変わりもの

𝐄𝐢𝐜𝐡𝐢

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変わり者の日常

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 僕の彼女は変わっている。
 どんな風に変わっているのかは、うまく説明できそうにないが。
 とにかく、俺の予想を超えた行動をいつもとってくるのだ。

 ただ、もしかすると、俺が変わっている可能もある。
 僕が一般的ではないために、彼女が変わっているように見えるだけなのかもしれないのだから。
 一概に、決め付けるのはよくないだろう。

 さて――それにしても。
 ここに第三者がいたら、どのように思うのだろうか。

 僕の眼前には、彼女の――デニムの尻があり。
 なんの脈絡もなく、そんなことをされたものだったから。
 僕は声を出すとすらできないほど驚いた。
 そして、そんな僕に彼女はいうのだ。

「ねえ。ちょっと、おかしいんだけど」

 確かに、おかしい。
 それも、ちょっとどころでない。
 ちなみに、いつも変わったことをする彼女だが、ここまで変なのは。
 初めてだと思えるぐらい、今日はなんだか、すごい感じだ。
 なんのつもりなんだろう、と僕が思っていると、

「だから、確認してくれないかな?」

「……何を?」

「ありがとう。それじゃあ――だすね?」

「いや……、だから何――」

「ふぅんっ……!」

 すううぅぅううううぅぅ~~……

 それは、まごうことなき、放屁だった。
 思いっきりすかしの。
 そして、思いっきり、

「――くっさあぁ……!」

 音を聴いた意瞬間、いやな予感はした。
 だが、とっさに呼吸が止められなかったのと。
 ほんの少しだけ、好奇心がなきにしもあらず、といった感じで。
 なんだかんだで吸い込んでしまった結果。
 僕は肺呼吸の生物に生まれてきたことを、後悔することとなった。

 とんでもなく熱い。
 とんでもない濃度の腐卵臭が、脳へ突き抜けてきたのだ。

 その匂いに、僕が咳き込んでいると、

「ふうぅぅぅんっ……!!」

 むっしゅううぅぅ――すかああぁぁああああぁぁ~~……

「――うぐううぅぅっ……!」

 追撃、といわんばかりの連発。
 彼女は再びいきみ、またもきっちりすかしきった。
 それは、いかにも臭そうな音だったが。
 臭いの面でも、やはり裏切ることはなく。
 せき込んでいた僕はそのにごったような空気をもろに肺の中へ、通してしまった。
 そして、そのあまりにもひどい臭いに、僕が涙目になっていると、

「ね? 変でしょ?」

 確かに、変だ。
 変どころの騒ぎではないが。
 ただ、彼女の質問の意図がわかならい。
 おそらく、彼女は自分の行動についてのおかしさを指しているのではなく。
 別に、おかしな点があると、いいたいのだろう。
 だが、今は脳の機能のほとんどを彼女の毒ガスすかしっ屁によって、侵食されてしまっていて。
 考え事どころではない。
 とはいえ、考えるまでもなかったようで、

「なんだかね。どんなに勢いよくおならをしても、全部すかしっ屁になっちゃうの……」

 なんだか、変だよね?
 と、彼女はすぐにネタばらしをする。
 まあ、そんな話をされたところで、僕の脳内にあるクエスチョンの数は、増すばかりなのだが。
 彼女にとって、僕の疑問なんてものは、知ったことではないようで、

「ほら、もう一回やってみるから。ちゃんときいてて」

 彼女はそう言うと、またも――、

「ぐぬぬうぅ……!」

 ふっすううぅぅううううぅぅううぅぅ~~……

「――ぐっ、ぎゃあぁぁ……!」

 その臭いはもう、臭いなんてもんではない。
 濃度じだいには、それほど変化は無いようにも感じるが。
 僕の鼻のライフポイントがもはや瀕死レベルといったところに、じっとりとした悪臭の塊のような風がきたもんだから。
 たまったものではないのだ。
 しかし、彼女の奇行はまだまだ終わらず――、

「あ、もう一回でそう」

 すううぅぅううううぅ~~……

「ん? もう一回……?」

 むしゅううぅううぅぅ~~……

「あれ? とまんないや……」

 ふっすうううぅぅううぅぅ~~……

「っていうか、大丈夫?」

 と、そこでようやく、彼女は僕の様子がおかしいことに気づくと、

「次こそは、ちゃんと音を出すから! 後一回だけ付き合って!」

 彼女はそういうと、腹に意識を集中させるように押し黙る。
 それから、しばらくして。
 僕が冗談半分に、生命の危機を覚え始めたころ、

「よし……! これならいける! この感じですかしなら、もう私の今後の人生のおならは、全部すかしだといっても、過言ではないぐらいだよ!」

 彼女は自信満々意言うと。
 ゴリラの化身にでもなったかのごとく、この日最大級の力を腹に込め――、

「ぐ、ぬううううぅぅんっ……!」

 と、彼女は声を漏らし、この日一番の、すかしっ屁を放出した――。

 何が一番って。
 長さ、音圧、破壊力。
 どれをとっても最大級のものが、ここにきて出たのだ。

 そして、それを受けた俺がどうなったのかは、想像にまかせるとして。
 とにかく、彼女がどれだけ変なやつなのはか、わかってもらえたのではないだろうか。

 とはいえ、そんな彼女のことが好きで、仕方がないのだから。
 やはり、俺もまた、同じぐらい変なのだろうと思う。
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