上 下
3 / 10

第2話

しおりを挟む
 にやけ顔が隠せない。
 すると室内に控えていた、竜騎士団とは別に一般の騎士団や兵を率いる将軍が、新国王に恭しく一礼した。

「上手く行ったようでございますな。配下を潜ませておいたかいがありました」

 広場にいた民衆の中から始まった拍手や声援は、全て将軍の忠実な部下たちの仕業だったのである。

「民衆も愚かよな。余は、竜騎士団に支払っている年間の予算が高いか低いか、実際の金額には一言も触れていないというのに、勝手に高いと思っておるのだからな!」

 ハァーッハッハッハと、新国王は高笑いを上げた。

「騎竜の餌は、広大な北の森に住むモンスターですからな」
「まったくだ。とはいえあの図体だ。場所を取ることは本当であろう?」
「まあ、城外ですからな。正直どちらでも」
「ハァーッハッハッハ! そうであったな。何にせよ、これであのトカゲどもを余の国から追い出すことが出来るというもの。貴様も目の上のたんこぶだった竜騎士団長を追い出せて、清々しているのだろう?」

 将軍もついにやけてしまう。
 この国では慣例的に、将軍と竜騎士団長は同格、あるいは竜騎士団長の方が上と見なされてしまうのである。
 将軍にはそれが不満だった。
 長い間コンプレックスだったのである。
 将軍は感謝の礼を捧げた。

「これまで以上に、余を支えてくれよ」
「はっ、お任せください。ところで一つだけお聞きしてもよろしいですかな?」
「うむ、なんだ」
「私が竜騎士団に対して思うところがあるのは自明の理ですが、どうして陛下までもが竜を憎むのでしょうか?」

「それはな――」
しおりを挟む

処理中です...