婚約破棄令嬢は失恋後……。

婚約破棄令嬢は失恋後……。

「……」

　何を言えないまま私は宙を仰ぐ。
　相変わらず私の部屋には何もない。
　本棚にある本も、ペンも、机も何もかも自分で買ったものは無い。
　私は元婚約者のセナリオと一緒に婚約成立時に撮った写真を見る。
　あの時の誓いは嘘だったのか。目から涙が零れる。

「ああ、もう……」

　私はベランダへ出る。
　久しぶりに見た夕焼けはとても綺麗だった。
　初めて二人でお茶会をしたときの空とよく似ていた。
　向こうでセナリオが笑っているような気がした。

「私も前見なきゃいけないのかな……」

　私は一人ぽつりとそう言い、部屋へ戻る。
　あの写真を捨てて、親から貰ったお見合い写真とにらめっこすることとなった。