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09 パンドラの花のにおいは、開けてみるまでわからない
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そして――数が“百”を越えた頃。
「…………」
少年は声を発さなくなっていた。
意識はあるが、気力がないのである。
普通に臭いだけのオナラでも、何度も嗅げば、流石にきつく、そのうえ、数回に一度、“地雷”があるのだがら、その精神的ダメージは半端ではなく、少年の心は、すっかり折れていた。
そして、少年を追い詰めたのは、臭いだけではない。
少年は感情の消えた目で、列を“ぐるりと見回す”。
少し前まで小道にいたのだが、催しごとのような何かは、場所を広場に変えて再開されようとしていており、そこで少年は――ようやく気づいたのだ。
そのうち終わると思っていた、苦行のような時間が――まだ始まったばかりだということに。
円状に広がるその空間には、数百人ほどの人が集まっているのだが、そのほとんどが渦のような列を作り、少年にオナラの臭いを嗅がせるために集まっていた。
全員ではないのは、一度少年に臭いを嗅がせたらしき人達は、建物の窓、もしくは屋根などの高所から、遠巻きに薫を見ているだけで、列からはずれているからだ。
一人一回などのルールでもあるのか、それだけが、少年にとって唯一の救いであった。
「じゃあ、そろそろいいかな?」
少年の前にいる女性が言うと、その女性の友達らしき女の人が、焼き芋のようなものを片手に返事をする。
「うん、いいんじゃないかな。皆も待ちきれないだろうし」
そう言って、その人は「はむっ」と手に持ったものををほおばった。
ちなみに、待ち時間を見越してか、食事をしながら列に並んでいる人たちが結構おり、中でも、パンなどを片手に談笑してる人が多いようだ。
そのことに少年が気を取られていると、唐突に――鼻を手のひらに包まれる。
「……?」
何が起こったのわからずにいる少年の正面から、
「よそみは……」
だ、め、よ――と。
少年より少しばかり年上のような女性がそう言った。
その直後、
「――ぐっ!?」
少年の脳に衝撃が走る。
濃厚な腐卵臭が、少年の嗅覚を刺激したのだ。
音なんてしなかったはず――と思いかけて、少年は気づく。
「驚かせちゃって、ごめんね。本当は音で気を引こうと思ってたのに、すぅ~って、すかしっ屁になっちゃったの」
そう言って、女性は少し恥ずかしそうに、色気のある笑みを少年に向けた。
そして、少年からゆっくりと手を離すと、
「嗅いでくれてありがとう。それじゃあね」
立ち去っていく女性。
すると、その後ろから、手に持った焼き芋のようなものを口の中へと放り込み、立ち去った女性と同い年くらいの女の人が少年の前へと歩いてくる。
「おーい、生きてる?」
女の人は快活な笑みを浮かべるが、少年に返事をする気力はなかった。
「いいよ、無理しなくて。ちゃんと意識はあるみたいだし、ちゃんと嗅いでくれれば、それで十分だから。それじゃあ、さっそくだけど……」
女の人はそう言って、片手をおしりの方へともっていく。そして――、
「ふんっ!」
~ すっ……ふすううぅぅううぅぅ
気合の入った声とは裏腹に、女の人のおしりからは、風船の空気が漏れたときのような、静かな音が場に響いた。
「ありぁ、音がでなかったよぉ……。ま、しょうがないか……」
女の人はおしりに回した方の手を、優しくグーの形に握ると、その手を少年の鼻へと近づけていく。
「……や、ゃめ――」
後ずさろうとする少年。
女の人は空いている手で少年の後頭部を押さえると、グーに仕た手を少しだけ開き、そっと少年の鼻にかぶせた。
「――んぐひゅっ!?」
刺激のある臭いが脳を通り抜けたような感覚に、思わず少年の声が漏れる。
「なにそれ。ぐひゅ~、だって。……くふふっ」
女の人は楽しげに笑うと、
「それじゃ、ありがとねー」
そう言って、女の人は立ち去っていき、後ろにならんでいた人と場所を変わったのだった。
「…………」
少年は声を発さなくなっていた。
意識はあるが、気力がないのである。
普通に臭いだけのオナラでも、何度も嗅げば、流石にきつく、そのうえ、数回に一度、“地雷”があるのだがら、その精神的ダメージは半端ではなく、少年の心は、すっかり折れていた。
そして、少年を追い詰めたのは、臭いだけではない。
少年は感情の消えた目で、列を“ぐるりと見回す”。
少し前まで小道にいたのだが、催しごとのような何かは、場所を広場に変えて再開されようとしていており、そこで少年は――ようやく気づいたのだ。
そのうち終わると思っていた、苦行のような時間が――まだ始まったばかりだということに。
円状に広がるその空間には、数百人ほどの人が集まっているのだが、そのほとんどが渦のような列を作り、少年にオナラの臭いを嗅がせるために集まっていた。
全員ではないのは、一度少年に臭いを嗅がせたらしき人達は、建物の窓、もしくは屋根などの高所から、遠巻きに薫を見ているだけで、列からはずれているからだ。
一人一回などのルールでもあるのか、それだけが、少年にとって唯一の救いであった。
「じゃあ、そろそろいいかな?」
少年の前にいる女性が言うと、その女性の友達らしき女の人が、焼き芋のようなものを片手に返事をする。
「うん、いいんじゃないかな。皆も待ちきれないだろうし」
そう言って、その人は「はむっ」と手に持ったものををほおばった。
ちなみに、待ち時間を見越してか、食事をしながら列に並んでいる人たちが結構おり、中でも、パンなどを片手に談笑してる人が多いようだ。
そのことに少年が気を取られていると、唐突に――鼻を手のひらに包まれる。
「……?」
何が起こったのわからずにいる少年の正面から、
「よそみは……」
だ、め、よ――と。
少年より少しばかり年上のような女性がそう言った。
その直後、
「――ぐっ!?」
少年の脳に衝撃が走る。
濃厚な腐卵臭が、少年の嗅覚を刺激したのだ。
音なんてしなかったはず――と思いかけて、少年は気づく。
「驚かせちゃって、ごめんね。本当は音で気を引こうと思ってたのに、すぅ~って、すかしっ屁になっちゃったの」
そう言って、女性は少し恥ずかしそうに、色気のある笑みを少年に向けた。
そして、少年からゆっくりと手を離すと、
「嗅いでくれてありがとう。それじゃあね」
立ち去っていく女性。
すると、その後ろから、手に持った焼き芋のようなものを口の中へと放り込み、立ち去った女性と同い年くらいの女の人が少年の前へと歩いてくる。
「おーい、生きてる?」
女の人は快活な笑みを浮かべるが、少年に返事をする気力はなかった。
「いいよ、無理しなくて。ちゃんと意識はあるみたいだし、ちゃんと嗅いでくれれば、それで十分だから。それじゃあ、さっそくだけど……」
女の人はそう言って、片手をおしりの方へともっていく。そして――、
「ふんっ!」
~ すっ……ふすううぅぅううぅぅ
気合の入った声とは裏腹に、女の人のおしりからは、風船の空気が漏れたときのような、静かな音が場に響いた。
「ありぁ、音がでなかったよぉ……。ま、しょうがないか……」
女の人はおしりに回した方の手を、優しくグーの形に握ると、その手を少年の鼻へと近づけていく。
「……や、ゃめ――」
後ずさろうとする少年。
女の人は空いている手で少年の後頭部を押さえると、グーに仕た手を少しだけ開き、そっと少年の鼻にかぶせた。
「――んぐひゅっ!?」
刺激のある臭いが脳を通り抜けたような感覚に、思わず少年の声が漏れる。
「なにそれ。ぐひゅ~、だって。……くふふっ」
女の人は楽しげに笑うと、
「それじゃ、ありがとねー」
そう言って、女の人は立ち去っていき、後ろにならんでいた人と場所を変わったのだった。
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