お墓火山

salmon mama

文字の大きさ
1 / 1

お墓火山

しおりを挟む

噴火しました。

ドッカーーーンッ!!

「噴火しましたね。」

村人の里美さんが言いました。ゴミ捨て場の前でたむろする人々。

「本当ですね。噴火したねえ。」

人付き合いの良い雪子おばさんが言いました。

「噴火したなあ。」

長老のたかとさんも言いました。目がしょぼしょぼしています。

「噴火しましたよ。」

山も言いました。

「わあ、山さん。喋れるんですね。知らなかった。」

里美さんがびっくりして言いました。

「すごいですねえ。喋るのですねえ。」

「すごい、すごい。」
 
雪子おばさんも長老たかとさんもそれに続きます。みんな、感動しています。

ドシンドシーンッ!!ドシンドシンドシーンッ!!

辺りには火山岩が降り注いでいます。

「どうして山さんは噴火したのかしら?」

ゆきこおばさんが尋ねます。山に向かって尋ねます。

「季節性風邪のようなものですよ。ドカーンッ、ドカーンッ!!」

若者のような澄んだ声で応える山さん。へえ、噴火ってそんな感じだったのだなあ。人々は皆、感動しています。

ドシンドシーンッ!!ドシンドシンドシーンッ!!

火山岩が相変わらず降り注いでいます。

グチョッ!!

大きな火山岩が、長老の上にグチョッ。

「あらまあ、長老さん。死んでしまいましたわ。」

「本当ですわ。死んでしまいましたわ。」

岩の下からは体液がだらだら流れています。

「お通夜、お通夜ですわ。人が死んだらお通夜ですわ。」

「そうです。そうです。お通夜ですわ。お通夜の準備ー!!お通夜の準備ー!!」

「お通夜だお通夜だーっ!!」

ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ

人々が騒ぎ始めます。

「お通夜ーっ!!お通夜の準備ーっ!!」

「長老!!死!!お通夜の準備ーっ!!」

「死んだ!!長老死んだ!!お通夜!!お通夜!!」

ザワザワザワザワ、ザワザワザワザワ

人々が行き交います。

「その必要はありませんよ。」

ドゴーーーーンッ!!

大砲みたいな声が響きました。これは、山。山さんです。大砲みたいですが、どことなくクールです。

「なんでですか?どうしてですか?人が死んだら通夜でしょう。人が死んだら通夜ですよ。」

「そうだー!!そうだそうだー!!」

「その通り!!通夜だ通夜だー!!」

人々が続きます。だって、人が死んだら通夜なのですから。

「いいえ、必要ありません。」

山は繰り返します。

「何言ってんだー!!通夜だろー!!」

「人が死んだら通夜だー!!」

ひゅーんひゅーん

遂には山へ投石を始める人まで出てきました。恐ろしい。人間というものは恐ろしい。

「通夜だ通夜だー!!」

「そうだそうだー!!」

「いいえ違います。彼はもう完成している。」

山は落ち着いていいました。流石、若そうなのにどっしりしています。

「ど、どういうことだー!!それはどういうことなんだー!!」

「最終形態はなんですか?お墓ですよね。ほら、もう彼の上には私の火山岩が墓石のように乗っかっている。もう彼はお墓になっているのです。」

「ええっ!!そんなあっ!!」

ジロジロジロ、ジロジロジロ

火山岩に群がる人々。ジロジロ食い入るように眺める。

ジロジロジロ、ジロジロジロ

「た、確かに...。お墓だ...。」

「お墓だーっ!!お墓だーっ!!」

「すごい!!すごいーっ!!」

「お墓だすごいーっ!!」

あっという間に歓声に包まれるフィールド。

「フッフーーンッ!!」

山は、鼻高々だ。

この日から、『山』という言葉は『殺人者・お墓屋さん』という意味も持つようになったのだ。


ドドドドドドドドドドドドッ(仕事を奪われたお墓屋さんが頑張って山を削っている音。)


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

幼馴染、幼馴染、そんなに彼女のことが大切ですか。――いいでしょう、ならば、婚約破棄をしましょう。~病弱な幼馴染の彼女は、実は……~

銀灰
恋愛
テリシアの婚約者セシルは、病弱だという幼馴染にばかりかまけていた。 自身で稼ぐこともせず、幼馴染を庇護するため、テシリアに金を無心する毎日を送るセシル。 そんな関係に限界を感じ、テリシアはセシルに婚約破棄を突き付けた。 テリシアに見捨てられたセシルは、てっきりその幼馴染と添い遂げると思われたが――。 その幼馴染は、道化のようなとんでもない秘密を抱えていた!? はたして、物語の結末は――?

9時から5時まで悪役令嬢

西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」 婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。 ならば私は願い通りに動くのをやめよう。 学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで 昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。 さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。 どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。 卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ? なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか? 嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。 今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。 冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。 ☆別サイトにも掲載しています。 ※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。 これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。

処理中です...