った。
「リオネル様の愛人様じゃん。久しぶりぃ!」
ロランは黒の瞳を細めて、少し意地の悪い笑みを浮かべる。僕はリオネル様の愛人じゃない。……愛人ではないけれど、恥ずかしいことはされてしまったという微妙な仲だ。
昨日のことを思い浮かべると頬が熱くなる。僕は熱を冷まそうと顔をパタパタと手で扇いだ。そんな僕の様子を見ながら、ロランは楽しそうに笑った。
「誤解を招く言い方は止めてよ!」
「ふーん、誤解ねぇ」
「本当に誤解だから!」
「ふーん」
……ロランがいいやつだけれど、人の恋愛話が大好きである。なにかを期待するような目でこちらを見ているけれど、期待するような甘い話は出ないから!
僕はロランの向かいの席に腰を下ろすと、壁に貼ってあるメニューを見た。今日のお昼は小オムライスか、鶏のソテー……うん、僕もオムライスにしよう。
「オムライスください!」
注文を取りに来たご主人にそう告げると、彼は無言で頷いて厨房へと向かう。ここのオムライスは卵がふわふわで美味しいんだよな。最近はリオネル様のところに通いっぱなしでご無沙汰だったので、久しぶりに食べられるのが嬉しい。
「……ロラン」
「なぁに? レイラ」
ロランは丸い瞳を好奇心でキラキラと輝かせている。会えなかった間の土産話を望んでいるんだろうな。うん、その土産話……というか相談をしたくて来たんだけど。
「ロラン。夜に話す機会とか作れないかな?」
「えっ、夜? 今からでもいいよ。これを食べたら、店長に仕事休むーって言ってくるね」
「いいの?」
「うん。あの人俺に甘いし!」
ロランはそう言って、にししと悪戯っぽく笑った。
彼の勤め先は大通りにある雑貨店だ。犬族のアルファが店長で……そしてロランの恋人である。
たしかに……店長はロランに甘い。
ロランは整った見た目の上に、甘え上手だしな。甘やかしてしまいたくなるのもわかる。
「じゃあ、悩みの相談に乗って欲しいな」
「うんうん、いいよいいよ。いっぱい聞いちゃう!」
「……なんだか楽しそうだけど。僕、本当に悩んでるんだからね?」
「恋の悩みって苦しくて……楽しいよねぇ」
……相談相手、間違ったかな。
なんだかウキウキとしているロランを見て、僕は内心ため息をつく。
だけど彼はこう見えて、真剣に話を聞いてくれるし口も固いのだ。
目当ての定食屋は通りに入って三軒目の建物の一階に入っている、『白熊亭』という小さな店だ。白熊族のご主人が経営しており、白熊族サイズに合わせた大きな調理器具で調理されるその料理は安くてボリューム満点なのだ。
店の扉を開けて中を見渡すと、茶色の髪のうさぎ族の男が一人で食事をしているのが目に入った。友人のロランだ。
「ロラン、居た!」
彼は山盛りのオムライスを小さな口を動かしてもぐもぐと食べているところで、僕を見ると軽く手を振った。
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ロランは黒の瞳を細めて、少し意地の悪い笑みを浮かべる。僕はリオネル様の愛人じゃない。……愛人ではないけれど、恥ずかしいことはされてしまったという微妙な仲だ。
昨日のことを思い浮かべると頬が熱くなる。僕は熱を冷まそうと顔をパタパタと手で扇いだ。そんな僕の様子を見ながら、ロランは楽しそうに笑った。
「誤解を招く言い方は止めてよ!」
「ふーん、誤解ねぇ」
「本当に誤解だから!」
「ふーん」
……ロランがいいやつだけれど、人の恋愛話が大好きである。なにかを期待するような目でこちらを見ているけれど、期待するような甘い話は出ないから!
僕はロランの向かいの席に腰を下ろすと、壁に貼ってあるメニューを見た。今日のお昼は小オムライスか、鶏のソテー……うん、僕もオムライスにしよう。
「オムライスください!」
注文を取りに来たご主人にそう告げると、彼は無言で頷いて厨房へと向かう。ここのオムライスは卵がふわふわで美味しいんだよな。最近はリオネル様のところに通いっぱなしでご無沙汰だったので、久しぶりに食べられるのが嬉しい。
「……ロラン」
「なぁに? レイラ」
ロランは丸い瞳を好奇心でキラキラと輝かせている。会えなかった間の土産話を望んでいるんだろうな。うん、その土産話……というか相談をしたくて来たんだけど。
「ロラン。夜に話す機会とか作れないかな?」
「えっ、夜? 今からでもいいよ。これを食べたら、店長に仕事休むーって言ってくるね」
「いいの?」
「うん。あの人俺に甘いし!」
ロランはそう言って、にししと悪戯っぽく笑った。
彼の勤め先は大通りにある雑貨店だ。犬族のアルファが店長で……そしてロランの恋人である。
たしかに……店長はロランに甘い。
ロランは整った見た目の上に、甘え上手だしな。甘やかしてしまいたくなるのもわかる。
「じゃあ、悩みの相談に乗って欲しいな」
「うんうん、いいよいいよ。いっぱい聞いちゃう!」
「……なんだか楽しそうだけど。僕、本当に悩んでるんだからね?」
「恋の悩みって苦しくて……楽しいよねぇ」
……相談相手、間違ったかな。
なんだかウキウキとしているロランを見て、僕は内心ため息をつく。
だけど彼はこう見えて、真剣に話を聞いてくれるし口も固いのだ。
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