お客秋刀魚

salmon mama

文字の大きさ
1 / 1

お客秋刀魚

しおりを挟む
 今日は午後一で仕事だ。午後一というのは12:00:00 のことだ。午後一で働くのだ。ジョブする。具体的な仕事は何かと聞かれると、それはコップにコーヒーを注ぐ仕事だ。いいだろう。楽しそうだろう。

 ハッハッハッハッハ

 チリンチリンチリーン

 早速最初のお客様がやってきた。夏だからお客サマーと呼ぶことにしている。そういう決まりだから。ちなみに秋はお客秋刀と呼ぶのだ。そういう決まりだから。

 ハッハッハッハッハ

 いらっしゃいませ~

 ドアを開けると、さかながピチピチしている。これは秋刀魚だ。珍しい客だ。しかし夏だからお客秋刀魚ではなく、お客サマーと呼ぶ。そういう決まりだから。

「いらっしゃいませ。お客サマー。お好きなお席をどうぞ。」

 ピチピチピチピチ、ピチピチピチピチ

 お客サマーはただその場で、ピチピチしている。

「お客サマー、大丈夫ですかー?」

 ピチピチピチピチ、している。

 わかったぞ。この秋刀魚はお客サマーではなく秋刀魚なのだ。だからただ、ピチピチピチピチしているのだ。入って来る気がないのだ。偶然秋刀魚がいる時になんらかの謎現象でチリンチリン鳴ったのかもしれない。

「お客サマーはお客サマーではなく、ただの秋刀魚ですか?」

 ピチピチピチピチ

 ただその場でピチピチしている。ううむ、そうなのかな。でも何か違和感があるぞ。ううむ、ううむ。

 ふと壁にかかったカレンダーを見る。今日は、と、、9/1...。秋だ!!つまりこの秋刀魚はお客秋刀魚なのだ!!

「あ、お客秋刀魚。中へどうぞ。」

 ピッチ、ピッチ、ピッチ

 前に進み始めた!!やはりお客秋刀魚だったのだ!!

 ちょっとずつ、前に進む。飛び跳ねながら前進するお客秋刀魚。すごい、頑張れ、頑張れ。

「お客秋刀魚、がんばって下さい。がんばって下さい。」

 ピチピチ、ピッチ、ピッチ

 ちょっとずつ、前に進んでいく。

 ピッチ、ピッチ

「すごい、すごい!!」

 ピッチ、ピッチ

「すごい!!すごい!!頑張れ!!頑張れ!!」

 ピッチ、ピッチ......ピッ...

 ああ、乾きそうだ。水をあげなければ。

 ジャジャ、ジャー

 コップに水を汲み、お客秋刀魚にかける。

 ジャバー

 ピチピチピチピチ、ピチピチピチピチ 

 お客秋刀魚、復活。

 ピチピチピチピチ、ピチピチピチピチ

 ちょっとずつ前に進んでいく。

 ピチピチピチピチピチピチピチピチ............

 時が経った。蛍の光が流れ始める。

 ピチピチピチピチピチピチピチピチ

 お客秋刀魚は諦めず、前に進んでいる。しかし、まだ30センチくらいしか進んでいない。

 ピチピチピチピチ、ピチピチピチピチ...

「間も無く、閉店の時間になります~。」

 ピチピチピチピチ、ピチピチピチピチ

 .....。

 閉店時間を過ぎた。つまり、お客秋刀魚は秋刀魚へと変わったのだ。ということで、ペットの猫に食べさせた。高級な餌だ。美味しそうに食べていた。

 しかし、なぜあの秋刀魚は夏はお客サマーで秋はお客秋刀魚と呼ぶことを知っていたのだろう。うーむ、うーむ、うーむ。ピカリ!!それはきっと、すごい秋刀魚だったからなのだ。

 完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...