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第1章 追放

9夜

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「でも、わかる気もするんです。アルクがいなくなって、これからどんどん戦いが激化していく。そういった意味では、戦えない、足手まといの僕を、無理にでもこの国から追い出そうとしているのは……」

「むしろ心配してるってか?」

「それにしては殺そうとするなんてやり過ぎよ!」

 それは、そうなのだけど、

「どうせなら、良い方に考えたいじゃないですか」

「まったく、お前は相変わらずお人好しだな」

「そうね。デイモスにはギーの爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ」

「「はははっ」」

 ギーとカルヴノは苦笑した。
 この女性騎士は、やるといったら本気でやってしまいそうだからだ。

「そういえば、ペトラディさんはどうして僕を助けてくれたんだろう?」

「俺は急に呼ばれたんだが、ミロは知ってるか?」

「……そうね、もうアルク様も亡くなっているし、オフレコだから話すけど、ペトラディ様はアルク様のことがお好きだったのよ。でもアルク様には、この国の王女でもあるククナリ様がいらしたから」

 そういう事情があったのか……。

「俺も知らなかったぞ!?」

「あの方、本当に喋らないから、男性陣は気づいていないでしょうけど。だから、外見がアルク様によく似ているギーのことを放っておけなかったんでしょうね。魔王軍との戦いがなければ、自分でイーストポートまで護衛したかもしれないわよ」

「そんなに!?」

「ああ見えて、意外と情熱的な方なのよ」

 ミロがニコリと笑みを浮かべた。

 そうだったんだ……。

「ペトラディさん、ありがとうございました――」

 ギーは、彼女の去った方角に頭を下げた。
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