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お墓火山
しおりを挟む噴火しました。
ドッカーーーンッ!!
「噴火しましたね。」
村人の里美さんが言いました。ゴミ捨て場の前でたむろする人々。
「本当ですね。噴火したねえ。」
人付き合いの良い雪子おばさんが言いました。
「噴火したなあ。」
長老のたかとさんも言いました。目がしょぼしょぼしています。
「噴火しましたよ。」
山も言いました。
「わあ、山さん。喋れるんですね。知らなかった。」
里美さんがびっくりして言いました。
「すごいですねえ。喋るのですねえ。」
「すごい、すごい。」
雪子おばさんも長老たかとさんもそれに続きます。みんな、感動しています。
ドシンドシーンッ!!ドシンドシンドシーンッ!!
辺りには火山岩が降り注いでいます。
「どうして山さんは噴火したのかしら?」
ゆきこおばさんが尋ねます。山に向かって尋ねます。
「季節性風邪のようなものですよ。ドカーンッ、ドカーンッ!!」
若者のような澄んだ声で応える山さん。へえ、噴火ってそんな感じだったのだなあ。人々は皆、感動しています。
ドシンドシーンッ!!ドシンドシンドシーンッ!!
火山岩が相変わらず降り注いでいます。
グチョッ!!
大きな火山岩が、長老の上にグチョッ。
「あらまあ、長老さん。死んでしまいましたわ。」
「本当ですわ。死んでしまいましたわ。」
岩の下からは体液がだらだら流れています。
「お通夜、お通夜ですわ。人が死んだらお通夜ですわ。」
「そうです。そうです。お通夜ですわ。お通夜の準備ー!!お通夜の準備ー!!」
「お通夜だお通夜だーっ!!」
ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ
人々が騒ぎ始めます。
「お通夜ーっ!!お通夜の準備ーっ!!」
「長老!!死!!お通夜の準備ーっ!!」
「死んだ!!長老死んだ!!お通夜!!お通夜!!」
ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ
人々が行き交います。
「その必要はありませんよ。」
ドゴーーーーンッ!!
大砲みたいな声が響きました。これは、山。山さんです。大砲みたいですが、どことなくクールです。
「なんでですか?どうしてですか?人が死んだら通夜でしょう。人が死んだら通夜ですよ。」
「そうだー!!そうだそうだー!!」
「その通り!!通夜だ通夜だー!!」
人々が続きます。だって、人が死んだら通夜なのですから。
「いいえ、必要ありません。」
山は繰り返します。
「何言ってんだー!!通夜だろー!!」
「人が死んだら通夜だー!!」
ひゅーんひゅーん
遂には山へ投石を始める人まで出てきました。恐ろしい。人間というものは恐ろしい。
「通夜だ通夜だー!!」
「そうだそうだー!!」
「いいえ違います。彼はもう完成している。」
山は落ち着いていいました。流石、若そうなのにどっしりしています。
「ど、どういうことだー!!それはどういうことなんだー!!」
「最終形態はなんですか?お墓ですよね。ほら、もう彼の上には私の火山岩が墓石のように乗っかっている。もう彼はお墓になっているのです。」
「ええっ!!そんなあっ!!」
ジロジロジロ、ジロジロジロ
火山岩に群がる人々。ジロジロ食い入るように眺める。
ジロジロジロ、ジロジロジロ
「た、確かに...。お墓だ...。」
「お墓だーっ!!お墓だーっ!!」
「すごい!!すごいーっ!!」
「お墓だすごいーっ!!」
あっという間に歓声に包まれるフィールド。
「フッフーーンッ!!」
山は、鼻高々だ。
この日から、『山』という言葉は『殺人者・お墓屋さん』という意味も持つようになったのだ。
ドドドドドドドドドドドドッ(仕事を奪われたお墓屋さんが頑張って山を削っている音。)
完
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