淫獣の育て方 〜皇帝陛下は人目を憚らない〜

一 千之助

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 皇帝陛下は逃さない

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《ギャウウゥゥゥン! キャンンっ!》

「おら、もっと腰振れや。なあ?」

 大きな獣に己の一物を突き立て、獰猛に眼を眇める男。がしっと足の付け根を掴み、彼は泣き叫ぶ狼のような生き物の後孔を犯していた。
 ずりゅっ、ぬちゅっと激しく出入りする猛りが狭い蕾を満開に拡げ、白く泡立つ結合部からとろみのある液体が糸を引く。
 たっぷり使われたらしいローションが床にしたたり、凶暴な一物の動きを妨げない。
 無惨にまくり上がった孔の縁。先端ギリギリまで抜き出しては一気に根本まで穿つ太い凶器に、その生き物は断末魔のような叫びをあげる。
 大きな紅い眼をかがる涙。ほたほた零れる雫が、その生き物が受ける蹂躙の苦しさを物語っていた。
 
「いくぞ? ……ほら、う……っ、くぁ……っっ!」

 熱い吐息を荒らげ、ごちゅごちゅ最奥を突き上げていた男性は、一際大きくグラインドすると、渾身の力で己の腰を獣の臀部に打ち据えた。
 それと同時に大きく膨らみ爆発する御立派様。びゅるっと身体の奥に流し込まれる精を感じて、その大きな生き物は声のない絶叫をあげる。
 精根尽き果てて崩折れた生き物を優しく抱きしめ、男はダラリと口から垂れ下がった長い舌に口づけた。

「起きろ。ふ……、相変わらず可愛いな」

 男の腕の中で大きな獣は姿を変える。

 滑らかな銀髪の青年へと。

 涙に烟る紅い瞳。

 微かに痙攣する手脚を突っ張り、その青年は全力で男の腕から逃げようと暴れた。

「おま……っ、えっ! 頭おかしいんじゃないのかぁぁーーーっ!!」

「ああ、可怪しいとも。お前を逃さないためなら、いくらでも可怪しくなってやるさっ!!」

 憤怒に彩られた男性の眼光に射竦められ、身体が強張り身動きも出来ない銀髪の青年。

 細く手弱かな手脚で筋肉隆々なこの男にかなうわけもなく、青年は再び組み敷かれる。

 こんな暮らしをどれほど過ごしただろう。

 獣の姿よりも小さく細い青年は、容赦なく捩じ込まれる男性の一物に悲鳴をあげた。

「う……っ、ぁぁあああーっ!!」

「悦ぃ~い声だぁ…… ようく慣らしてやるからな? あ? 俺から逃げようなんざ、無駄なんだよっ!」

 身体を裂かれる激痛に頭を打ち振るい、青年の涙の飛沫が宙を舞う。それを満足気に見つめ、男性はこれからの長い夜に舌なめずりした。
 
「俺から逃げるために呪いをかけさせるとか…… 獣姿になったくらいで諦めるはずなかろうがっ! むしろ、獣姿のお前に奉仕させる愉しみが増えたってもんだ。ん? 明日も明後日も、ずうっと可愛がり倒してやるよっ!!」

 ケダモノのような男性の双眸。

 黒髪黒眼の彼は、この国の皇帝陛下。名前をアンドリューという。
 ある夜会で目にした青年に一目惚れし、彼は後宮にあがるよう命令した。
 この国の婚姻事情は性別をいとわない。同性婚も許されている。ただし、跡取りが必要な立場の者は別。どの家でも嫡男の正妻は女性という不文律が存在した。
 勿論、この皇帝陛下にもだ。
 それが何を血迷ったのか、アンドリューが選んだのは銀髪の青年。名前をオルフェウスという。
 当年取って二十歳になるオルフェウスは、突然、皇帝に指名されて狼狽えた。オルフェウス自身も侯爵家の嫡男だからだ。
 婚約者もいるし、侯爵家の男子はオルフェウスだけ。正妻であろうと皇帝に取られるわけにはいかず、激昂した父侯爵は、魔女に頼み込んでオルフェウスに呪いをかけさせた。
 
 大きな狼になる呪いを。

 四足歩行の獣となってしまったオルフェウス。父侯爵は息子が後宮を厭うて出奔したと嘯き、オルフェウスを私有地の森に隠す。
 万一見つかっても、この獣がオルフェウスとは思うまいと高をくくっていた侯爵。
 そのうち皇帝も諦めて、別の伴侶を探すだろう。その婚儀が終わってからオルフェウスを呼び戻し、婚約者と娶せるつもりだった侯爵だが、彼はアンドリューを甘く見すぎていた。

 なんとアンドリューはオルフェウスを見つけ出したうえ、それを後宮に連れ帰り繋いでしまったのである。

 慌てた侯爵が謁見を申し込んだが返事はない。

 獣化した息子を息子とも言えず、侯爵は打つ手がなかった。これを暴露しようものなら、オルフェウスが呪われていることを公表するも同然。
 見栄と矜持で生きる貴族には致命傷。自発的にかけたものとはいえ、呪いはオルフェウスの瑕疵となり、後々まで嗤い者にされる。婚約も破棄され、嫁の来てもなくなるだろう。

 醜聞が広がるのを恐れ、息子を返せと口には出せない侯爵。

 結果、オルフェウスは皇帝の捕まえた獲物として、後宮奥深くに監禁されている。毎夜のように蹂躙され、息も絶え絶えで。



「……魔女に聞いたのさ。呪いは、それを上回る魔力で解けるとな。たっぷり注いでやるよ、俺の魔力を」

 ぬちぬちと出入りする灼熱の猛り。それと繋がっている限り、オルフェウスは獣に戻れない。
 しかし、戻ったところで同じだった。このケダモノは、狼の姿なオルフェウスにだって欲情出来るのだから。

 気が狂ってる……っ! なんで、犬畜生を犯せるんだよっ!! 気持ち悪くないのかっ!!

 呪いの効果で、オルフェウスは獣化を繰り返す度に身体の損傷が癒やされた。治癒の加護もかけられているのだ。そうしないといけないくらい、人間が獣化するのは危険なこと。
 その治癒が仇となり、彼は毎回初めての情交を味わう羽目に陥る。何度貫かれても獣化した途端癒やされてしまうため、身体が慣れてくれないのだ。

 毎夜、激痛に泣き叫ぶオルフェウス。

 それにほくそ笑み、アンドリューはこれでもかと可愛い獲物を嬲った。

 延々貫かれ、悶絶し、ようやく慣れてきて青年が愉悦を拾うようになった頃……… 朝が訪れ、長い夜が終わる。

「……今日は二回か。まだ中でイけないな。早く呪いが解けると良いなあ? ん?」

 捩じ込んだままオルフェウスの物を扱き、アンドリューはニタリと不均等に口角を歪めた。
 赤く熟れた青年の一物は二度の吐精で精一杯。吐き出した白濁液が絡み、ぬちゅぬちゅ立つ淫らな水音。それを恍惚とした面持ちで眺め、ようやく皇帝がオルフェウスの中から己を引き出した。
 ぬぷっと出てきた巨大な猛り。それが離れた途端、青年の身体が獣化する。
 瀕死で横たわる大きな狼。この姿であれば、他の誰かに穢されることもないと、アンドリューは降って湧いた幸運に感謝した。

「午後まで休んでおれ。また念入りに調教するから、ようく休めよ?」

 その言葉に怯え、オルフェウスは尻尾を脚に挟んで丸まった。ぷるぷる震える真っ赤な瞳。それをべろりと舐めて、皇帝は部屋から出ていった。
 しばしの安息に脱力する狼。
 疲れも手伝ったのだろう。すぐにウトウトと微睡んだ彼は、睡魔に身を委ねた。

 アンドリューをこれでもかと体内に刻みつけられ、疲労困憊な狼。手脚を長い鎖でベッドの四隅に繋がれたまま、オルフェウスは泥のように眠る。
 
 しばらくして現れる、獰猛な御主人様の調教に耐えるために。

 狼はひと時の休息を微睡んだ。
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