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日常
しおりを挟む冬の寒さというものは、いつも急にやってくる。そんな事を地下鉄の出口から出てきてから思う。
いつも寄る自販機で、ガコン、とお決まりの音をたてて取り出し口に落ちてきたホットの缶コーヒーを手に取り、カイロ代わりにと両手に持って手を温める。ずっと持っていると熱いので交互に持ち変える。そして頃合になったところでようやくコーヒーを口にする。ほうっ、と吐く息はいつもよりも白い。
僕の隣を歩いている友人の宮沢輝明がくしゃみをして大きく身震いをした。
「さっむ。まだ11月の始めやのによお。手袋とマフラーしてこれば良かったわ」
うんうん、と頷いて僕は同意した。少し強い風が吹いて前を歩く女子生徒のスカートが揺れる。
「……寒くないのかな」
「なにが?」
僕はさっきの女子生徒を目配せした。
「女子のスカートだよ。こんなに寒いのにあんなに素足晒してさ」
「あーあれ。ほんまやな。あれ絶対寒いでなあ。あ、パンツ見えそうや」
「見なくていいだろ、変態」
「はいはい。お前はむっつりやもんな。浩太郎」
むっつりだって? それは心外だ。僕は講義する。
「僕はどちらかと言うとがっつりだ」
輝明は「なんやねんそれ」と声を上げて笑った。……僕もそう思う。
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