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第一章~王女の秘密~
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この小部屋、実は城のいくつかの出入り口と繋がっている。
私は、今来た道とは別の通路への入り口を開けると、すぐさま裸足で駆けだした。
町娘を装う為にはいて生きた靴では動きにくかったので、脱いだ。
暗い通路を、記憶を頼りに走る。
私が走った後に明かりが灯り、光を道が浮かび上がった。
早くしないと、アートが敵に見つかってしまう。
気持ちばかりが急いて、何度か足がもつれそうになった。
魔力を張り巡らせ、走る速度はどんどん増していき、やがて見えてきた目的の場所、通路の突き当りを、私は魔力を込めた拳で叩いた。
――ガンッ――
音が鳴り、階段が現れた。同時に声が聞こえてくる。私を探す声だ。
私は武器を後ろに構え、階段を駆け上がり、地上に出ると同時に振り切った。
手に持った武器が重い何かを捕え、骨を砕き、肉を抉った。
「ぎゃあ!」
男が短い悲鳴を上げ、転げる様に倒れた。
男は血が流れる足を抑えながら、喘ぎ私から距離を取ろうともがいている。頭を叩く。
横から振り抜けば、男はこと切れた様に大人しく、動かなくなった。
そこは屋敷のニ階にある、かつては食堂として使われていた部屋だった。出入り口のすぐそばにいたのはこの男だけだったが、部屋の中もう一人女が、外にはバラバラと複数人の足音が聞こえてくる。
外は……一、ニ、三人? それくらいなら平気ね。
けれど、思ったより人が少ない。
こんな場所だからかしら。アートの所へ行かれたら不味いわね。
殺気の籠った視線が私に向けられた。
「きゃぁああ! こ、こんな所に出るなんて!」
私は大げさすぎる程の悲鳴を上げながら、逃げ出した。
先程聞こえてきた、彼らの牢屋での会話は相当焦っていた。そこへ血眼になり探していた人物が現れたらどうする? それこそ何が何でも捕まえようとするはずだ。
何とか部屋の外へ出ようと、食堂の入り口に向かい走り出した私を、敵の女は興奮気味に吐き出し笑った。
「馬鹿だな、お姫様!」
そうは言いつつも、私は油断しない、彼女の顔にそう書いてある。
でもね、油断しようが、しなかろうが、実力の差を埋めるのはどうしたって難しいものよ。
敵の持つ得物は幅広の刀身を持つ片刃の短刀。扱いやすいが見た目より重い。
私は敵が振りかぶったところで、彼女の真下に入り、足を踏みつけ、縦に構えた棒を突き上げた。バチンという弾ける音を耳で捕えながら、私は続けざまの腹に拳を打ち込む。
敵は顎の骨が砕け、後ろに仰け反りながら倒れた。
止めに膝を踏みつけ割る。
「あああああああ!」
女の悲鳴が響いた。
部屋の外を通り過ぎようとしていた足音が止まり、こちらに向けられる。
次が来る。
ドアの前で聞き耳を立てていると、カチャリと金属音が聞こえてきた。
素早くドアの前から飛び退くのと、ドアから剣が突き破り出てくるのは、ほぼ同時だった。
私は棒を二本使い、ドアから生える剣を叩き折る。けれど、それも罠だった。
剣は根本から折れたが、次の瞬間閃光がほとばしり、私の視力を焼いた。
咄嗟に目を閉じたが、完全には防げず、私の視界を白い影が遮る。
私はさらに、ドアから距離を取った。
――ダン!――
ドアが壁にぶつかり跳ね返る音と術式を紡ぐ呟きが聞こえ、私は迷わず、影でしかない人物に向かって飛び込んだ。相手の腹に棒を突き刺し、後ろに蹴り飛ばす。
敵の放った魔法は私の魔法具が弾いてくれる。バチンと音をたてた。
他にもいた数名内、一人は私が蹴り飛ばした敵の下敷きになり、もう二人は廊下へと逃れたようだ。
呪文を唱える声が二重に聞こえてくる。
私は倒れた男の上に飛び乗り、声のする方へ棒を、勢いを付けて向けた。
棒の長さは精々五十センチ程。彼らに致命傷を負わせるには長さが足りない。
けれど、これは四つに折りたたまれた棒で、伸ばすのは自由自在。
背の低い私の弱点をカバーしてくれる優秀な武器だ。
四つ折りから二つ折りへと変化した棒は、今度はただの棒ではなく、鋭利な刃物を持っていた。
刃先は呪文を唱えていた敵の、それぞれのお腹と胸に刺さっている。
引き抜くと血が噴き出し、彼らは膝から崩れ落ちた。
仲間の下敷きになった者は、意識を失っているのかもしれない。
うんともスンとも言わないもの。
私は足元に転がる敵に二度、三度、刃を突き立てた。
――ピィイイイ……――
笛の音が一瞬の静寂をつんざき、屋敷中に響き渡った。
一人仕留め損ねた?
笛の音が聞こえたのは左だけど……念の為、両方……。
私は廊下に倒れた二名に、もう一度刃を突き立てた。
食堂から庭園が見下ろせるようになっている。
このまま中庭に飛び降りても良いのだけれど、もう少し、敵を引き付けた方が良いかもしれない。
私は武器を元の棒へ戻すと、視界がきかないまま、廊下を足音のする方へ向かって走り出した。
私は、今来た道とは別の通路への入り口を開けると、すぐさま裸足で駆けだした。
町娘を装う為にはいて生きた靴では動きにくかったので、脱いだ。
暗い通路を、記憶を頼りに走る。
私が走った後に明かりが灯り、光を道が浮かび上がった。
早くしないと、アートが敵に見つかってしまう。
気持ちばかりが急いて、何度か足がもつれそうになった。
魔力を張り巡らせ、走る速度はどんどん増していき、やがて見えてきた目的の場所、通路の突き当りを、私は魔力を込めた拳で叩いた。
――ガンッ――
音が鳴り、階段が現れた。同時に声が聞こえてくる。私を探す声だ。
私は武器を後ろに構え、階段を駆け上がり、地上に出ると同時に振り切った。
手に持った武器が重い何かを捕え、骨を砕き、肉を抉った。
「ぎゃあ!」
男が短い悲鳴を上げ、転げる様に倒れた。
男は血が流れる足を抑えながら、喘ぎ私から距離を取ろうともがいている。頭を叩く。
横から振り抜けば、男はこと切れた様に大人しく、動かなくなった。
そこは屋敷のニ階にある、かつては食堂として使われていた部屋だった。出入り口のすぐそばにいたのはこの男だけだったが、部屋の中もう一人女が、外にはバラバラと複数人の足音が聞こえてくる。
外は……一、ニ、三人? それくらいなら平気ね。
けれど、思ったより人が少ない。
こんな場所だからかしら。アートの所へ行かれたら不味いわね。
殺気の籠った視線が私に向けられた。
「きゃぁああ! こ、こんな所に出るなんて!」
私は大げさすぎる程の悲鳴を上げながら、逃げ出した。
先程聞こえてきた、彼らの牢屋での会話は相当焦っていた。そこへ血眼になり探していた人物が現れたらどうする? それこそ何が何でも捕まえようとするはずだ。
何とか部屋の外へ出ようと、食堂の入り口に向かい走り出した私を、敵の女は興奮気味に吐き出し笑った。
「馬鹿だな、お姫様!」
そうは言いつつも、私は油断しない、彼女の顔にそう書いてある。
でもね、油断しようが、しなかろうが、実力の差を埋めるのはどうしたって難しいものよ。
敵の持つ得物は幅広の刀身を持つ片刃の短刀。扱いやすいが見た目より重い。
私は敵が振りかぶったところで、彼女の真下に入り、足を踏みつけ、縦に構えた棒を突き上げた。バチンという弾ける音を耳で捕えながら、私は続けざまの腹に拳を打ち込む。
敵は顎の骨が砕け、後ろに仰け反りながら倒れた。
止めに膝を踏みつけ割る。
「あああああああ!」
女の悲鳴が響いた。
部屋の外を通り過ぎようとしていた足音が止まり、こちらに向けられる。
次が来る。
ドアの前で聞き耳を立てていると、カチャリと金属音が聞こえてきた。
素早くドアの前から飛び退くのと、ドアから剣が突き破り出てくるのは、ほぼ同時だった。
私は棒を二本使い、ドアから生える剣を叩き折る。けれど、それも罠だった。
剣は根本から折れたが、次の瞬間閃光がほとばしり、私の視力を焼いた。
咄嗟に目を閉じたが、完全には防げず、私の視界を白い影が遮る。
私はさらに、ドアから距離を取った。
――ダン!――
ドアが壁にぶつかり跳ね返る音と術式を紡ぐ呟きが聞こえ、私は迷わず、影でしかない人物に向かって飛び込んだ。相手の腹に棒を突き刺し、後ろに蹴り飛ばす。
敵の放った魔法は私の魔法具が弾いてくれる。バチンと音をたてた。
他にもいた数名内、一人は私が蹴り飛ばした敵の下敷きになり、もう二人は廊下へと逃れたようだ。
呪文を唱える声が二重に聞こえてくる。
私は倒れた男の上に飛び乗り、声のする方へ棒を、勢いを付けて向けた。
棒の長さは精々五十センチ程。彼らに致命傷を負わせるには長さが足りない。
けれど、これは四つに折りたたまれた棒で、伸ばすのは自由自在。
背の低い私の弱点をカバーしてくれる優秀な武器だ。
四つ折りから二つ折りへと変化した棒は、今度はただの棒ではなく、鋭利な刃物を持っていた。
刃先は呪文を唱えていた敵の、それぞれのお腹と胸に刺さっている。
引き抜くと血が噴き出し、彼らは膝から崩れ落ちた。
仲間の下敷きになった者は、意識を失っているのかもしれない。
うんともスンとも言わないもの。
私は足元に転がる敵に二度、三度、刃を突き立てた。
――ピィイイイ……――
笛の音が一瞬の静寂をつんざき、屋敷中に響き渡った。
一人仕留め損ねた?
笛の音が聞こえたのは左だけど……念の為、両方……。
私は廊下に倒れた二名に、もう一度刃を突き立てた。
食堂から庭園が見下ろせるようになっている。
このまま中庭に飛び降りても良いのだけれど、もう少し、敵を引き付けた方が良いかもしれない。
私は武器を元の棒へ戻すと、視界がきかないまま、廊下を足音のする方へ向かって走り出した。
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