大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ

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10 年に一度の逢瀬

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「おはようございますお嬢様! 今日はとても良いお天気ですよ。朝食はお嬢様のお好きなマフィンを料理長が七種類も並べていましたので、楽しみにしておいて下さいね」

 メラニーの声はいつも以上に元気で動きも機敏だった。メリベルは眠い目を擦りながら着替えを済ませて部屋を出ると、階段の中央から母親の肖像画を見上げている父親を見つけた。

「おはようございますお父様。またお母様を眺めていたのね」

 メリベルが笑いながら隣に並ぶと、肩を抱き寄せられた。

「だってとびきり美人だろ? 今でもお母様は私の心を掴んで離してくれないんだよ」

 そう言って見つめる瞳はまさに恋をする目だった。

「……お父様は再婚は考えないの?」

 ぽつりと呟いた言葉に思いきり肩を掴まれ、正面を向かされた。

「もしかしてメリベルに何か言ってくる者がいたのか? もしそうなら我慢せずに必ず教えるんだぞ!」
「お、お父様少し落ち着いて。何もないから大丈夫よ。ただもうお母様が亡くなって七年も経つのだから、浮いた話くらいあるかと思っただけよ」
「冗談でもそんな事は言わないでくれ。ほら、お母様が悲しんんでいるよ」

 ちらりと見上げた母親の肖像画は美しく微笑んだまま。それでもメリベルは申し訳ない気持ちになり俯いた。

「お母様ごめんなさい」

 呟くと頭を撫でる温かい手を見上げた。

「学園に休みの連絡は済んでいるから、堂々とは言えないが楽しんんでおいで」


 メリベルは料理長の準備してくれたマフィンを全種類食べる事は出来なかったが、その代わりに可愛く包んで籠に入れてもらうと、昼過ぎに馬車で王都から少し離れた林道へと向かった。
 めっきり人の往来がなくなったそこには、もう一台の馬車が停まっている。特に家門が分かる物は入っていないが、メリベルにはよく見慣れた馬車だった。

「お待たせしてしまいましたか?」
「俺もさっき着いたばかりだ」

 停まっていた馬車に乗り込むと、そこに座っていたのはジャスパーだった。横に置いてあった本には栞が挟まっており、真ん中より少し過ぎている。メリベルは小さく笑うとジャスパーの向かいに座った。

「それではお嬢様、おかえりは日暮れ前で宜しいでしょうか?」
「ええまた後でね!」

 窓から声を掛けてくるメラニーに満面の笑みで頷いた。

 最近では制服姿が見慣れてしまっていた為、王子の格好の方が緊張してしまう。それにこうして近くでまじまじと見ると、剣術科だけあってしっかりとした体つきになっているように見えた。去年はもっと腕は細かった気がするし、胸板も制服の上からでは分からなかったが、今日は濃紺のスラックスに白のシャツ、黄緑色のベストとラフな格好なだけにより筋肉の線が分かってしまう。メリベルも今日は上品な薄紫色のワンピースにスカーフで長い髪を纏めたラフな格好だった。

「最近はどうだ? 何か変わった事はなかったか?」
「変わった事ですか? 特にこれと言ってはないです。そういえば来月には魔術科と剣術科の合同大会がありますよね。ソルナ学園に入ったらもっと勉強漬けの毎日になるかと思っていたんですけど、以外と緩いというか催しも多いみたいで嬉しいです」
「合同大会が楽しみなのか? 今生徒会はその準備も加わって大忙しだ。大会の運営は別にあるが、諸々の決定は生徒会を通すからからな」
「大忙しなんですね。でもとっても楽しみです」

(ジャスパー様の勇姿が見られるからとは口が裂けても言えないけどね)

 すると、ジャスパーはそうかと小さく笑った。それだけの事なのに涙がじんわりと出てきてしまう。ジャスパーが自分に笑顔を向けてくれたという事が驚きだった。

「ジャスパー様の笑顔、もっと見たいです」
「もう子供の時のようにはいかない。特にお前との婚約はまだ公表前だから」
「分かってます。ちょっと言ってみただけですから。今はお互いに学業を優先にしましょうね」
「学業と言えば園芸員になったと聞いたが、学業がおろそかにはなっていないか? もし大変なら俺から学園長に言って……」
「大丈夫です! 最初は嫌でしたが今は凄く楽しいんです」
「楽しい?」
「あ、えっと遊んでいる訳ではなくて、凄く勉強になるんです。二年生になったら薬学の授業を取ろうかと考えるようになったくらいなんですよ」
「……それはあの男の影響なのか?」
「男? 先生の事ですか? まあそうですね。あんな見た目なので生徒達には誤解されやすいですが、あれでも凄く優秀なんです」
「知っている」
「知っています? やっぱりジャスパー様は凄いですね。人を見抜く才能をお持ちなんです。その先生なんですが知識も能力も本当に高くて……」

 その瞬間、ジャスパーは馬車の中で立ち上がると横に座ってきた。お忍び用の馬車の内装は、家の馬車のように広くはない為肩先や腿が触れてしまう。しかしジャスパーはお構いなしにこちらを見てきた。

「今日は年に一度の大切な日なのに、他の男の話を熱心にするのは関心しないな」
「他の男って学園の先生ですよ」
「あの者は先生じゃないだろ。それにもっと厄介な男だ」
「ジャスパー様と先生はお知り合いなんですか?」

 その時、車輪が石を引いたのか馬車は大きく傾いてしまった。跳ねた拍子にジャスパーの上に乗っかった格好になってしまったメリベルは、一瞬何が置きたのか考えられなかった。
 手を着いた胸は固く熱い。耳に掛かる息にメリベルは飛び上がってしまった。

「ジャ、お、ジャスパー様! 申し訳ありません! 大丈夫ですか? お怪我はないですか?」
「お前の方こそ大丈夫か?」

 ジャスパーは片腕でメリベルを抱き寄せたまま、御者のいる小窓をコツンと叩いた。

「何があったんだ」
「落石があったのか、少し小石が多いように思います。悪路につき少々揺れますがご容赦下さい」
「分かった。馬が怪我をしないように安全に頼む」

 しかしジャスパーは抱き寄せた腕を一向に話す気はないようだった。

「あ、あの、ジャスパー様? そろそろお腕をお離し下さい」
「まだ揺れるだろうからこの方が安全だ」

 もう何がなんだか分からず頭が回らない。顔が熱い。ジャスパーが近い。

(あ、ジャスパー様相変わらず良い匂いがするわ)

 懐かしい、でも少し懐かし過ぎる香りにツキンと胸が痛んだ。

「メリベル? 大丈夫か? メリベル!」

 この状態のまま普通に話が出来る訳もなく、メリベルはもうそのまま目を瞑ってしまう事にした。

「全くお前は。そう言えば昔から自由だったな」

 声はどこまでも優しく、そして肩を抱く腕にほんの少しだけ力が込められた気がした。


「……ベル。メリベル、着いたぞ」

 馬車はいつの間にか停まっており、目的地へと到着していた。寝た振りをするつもりが本当に眠ってしまっていたらしい。
 そこは王都から離れた小さな村。その村を見下ろせるようにして森の中に小さな墓石は立っていた。

「お母様、今年も来ましたよ」

 メリベルは艶々とした白い墓石の前にしゃがみ、料理長に包んで貰ったマフィンを並べた。

「夫人の好物だな」
「はい。お母様は特に一番素朴で何も入っていないマフィンが大好きでした。貴族っぽくないと自分で笑っていました」
「では俺はこれを」

 そう言って墓石の前に備えた物は、度数の高い葡萄酒だった。

「お酒も好きでしたからね。ありがとうございますジャスパー様」

 柔らかい風が吹いていく。眼下には村の子供達が遊ぶ声が風乗って聞こえてくる。しばらくの沈黙の後、メリベルは立ち上がった。

「もういいのか? まだ居ても時間はあるぞ」
「もういいんです。ここにお母様はいませんから。今年もお付き合い下さりありがとうございました」

 ここに母親の遺骨はない。母親の出身地であるこの村を一望出来る場所にお参り出来る場所があったらと思い、メリベルとジャスパーが作った場所だった。本当の墓地は王都にあり、今頃はきっと侯爵家で追悼会が開かれている頃だろう。ジャスパーは何も言わずに墓石に頭を下げた。

 その瞬間、村の方から悲鳴が聞こえてきた。とっさに下を見ると、塀を壊して暴れている大きな黒々とした生き物が目に飛び込んできた。

「魔獣だ。こんな所にも出るのか!」

 ジャスパーは腰の剣を抜くと斜面を駆け下りて行った。
 村の中は混乱に満ちていた。元は家畜の牛なのかもしれない。しかし今はもうすでに体中がどす黒くなり、魔素に侵されているのだと分かる。こうなってしまえばもう救えない。ジャスパーがひと思いに首を切ろうとした時だった。一人の村人がジャスパーの前に立ちはだかった。初老の男は魔素に侵された牛を見て叫んだ。

「あれは家の財産なんだ! 殺さないでくれ、なんとか助けてくれ!」
「魔獣になればもう手遅れだ。そこをどけ!」
「駄目だ! そうだ、魔術師様を呼んでくれ! あんた達馬車で来たんだろ? それまで俺がなんとか押さえておくから頼むよ!」

 しかし足はガクガクと震え、怯えきっている。その時、魔獣となった牛は咆哮を上げた。その瞬間獣舎らしき場所から黒い物が飛び出してきた。

「ジャスパー様魔素です! しかも大量に!」
「お前に魔素を任せていいか? 俺は魔獣を斬る」

 メリベルとジャスパーは別々の方向へ走り出した。
 メリベルは左手を上げると魔術を発動する呪文を詠唱した。

『叡智の探求者、安息の地、死者と繋がる冥界の主よ、セレマの意志の元、黒き遣いを送り返さん』

 左掌がかざされると魔素の動きがぴたりと止まる。そして一気に後ろに引かれるように獣舎へと戻り、消えた。メリベルは右手で切るように掴むと、一体に漂っていた魔素の気配は一切消え去っていた。
 少し離れて悲鳴が上がる。ジャスパーは魔獣と化した牛の頭を落とした所だった。急いで獣舎の中に入って行くと、奥で縮こまっている牛や豚達が目に飛び込んできた。おそらくあの一頭は運悪く魔素に触れてしまったのだろう。でもここにいる他の牛達や人にまで被害が及ばなくて良かったと思うしかなかった。
 ジャスパーは牛の寝床の一点を見つめて止まってた。

「ジャスパー様? どうされました?」

 そのまま柵の中に入って行くと、藁の中から何かをポケットに押し込んだ。

「何でもない。さぁもう行こう」


 獣舎を出ると、そこには村長らしき老人を囲むようにして村人が立っていた。

「あんた達は魔術師かい? 助けてもらった事には礼を言おう。でも本当に殺す必要があったのかを問わせてくれ」
「なッ! どこからどう見てもあれはもう魔素に侵されて魔獣になっていたわ! あなた達も見たでしょう!?」

 しかし村人達は視線を逸らすだけだった。

「殺した家畜を弁償して欲しい。我々には財産そのものなんだ。勝手に殺されたらかなわん」

 耳を疑う言葉に、メイベルは呆気に取られた。

「分かった。これで足りるか?」

 ジャスパーは何も反論する事なく、牛一頭にしては明らかに多いであろう銀貨二枚を渡した。おそらく良い牛二頭は買える程の価値だ。しかし村長は何も言わずにそれを受け取ると、一枚を牛が殺された男に渡した。

「もし今度も魔素や魔獣が出るようなら、魔術連合に相談した方がいい。支部ならこの先の町にもあるだろう」

 魔術連合は魔術を生業とする者達が所属する連合で、舞い込んだ依頼を適任、もしくは近くにいる魔術師に流すというものだった。組織化する事で、どこの地域にどれだけの魔素や魔獣が現れるかが視覚化され、依頼した魔術師によって莫大な代金を請求されたり、反対に依頼人から料金を踏み倒されたりという問題が解消されるのだった。

 村長はなおも顔を背け、なんとも端切れの悪い返事をするだけだった。

「帰りに町を通るから俺の方からも連合に掛け合っておこう」
「それは結構だ! 自分達でなんとかするから、よそ者の手助けはいらん」
「それじゃあメリベル、もう行こうか」
「え? えぇ」ジャスパーに促されるまま馬車に乗る。離れていく間中、村人達はその場を動かなかった。

 外は日が暮れ始め、馬車はとうとうメラニーが待つ場所に辿り着いた。しかし馬車は停まる事なく走り続ける。窓の外ではメラニーが驚いた表情をして、待機していた馬車に急ぎ乗り込んでいた。

「ジャスパー様? どちらに行くんです?」
「このまま屋敷まで送る。久しぶりにアークトゥラス侯爵にもお会いしたいしな」
「お父様にですか? でも誰かに見られでもしたらまずいのでは」
「この馬車なら平気だ」

 ジャスパーは窓の外を見たまま何か考え事をしているようで、メリベルは声を掛ける事が出来なかった。


「これはこれはジャスパー殿下。わざわざ娘をお送り下さったのですか? はて、我が家の馬車がどこですかな?」

 追悼会が終わり、まだ着替えの済んでいないアークトゥラス侯爵はわざとらしい笑みを浮かべてジャスパーを出迎えた。遅れて到着したメラニーは物凄い形相でメリベルの側に立った。もちろんいち侍女が王子に物申す訳ではない。それでも無言の視線が訴えていた。

「これはどういう事でしょうか、ジャスパー殿下。なぜわざわざ我が家の馬車を使わずに自らメリベルを送って下さったのでしょうか」
「人払いをして頂きたい」

 アークトゥラス侯爵は一瞬眉を動かしたが、周囲にいた使用人と護衛騎士達に向かって手を上げた。

「これで宜しいですか?」
「まだだ」

 その時、ジャスパーの視線がメラニーに向いた。メリベルはとっさにメラニーの腕にしがみついた。

「メラニーも向こうへ行っていなさい」
「お父様!」

 しかし有無を言わせない視線に、渋々メラニーの腕を離した。

「お嬢様、それでは私はお風呂のご準備をして参りますね」

 先程までの感情を上手く隠したメラニーが離れていくのを見てから、ジャスパーは更に声を潜めて言った。

「今日夫人の故郷の村に魔素と魔獣が発生しました」
「なんだって? 大丈夫だったのかメリベル!」
「この通りなんとも無いわ。ジャスパー様と共に退治しましたから」
「メリベルの能力があれば十分に戦えますが、戦闘に巻き込んでしまった事は深く反省しています」
「いや、無事だったのであれば私からは何も言う事はありません。実際どこに魔素や魔獣が発生するかは誰にも分からないのですから。でもミーシャが生まれた村というのは少々驚きましたな」
「無事でしたが、一応メリベルを医者に見せて下さい。念の為にお願いします」
「ジャスパー様! 私はこの通り元気ですからお医者様など必要ありません」
「俺が心配なんだ。頼む、メリベル」

 そこまで言われれば頷くしか出来ない。するとジャスパーは安堵したように頬を緩めた。

「少し部屋で休んで来なさい。私は殿下ともう少し話をしていくよ」
「分かりました。それじゃあジャスパー様、今日はありがとうございました。また学園で」
「ああ、学園で」


「思っていたよりも良好な関係で安心しましたよ。メリベルの話では学園ではほとんど話すらしないと聞いていましたから」

 若干気まずそうにしながら、ジャスパーはポケットからある物を取り出した。藁と一緒に出てきたのは、指輪だった。

「指輪ですか。これが何か……」
「村で拾ったものです。おそらくここから魔素が溢れ出したと考えています」

 ジャスパーが出した指輪には黒い石が付いており、その石は真ん中から真っ二つに割れている。そっと触れると石は簡単にぽろりと外れた。

「人の魔廻の構造に似せて造られた偽核とも言われるものです。俺も試作品を見ただけで、こうして製品になっているのは初めて見ますが、どうやら完成されているようです」
「話には聞いた事がありますが私も初めて見ました。どうしてこれがミーシャの村に……」

 ジャスパーは指輪を再びポケットに戻すと、二階の方を見上げた。

「おそらく誰かが置いたのかもしれません。この日に村に行く事を知っている者からすれば恒例行事ですから」

 その時、アークトゥラス侯爵の顔つきが険しくなった。

「我が家にスパイがいるとでも仰っているように聞こえますな」
「そうではないが確証がない以上、皆を疑ってかかった方がいいかと。メリベルの為にも」
「ごく近しい者の中にメリベルを害そうとする物などおりません」
「メリベルの為です侯爵。くれぐれも気を付けて下さい」

 ジャスパーは頭を下げた。さすがにアークトゥラス侯爵も王子に頭を下げられては、誰もいないとはいえ体裁が悪い。すぐに返事をするとジャスパーの頭を戻させた。

「もちろんかけがえのない娘の為ですから、殿下に頼まれずとも気を付けますよ。ですが本当にこの屋敷は厳選した者達しか側に置いてはおりません。それに、もし近くにいるのだとしたら今は下手に動かない方がいいでしょう。気付かれたとなれば何をするか分かりません」
「それには俺も同感です。学園ではメリベルのそばにイーライ殿がいるようです。あれは食えない男ですが、信用には値しますから」
「その割にはご納得いっていないようですね」
「……最初は目的が分からず、側にいないように忠告しました。でも今日の事件を考えれば、あれは何か予知していたのかもしれません」
「クレアボヤンスの能力者ですからな。あらゆる現在過去未来を見通す力とは、きっと常人には耐えられないでしょうな。あの御方には幾つもの名が有り過ぎてなんとお呼びすればいいのか困ってしまいますが、イーライ殿がお側に居て下さるのなら学園内はまず安心と思って構わないでしょう」
「学園内では俺は表立って側にいる事が出来ませんから、あれが適任でしょう」

 ちらりと見られたアークトゥラス侯爵は、その視線には気付かぬ振りをして王子を見送った。
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