よくわからない遊び

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢

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理解不能な三択

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 夜をイメージさせるような、暖色の色味に満たされる部屋の中。
 生活観のあるものは一切なく。
 空間の中央には、ただただ、三つの箱が並列に置かれていた。
 大きさそれぞれ、人が体育座りですっぽり入る程度のサイズだ。
 そして、俺の手のひらには片手ですっぽり収まるほどの小人がおり。
 俺はすぐ横にいる人物へわたすと、

「それじゃあ、頼む」

 その者に、準備が終わったことを伝えてから。
 俺は部屋のドアを開け、外へ出たのだった。

 + + + + + +

 部屋を移った俺は、先ほどの部屋を、モニター越しに見ながら、椅子に腰をおろす。
 画面の向こうには、箱が三つ置かれているだけの状態になっていた。
 先ほど小人を手渡した人はいなくなっており、小人もいなくなっている。
 さきほどの人物へ、小人を適当な箱に入れて部屋から退出るように指示したからだ。

 ちなみに、どの箱にいるのかは、俺にはわからないようになっている。
 理由は単純。わかっていては、この後の展開を俺が純粋に楽しめないからだ。
 そして、俺はすべての準備が整ったことを理解すると、

「はじめてくれ」

 次の指示を、マイクを通してスピーカーの向こう側にいる人物へ出す。
 それからしばらくして。

 ガチャ……。

 部屋のドアが空き、その中へ一人の女性が入ってきた。
 すらっとしたスタイル。長くさらりとしたシックな明るめの髪。
 目鼻立ちのすっとした、綺麗系の女性だ。
 名前は、高柳たかやなぎ 麗奈れいな
 報酬を払い、今日一日だけきてもらうことになっている女性であり。
 人選などは、別の人物に頼んでいるため、性格などはわからず。
 俺があらかじめ知っている情報は、名前だけといった感じだ。

 麗奈はモニターの向こうで、三つの箱を前に少しだけ考えてから、彼女は入り口から見て一番左側の箱の上に座った。
 ちなみに、麗奈が座ったお尻の位置にはちょうど、人差し指がすっぽり入りそうなほどの穴があり、その役割はというと、

「なるほど。この中に、おならをしたらいいのね……」

 麗奈はそう言うと、箱の穴にたいして、尻の位置を調整する。
 そして――、彼女はおもむろに「んっ……!」と、腹に力を入れると、

 ぷうううぅぅ~~――ふううぅぅ……っ!!

 と、麗奈の尻から、高音が響いた。
 どう聞いてもそれは、放屁音以外の何ものでもなく――。
 彼女はいまのでガスを出し切ったのか、すっきりした様子で一息つくと、

「これに、何の意味があるんだろう……。まあ、人の趣味にとやかくいうつもりはないけど……」

 やっぱり、恥ずかしいなぁ、と彼女はこぼしながら、木箱から立ち上がると、部屋から出て行った。

 それから、しばらくして。
 先ほどの麗奈と同じように、また別の女性が部屋へ入ってくる。

 またも、綺麗な女性だった。
 癖のある、赤茶系のセミロングの髪に、小柄でありつつ整ったスタイルをした感じだ。
 名前は、下田しもだ なぎさというらしく。
 彼女は少しつんとした感じの視線を、三つの箱へとすべらせていくと、

「ふぅん。この穴から、ガスをいれたらいいのね。けど、どうして、三つの箱から一つを選ばなければいけないのかしら……。まあ、いいか」

 渚はそう言って、中央の箱に、腰を下ろした。
 それから、彼女は、ぼーっと、した様子で正面に目をやり、

「うーん……。でるかしら……」

 どうやら、ガスのたまり具合はあんまりのようで。
 彼女はそのまま、しばらく座り続けたあと――。

 唐突に「あっ」と声をもらした。

「きた……、かも。けど、微妙かなぁ……」

 渚は首を傾げながら、腹に力をこめる。
 すると、

 むぶううぅぅ……! ぶううぅぅううううぅぅっ……!!

 思いのほか大きな、低音が部屋に響いた。
 その音に、彼女は驚いたようにびくっと体を震わせると、

「ちょっ……! これは、さすがに……っ!」

 じんわりと頬を染め、あせったように言う渚。
 それから彼女は、急いで立ち上がると、小走りで部屋を出て行ったのだった。

 それから――さらにしばらくして。
 また、別の女性が部屋に入ってくる。

 今度は、ショートヘアーの可愛らしい感じ女性だった。
 少し小柄で、引き締まった感じのスタイルではないが、緩んでいるわけでもなく。
 バランスがいいというか、それはそれで、整っているといってもいいだろう。
 名前は、清田せいた 真由美まゆみ
 彼女はゆったりとした足取りで、三つのはこの前まで来ると、

「えっと……。これで、いっか……」

 真由美はそういって、一番左側の箱に座った。
 そこは、最初にこの部屋に来た女性――麗奈が座った場所と同じ場所であり。
 真由美も先ほどこの部屋に来た渚と同様、腹の具合を確かめるようにぼんやりと宙を見続けた。

「あれぇ……。さっきまで、出そうだったんだけどなぁ……」

 うーん、とうなる真由美。
 彼女は目を閉じ、自分の中の感覚を探ると。
 ふいに、目を開け、

「……ああ、だめだ。引っ込んじゃった」

 真由美はがっかりした様子で肩を落として言う。
 だが、「ん?」と彼女はすぐに表情を明るくすると、

「きた……。きたきた……」

 彼女はつぶやくように言うと、「ふぅんっ……」といきんだ。
 すると、

 ふ――すううぅぅ――しゅううううぅぅ~~……っ!

 真由美の尻から音圧が強めな、いかにもキツそうな。
 ねっとりとした感じの音もれ、

「ありゃ。すかしちゃった……」

 彼女はそう言うと、のんびりとした様子で立ち上がり。
 やはり恥ずかしかったのか、ほんのりと頬を赤くして、部屋の外へ出て行った。

 そして、本日の遊戯はその三名ぶんで――以上となり。
 俺はそれを見届けると、椅子からおり、箱のある部屋へと向かい――。

 + + + + + +

 さて、姿の見えない小人についてだが。
 俺の指示通りであるなら、三つの箱の、どこかに入っているはずだ。

 そして、小人がどこに入っているのか。
 それを想像した瞬間、俺の心は動くのである。

 今頃、女性の放った屁の中に包まれているころだろうか。
 あるいは、まぬがれているだろうか。
 どちらに転んでも、俺にとっては愉快なことだった。

 箱のある部屋に入った俺は、三つの箱へと、視線を滑らせる。

 小人が、右側の箱に入っているのであれば、大当たり。
 真ん中が、はずれ。
 左が、大はずれ。といった感じ、だろう。

 まあ、女性たちの屁の臭気が、それぞれどのようなものだったのかなんていうのは知らないので、一概にはいえないが。
 印象としては、そんな感じで。

 俺はその中から、右側の箱を選ぶと。
 その箱の前まで向かい、ゆっくりと、その蓋をあけたのだった――。
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