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魔法だと!?
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林道
俺達は林の中の道を進んで行く。総重量約20kgの装備を持ち、何度か山を越え、川を渡って行く。多少、疲れが出てきたがレンジャー訓練の時は60kgを背負っていた。あの時に比べればこんなのは楽勝だ。
山を越え稜線に出ると、小さな村のような物が見える。人もいるのがここから確認できる。
俺は一応、キラに念を押す。
「いいか、このマニュアルには人が存在していた場合の対応が書いてない。相手からどう思われるか分からない。だができるだけ友好的に対応するんだぞ。下手な発砲は絶対にするなよ」
「ロシア人ダカラッテ、ソンナコトハシナイ、大丈夫」
俺達は村に警戒しながら近づいて行く。村がよく見えてくると、俺達は目を疑った。
100万年後の世界の文明とは思えない様子だった。まるでヨーロッパの中世の感じのような家や村人がいる。
村人は迷彩服を着た俺達を怪しげに見ていたが、俺達に対して、意外にも興味はなさそうだ。とりあえずそのまま村の中に進んで行く。
俺はこの状況で、キラはどんな事を考えているか聞きたくなった。
「俺達は100万年後の世界に行ったんだよな?」
「ウン。デモ、ドウ見テモ未来ノ世界ニ見エナイ......」
「発展途上国に着地したとか?」
「ソンナ国ニハ見エナイ」
「とりあえず、誰かに話してみよう」
偶然、すれ違った人に話しかけたがお互いの言語をまったく理解することができず。相手は諦めてどこかに行ってしまった。
俺達は道行く人達に、英語、ロシア語、日本語を使ってみるが1人もコミニュケーションを取ることができなかった。
だが1人の農民のおじちゃんだけは違った。彼は最初分からない素振りを見せていたが、何かをひらめいたようで突然歩き出した。おじちゃんは手招きをしていたので、俺達は後を追った。
すると何だか中央の広場に人が集まっている。おじちゃんについて行くと人溜まりの中に、黒くて大きい帽子をかぶった魔女のコスプレをしている女がいた。
おじちゃんは魔女コスプレイヤーと一緒に何かを話している。どうやら魔女コスプレヤーは状況を理解したらしく、地面に杖を使って魔法陣のようなものを描いていく。
魔女コスプレイヤーはこの魔法陣が完成すると中に入れと、指を指している。俺達は状況がいまいちよく分からなかったが、とりあえず中に入った。魔女コスプレイヤーが呪文を唱え始める。
「シュアルメソタマンチマエガウリョ」
すると魔法陣が激しく光り出した。俺は突然の出来事に驚いてしまった。
「うおおーー!なんだ?なんだ?」
魔女コスプレイヤーが近づいて話しかけてくる。
「これで終わりです。どうですか理解出来ますか?」
さっきまで理解不能な言語を喋っていた彼らが日本語を話している。
俺は状況が掴めず一瞬混乱した。
「えっ!?えっ!?」
キラも驚いている。
「一体、何が起きた!?」
俺達はちょっとしたパニックになっていた。
すると魔女のコスプレイヤーが笑いながら、話しかけてくる。
「大丈夫ですか?今までこんなに驚かれる人は初めてです」
「なぜ、日本語を話せるんだ?」
俺は周りをキョロキョロしながら言った。魔女コスプレイヤーの冷静なトーンで少しずつ落ち着いてきた。
「日本語?聞いた事ない言語ですね。私は簡単な言語統一化魔法を使っただけです」
「魔法?そんなものがある訳がないだろ。何かの冗談か?」
「えっ!?魔法を知らないんですか?」
それを聞いた魔女コスプレイヤーと村人達は驚いていた。
キラが肘で俺に突いて、小声で話しかけてくる。
「今は臨機応変に対応して、その後この人からこの世界の情報を得るのが優先」
キラの日本語が急激に上達している。まるで別人のようだ。すごいクールなキャラに変化してる。
魔女コスプレイヤーは首を傾げて、言った。
「何かお困りですか?」
「いや実は、遥か遠くから来た者なのでここら辺の地域を知らないのですが教えてくれないか?」
「なるほど。あっ、もしかしてあなた達は冒険者ですか?」
どうやら魔女のコスプレイヤーは俺達のマントを見て、何か勘違いしているようだ。
「いや、ちが.....」
キラが肘を入れ込む。
「うっ、はっ、はい、そうです。冒険者です。ですからこの世界のことを......」
魔女のコスプレイヤーは身を目を輝かせながら、突然大きい声で話しかけてきた。
「でっ、でしたらあなた方のパーティーに入れさせてくれませんか!」
「じゃあ早速、どうしてあなたは魔法が......へっ?今なんて?」
「いや、ですから仲間にいれさせてください」
「はい!?」
俺は予想外な返事に驚いてしまった。
だが冷静に考え直した。もし魔法が使える世界なら、この魔女コスプレイヤーを協力者として作るのは今後の展開を有利に運べるはずだ。
俺はキラに小声で話しかける。
「いやこれはこれで、この世界の事をを調べられるかもしれないぞ」
「確かにあのコスプレイヤーを仲間に入れるなら、奴隷のようにこき使える」
キラの喋り方が変わったせいなのか、前より少し頼もしく感じる。
「奴隷のようには使わないが、大体そういう事だ」
俺は立ち上がり、魔女コスプレイヤーに向いて話しかける。
「よし、相談した結果お前を仲間に入れてやることにした」
「本当ですか!?ありがとうございます」
「で、それからどうすればいい?」
「とりあえず、あそこのお店でお話ししましょう」
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村の酒場
あの魔女のコスプレイヤーは俺達を近くにある活気の酒場に連れていってくれた。やはり店の中も中世のヨーロッパのような雰囲気がある。
席について飲み物を頼んだ後、俺は早速、魔女のコスプレイヤーについてまず調べようと思った。
「そう言えば君の名前は?」
「私はルルと言います。えっとあなた方は?」
「俺は新海だ。で、隣の連れはキラ」
「変わった名前ですね。どこから来たんですか?」
「俺は日本という......」
いやこれは話をややこしくするだけだろうから、今は伏せておこう。
「君が知らない遠くの国からやって来た。えっと、君は魔法使いなんだな」
「はい、そうです。攻撃魔法はあまりうまく使えませんが支援魔法には自信があります」
キラがルルに話かけ始めた。
「なぜ私達の仲間に入りたいなんて言った?」
「実は前に所属していた別のパーティーに入っていたんですが、攻撃魔法があんまりにも出来なくて、新しい魔術師が来て、入れ違いでクビにされたワケです。支援魔法は支援なんで私1人じゃほとんど何もできません。それで困ってたんです。でも偶然ここの村人達の相談事を聞いていたらあなた達がやって来たんです」
それからキラはルルの服装に気になったようで、指を指しながら言った。
「なぜ貴女だけコスプレしてる?」
ルルは首を傾げている。コスプレという単語なんか知ってるわけがない。俺はキラに代わって、改めてルルに質問する。
「君だけどうしてその格好なんだ?」
「えっ?これは普通に、魔法ができる者には装着が義務?というか伝統みたいなもんです。一目で魔術師かどうか分かるようになってるんです」
それから俺とキラはルルに質問をし続けた。すると大体この世界のことがわかった。
どうやらここはタンタル共和国の中で他にも国が隣接しており、世界各国の言語は魔法によって事実上統一されている。そのため信じられない事に、国家間の間での戦争は無くなり、話し合いで解決しているという。
それともう一つ信じられない話を聞いた。このタンタル国の東の奥の方には国境があり向こう側に別の国がある。なんとそこの国には魔王が住んでおり世界の半分征服しているそうだ。現在、拡大した領土を統治するために長い間、休戦状態だと言う。
頼んできた飲み物を飲んでると、お金を一切持っていないことに気付いた。
「すまん、ルル。俺達はここに来てからお金を持ってないんだ」
「大丈夫ですよ。今回は私のおごりというです」
「あと、ルルは何の仕事をしてるんだ?」
「だから私も冒険者ですよ。ギルドに行って依頼を受けるんですよ」
「さっきもギルドとか言っていたな。一体なんだ?」
キラが驚いた顔で見てくる。
「ギルドのことを知らない?日本のアニメで何回も出て来てた」
「お前はずっとアニメばっか見てたからな」
ルルにはアニメという単語が理解できていない様子だ。。
「何の話か分かりませんが、とりあえずギルドに明日、行きましょう」
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村の宿屋
俺達は村の宿屋で泊まることにした。3人とも同じ狭いベットの上で一緒に寝ている。寝返りはできなくあまり快適ではなかったが、ベット上だからだろうか、家に帰ってきた感じがする。
「やっぱりアメリカよりロシア......」
「エクス......プロ...ション......」
「こいつら一体、何の夢見てんだ?」
人類の存続の為に遥々過去からやって来たのに、文明レベルは低くなっていたものの、100万年後の世界ではビンビンに人々が生きていた。結局、あの"地球の種"作戦は無意味だったのだろうか?
すべての任務から解放された俺はこれからどうすればいいのか分からなかった。
応援ありがとうございます!
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