無理なご乗車はお辞め下さい

salmon mama

文字の大きさ
1 / 1

無理なご乗車はお辞め下さい

しおりを挟む
「無理なご乗車はおやめくださ~い。」

 慌ただしい駅構内。駅員の声が響きます。

「無理なご乗車をします。」

 人Aが言いました。

「だめですよ。無理なご乗車はだめですよ。」

 駅員さんが言いました。

「無理なご乗車は好きですか?」

 人Aが言いました。

「無理なご乗車は嫌いです。」

 駅員さんが答えます。

 ビリビリビリビリビリビリビリビリ

 不穏な空気が漂う。

 ビリビリビリビリビリビリ

 ポーーー!!

 とうとう電車がやってきました。満員電車のようです

 グオーッ

 扉が開き、ところてんみたいに人間が溢れ出てきます。

 グオーッ

 グオーッ、としている。

 しばらくすると、今度はホームに溢れていた人々が電車に乗り込んでいきます。信号が変わったみたいです。こんなにたくさんの人々乗り切れるのだろうか。しかし、

「無理なご乗車をします。」

 彼は全く動きません。微動だにしません。微動だにせず口をモゴモゴ動かして

「無理なご乗車をします。」

 と言っています。

「無理なご乗車はお辞め下さい。」

 アナウンスが流れても

「無理なご乗車をします。」

 と呟き続けます。

「無理なご乗車はやめなさい!!」

「無理なご乗車はやめろお!!」

「やめろ!!普通のご乗車しろ!!」

 事態を重く見た駅員さんたちが集まってきました。しかし、

「無理なご乗車をします。」

 彼は呟き続けるだけ。動こうとしません。やがて、ホームは彼だけになりました。電車はパンパンです。

「今から、無理なご乗車をします。」  

「やめろお!!」

「無理なご乗車やめろお!!」

 駅員の怒号が響きます。しかし、それを嘲笑うかのように彼はドアの前に立ち、しゃがみました。

「やめろお!!無理なご乗車はやめろお!!」

 続いて、ダンゴムシのような体制をとりました。

「無理なご乗車はやめろおおおお!!」

「おいいいい!!やめろおお!!普通のご乗車しろおおおお!!」

「今から、無理なご乗車をします。」

 くるりん

 駅員の静止虚しく、彼は前転をしました。満員電車に、前転で乗り込もうとしたのです。

 ガアッ

 足が、挟まっている。電車とホームの間に。そして、電車の扉は閉まり、今にも電車は走り出しそうです。

 ウィーーン

 ガアッ!!ガアッ!!

 焦る男!!しかし、声が響きました。

 ストーーーップ!!ストーーーップ!!

 トマレーー!!トマレーー!!

 この声は、駅員です。駅員の声です。電車の扉は開き、出発は数分先送りされました....。

「全く、しょうがないな。」

 男の救出を始める、駅員たち.....。

「こ、こんな俺のために.....。ありがとう.....。優しくしてくれて、ありがとう.....。言うこときかなかったのにさ......。こんなの、人生初めてだ。もう、どうでもよくなってしまって、こんなことをしてしまった.....。ありがとう、ありがとう。」

「ああ、もうこんなことをするんじゃないぞ。」

 駅員は呆れながらも笑顔で語りかける。

「俺も、駅員になる。駅員になるよ....。」

 男は駅員になる決意をしましたが、面接での駅員を志したエピソードみたいなところでこの話をしまくったので、無理でした。

 完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...