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みんなでティッシュを食べよう
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麗らかな春。川はうらうら流れて行く。うらうらら~、うらうらら~。
今日はたかし君とりょうた君と遊ぶ。春だもの、春だもの。川べりに集まるんだ。早く着きすぎたので辺りを見回すと、つくしがツクツク立っている。小鳥はカエルやミミズたちと食物連鎖を形成している。私も彼等とは食物連鎖で結ばれているのだ。そんなことを考えているうちにみんなやってきた。麦わら帽子のたかし君と、同じく麦わら帽子のりょうた君だ。
「やあみんな、今日はなにして遊ぼうか。」
声をかける。
「みんなでティッシュを食べようよ。」
たかし君が言った。でも僕はティッシュを食べたいとは思わない。
「嫌だ。僕はティッシュを食べたくないよ。」
「僕も嫌だ。ティッシュを食べるならたかし君一人で食べて。」
りょうた君も僕に続いて言った。
「わかった。じゃあ一人で食べるよ。みんな、後悔しても知らないぞ。」
そういうとたかし君はリュックサックからティッシュボックスを取り出し、食べ始めた。
ポックポックポック
ティッシュボックスを壊し、一気に5枚ぐらい掴んでは丸めて口に放り込んでいる。僕とりょうた君は黙ってその様子を見つめた。たかし君は滑らかに、そりすべりのようにティッシュを食べている。人がティッシュを食べる様子を見るのは初めてだが、これはおかしい。たかし君のティッシュの食べ方、あまりにも滑らかなのだ。恐らくこれは初めての動きではない。私は思った。きっと、彼は家で何度もティッシュを食べる練習をしており、その成果を今私たちに見せつけているのだ。あわよくばみんなで一緒にティッシュを食べ、ティッシュを食べるのが自分より下手くそな私たちを馬鹿にしようと思っていたのかもしれない。改めてティッシュ食を拒否したのは正解だったな、私は思った。そんなことを考えている間もたかし君はティッシュを食べ続けている。
ポックポックポック
ふと、視線をそらす。川に一匹の魚が浮いている。仰向けになり天を仰いだ状態で流れて行く、鯉。嫌な予感がした。
ボボボボボグィッ
突然たかし君が苦しそうな声をあげる。顔が真っ赤だ。恐らく喉にティッシュを詰まらせたのだろう。苦しそうに暴れている。バタバタ、バタバタと、手足をバタバタ、バタバタとバタバタしている。助けてあげたいにも近づけない。何故なら、手足をバタバタ、バタバタとしているからだ。もし近づいて彼のバタバタ、バタバタした手足にぶつかってしまったら僕は打撲するかもしれない。そんなの真っ平御免だ。しばらくするとたかし君は動かなくなった。風船石蛙のやうに動かない。動かなくなったので僕はたかし君に近づいた。何故なら今は昔のように手足をバタバタ、バタバタさせていないからだ。バタバタ、バタバタしていないから僕は打撲する心配がないのだ。
「大丈夫かい?」
返事はない。私はたかし君の腕をとり、脈を確認する。動いていない。つまり、死んでいるのだ。りょうた君は黙って一部始終を見ていた。
「脈がない。たかし君は死んだみたいだ。恐らく窒息死だろう。」
僕はりょうた君に告げた。りょうた君は目を伏せながら言った。
「そんなはずはない。きっとティッシュになにか良くない虫の卵が付いていてそれが孵化し、たかし君のお腹の中で暴れ回ったんだ。窒息死のはずがないよ。」
「いや、この短時間でそんなことがあるはずがない。窒息死したんだ。」
僕は言った。
「まあいいよ。僕は窒息死だなんて信じないからね。虫が孵化したんだ。」
まあいい、どちらにせよたかし君は死んでしまったんだ。何であれ彼は戻ってこない。あんなに上手にティッシュを食べていたのに。河童の川流れというやつだろうか。もう、たかし君は川に流してしまおう。彼は終わったんだ。死んだら終わり、とお母さんが言っていた。死んだら終わりだから死なないように気をつけてね、という意味だろうが。とりあえずたかし君は終わり。終わったものと一緒にはいれない。僕たちはまだ終わってない、前に進んでいかなければいけないのだもの。
僕が頭を、りょうた君が足を掴んだ。ハンモックのようにたかし君を運ぶ。川辺に行き、バッシャーーーーン!!
たかし君を放り投げた。
どんぶらこ、どんぶらこ
たかし君は流れて行った。うらうらうらうら流れている川。どんぶらこ、どんぶらこ流れて行くたかし君。ああ、うらうらどんぶらこ、うらうらどんぶらこだ、私は思った。
じゃあね~
たかし君が見えなくなったので私たちは帰ることにした。私は家へ帰った。
日記を書く。日記には事実だけ書くことにしている。これは自分ルールだ。それ以外のことを書くと長くなってきりがないし、時間もかかってしまう。
「4月10日。今日はたかし君とりょうた君と遊んだ。たかし君がティッシュを食べようと提案してきたのを僕とりょうた君が拒否した。そのためたかし君は一人でティッシュを食べた。最初は上手に食べていたが最終的にティッシュを喉に詰まらせ死んでしまった。そのことをりょうた君に知らせると彼はティッシュに寄生虫の卵が付いていて、それがたかし君のお腹の中で孵化し暴れたため死んだんだと言い張っていた。僕とりょうた君はたかし君を川に流した。」
終わった。僕はベッドに飛び込む。突然、こみ上げる思い。目から涙が溢れてくる。ああ、なんで一緒に食べてやらなかったんだろう。一緒に食べていたらたかし君はあんな大量にティッシュを食べることなかったんだ。みんなで分担してたらたかし君がティッシュを喉に詰まらせる前にティッシュがなくなっていたかもしれないのに。そしたらたかし君は死ななくて済んだんだ。罪悪感で胸がいっぱいになる。もしかしてりょうた君が虫の卵のせいと言い張ったのはこのせいなのかもしれない。虫の卵だったらみんなで分担していようがいまいが確実に誰か死んでいただろうから。そんな気がする。ああ、きっとりょうた君のあれは自己弁護だったのだ。自分がどうしようと死人が出ていたんだ、と自分に言い聞かせていたのだ。あの一瞬でそんな自己弁護を思いつくなんて。意識的に自己弁護したのか無意識的に自己弁護したのか。現実逃避と呼んだ方がいいのかもしれないが。どちらにせよすごいやつだ、あいつは。そんなことを考えていると、どんぶらこ、どんぶらこと眠気がやってきた。
どんぶらこ、どんぶらこ(寝言)
完
今日はたかし君とりょうた君と遊ぶ。春だもの、春だもの。川べりに集まるんだ。早く着きすぎたので辺りを見回すと、つくしがツクツク立っている。小鳥はカエルやミミズたちと食物連鎖を形成している。私も彼等とは食物連鎖で結ばれているのだ。そんなことを考えているうちにみんなやってきた。麦わら帽子のたかし君と、同じく麦わら帽子のりょうた君だ。
「やあみんな、今日はなにして遊ぼうか。」
声をかける。
「みんなでティッシュを食べようよ。」
たかし君が言った。でも僕はティッシュを食べたいとは思わない。
「嫌だ。僕はティッシュを食べたくないよ。」
「僕も嫌だ。ティッシュを食べるならたかし君一人で食べて。」
りょうた君も僕に続いて言った。
「わかった。じゃあ一人で食べるよ。みんな、後悔しても知らないぞ。」
そういうとたかし君はリュックサックからティッシュボックスを取り出し、食べ始めた。
ポックポックポック
ティッシュボックスを壊し、一気に5枚ぐらい掴んでは丸めて口に放り込んでいる。僕とりょうた君は黙ってその様子を見つめた。たかし君は滑らかに、そりすべりのようにティッシュを食べている。人がティッシュを食べる様子を見るのは初めてだが、これはおかしい。たかし君のティッシュの食べ方、あまりにも滑らかなのだ。恐らくこれは初めての動きではない。私は思った。きっと、彼は家で何度もティッシュを食べる練習をしており、その成果を今私たちに見せつけているのだ。あわよくばみんなで一緒にティッシュを食べ、ティッシュを食べるのが自分より下手くそな私たちを馬鹿にしようと思っていたのかもしれない。改めてティッシュ食を拒否したのは正解だったな、私は思った。そんなことを考えている間もたかし君はティッシュを食べ続けている。
ポックポックポック
ふと、視線をそらす。川に一匹の魚が浮いている。仰向けになり天を仰いだ状態で流れて行く、鯉。嫌な予感がした。
ボボボボボグィッ
突然たかし君が苦しそうな声をあげる。顔が真っ赤だ。恐らく喉にティッシュを詰まらせたのだろう。苦しそうに暴れている。バタバタ、バタバタと、手足をバタバタ、バタバタとバタバタしている。助けてあげたいにも近づけない。何故なら、手足をバタバタ、バタバタとしているからだ。もし近づいて彼のバタバタ、バタバタした手足にぶつかってしまったら僕は打撲するかもしれない。そんなの真っ平御免だ。しばらくするとたかし君は動かなくなった。風船石蛙のやうに動かない。動かなくなったので僕はたかし君に近づいた。何故なら今は昔のように手足をバタバタ、バタバタさせていないからだ。バタバタ、バタバタしていないから僕は打撲する心配がないのだ。
「大丈夫かい?」
返事はない。私はたかし君の腕をとり、脈を確認する。動いていない。つまり、死んでいるのだ。りょうた君は黙って一部始終を見ていた。
「脈がない。たかし君は死んだみたいだ。恐らく窒息死だろう。」
僕はりょうた君に告げた。りょうた君は目を伏せながら言った。
「そんなはずはない。きっとティッシュになにか良くない虫の卵が付いていてそれが孵化し、たかし君のお腹の中で暴れ回ったんだ。窒息死のはずがないよ。」
「いや、この短時間でそんなことがあるはずがない。窒息死したんだ。」
僕は言った。
「まあいいよ。僕は窒息死だなんて信じないからね。虫が孵化したんだ。」
まあいい、どちらにせよたかし君は死んでしまったんだ。何であれ彼は戻ってこない。あんなに上手にティッシュを食べていたのに。河童の川流れというやつだろうか。もう、たかし君は川に流してしまおう。彼は終わったんだ。死んだら終わり、とお母さんが言っていた。死んだら終わりだから死なないように気をつけてね、という意味だろうが。とりあえずたかし君は終わり。終わったものと一緒にはいれない。僕たちはまだ終わってない、前に進んでいかなければいけないのだもの。
僕が頭を、りょうた君が足を掴んだ。ハンモックのようにたかし君を運ぶ。川辺に行き、バッシャーーーーン!!
たかし君を放り投げた。
どんぶらこ、どんぶらこ
たかし君は流れて行った。うらうらうらうら流れている川。どんぶらこ、どんぶらこ流れて行くたかし君。ああ、うらうらどんぶらこ、うらうらどんぶらこだ、私は思った。
じゃあね~
たかし君が見えなくなったので私たちは帰ることにした。私は家へ帰った。
日記を書く。日記には事実だけ書くことにしている。これは自分ルールだ。それ以外のことを書くと長くなってきりがないし、時間もかかってしまう。
「4月10日。今日はたかし君とりょうた君と遊んだ。たかし君がティッシュを食べようと提案してきたのを僕とりょうた君が拒否した。そのためたかし君は一人でティッシュを食べた。最初は上手に食べていたが最終的にティッシュを喉に詰まらせ死んでしまった。そのことをりょうた君に知らせると彼はティッシュに寄生虫の卵が付いていて、それがたかし君のお腹の中で孵化し暴れたため死んだんだと言い張っていた。僕とりょうた君はたかし君を川に流した。」
終わった。僕はベッドに飛び込む。突然、こみ上げる思い。目から涙が溢れてくる。ああ、なんで一緒に食べてやらなかったんだろう。一緒に食べていたらたかし君はあんな大量にティッシュを食べることなかったんだ。みんなで分担してたらたかし君がティッシュを喉に詰まらせる前にティッシュがなくなっていたかもしれないのに。そしたらたかし君は死ななくて済んだんだ。罪悪感で胸がいっぱいになる。もしかしてりょうた君が虫の卵のせいと言い張ったのはこのせいなのかもしれない。虫の卵だったらみんなで分担していようがいまいが確実に誰か死んでいただろうから。そんな気がする。ああ、きっとりょうた君のあれは自己弁護だったのだ。自分がどうしようと死人が出ていたんだ、と自分に言い聞かせていたのだ。あの一瞬でそんな自己弁護を思いつくなんて。意識的に自己弁護したのか無意識的に自己弁護したのか。現実逃避と呼んだ方がいいのかもしれないが。どちらにせよすごいやつだ、あいつは。そんなことを考えていると、どんぶらこ、どんぶらこと眠気がやってきた。
どんぶらこ、どんぶらこ(寝言)
完
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