22 / 74
1
19
しおりを挟む
教えてもらった通り、船首の方向を意識しながら行くと、迷いつつもちゃんと空き部屋の所まで行くことが出来た。
「一人でちゃんと来ることが出来たか。上出来だな。だが、ぼーっとしている暇はない、さっさと始めろ」
ジゼルは先に始めていた様子で、荷物にかぶっていた埃を下に落とす作業をしていた。しかし特にアリアナに対する指示はなく、てっきり何か言い渡されると思っていたアリアナはおずおずとジゼルに声をかけた。
「えっと、私は何をしましょう?」
「指示が無いと動けないのか? お前はお前が出来ることをしろ」
「はい…」
厳しい言葉にアリアナはシュンとしつつも、持ってきた箒でとりあえず床にたまった埃を掃き始めた。
そして互いに言葉を交わすことなく黙々と掃除をしていると、次第にアリアナはジゼルの動きに合わせて掃除をすることが出来るようになってきて、効率よく動けるようになっていた。
そこからさらに一時間かけて掃除をすると、埃っぽさは無くなって随分と綺麗な部屋になっていた。
「…よし、これくらいでいいだろう」
「ようやく終わった……」
「まあ、女にしては根気よく頑張ったな。使えなかったら海に放り出そうかと思っていたが、そうならなくて良かったな」
ジゼルの言葉にアリアナはゾッとしつつも、実際にそうならなくて良かったと心底ほっとして頷いた。
「じゃあ、俺は元の仕事に戻る。片づけはお前に任せるぞ」
「分かりました」
片づけを任されたアリアナは無意識に緊張していたのか大きく息を吐いて、肩から力を抜くと道具やごみの処理をし始めた。
そして片づけを終わらせると甲板に向かい、ロゼと宝の選別をしてるジャンとテトに声をかけた。
「お待たせしました…。掃除、終わりました」
「お疲れ、アリアナ。ジゼルにいじめられなかった?」
真っ先にロゼがアリアナのところに来て、ペタペタと体を触る様子はどこからどう見ても過保護な親か姉で、ジャンとテトは女性に優しくするロゼにまだ慣れず苦笑をした。
「ロゼが女に優しくするって、夢でも見てるんじゃないかって思うんだよな」
「分かります」
「ああ、こんなに埃まみれになって…あとで一緒にお風呂に入りましょうね」
「えっ、船にお風呂があるんですか!」
「えぇ、あるわよ」
驚くアリアナを見て満足げな笑顔で返すロゼに、アリアナはこの船は豪華客船並みの規模なのではと、改めてすごい船に乗り込んでしまったのだと実感した。
「おい、アリアナ。ちょっと来い」
ロゼにナデナデされていたアリアナの腕を引き、不機嫌そうな声を上げるロゼに構わずずんずんとアリアナの部屋となる空き部屋の前に来ると、くるっとアリアナの方を見てジャンが「開けてみろ」とドアの前に立たせた。アリアナは訳も分からず連れてこられたことに戸惑いつつも、言われたとおりにドアを開けてみる。
「わぁ…! 綺麗になってる!」
部屋は埃一つない綺麗な部屋になっており、さっきまで足の踏み場が無かった部屋とは思えないほど綺麗になっていた。
「あぁ、テトがきれいに掃除してくれた。あとこれ、簡易的なものだが無いよりマシだろ」
さらに部屋の奥にはベッドが置いてあり、かわいらしい色合いの布が何枚か置かれていた。
「えっ、なんでベッドが…」
「俺が作った」
「作れるものなんですか!」
「売り物に比べたら強度はねぇけどな。アリアナ一人が寝るくらいなら問題ない。安心して寝ていいぞ」
驚くアリアナに、ジャンは誇らしそうに笑いながら笑ってアリアナの頭をワシワシと撫でた。アリアナはその力強さにあわあわしつつも、ジャンの優しさに笑顔がこぼれた。
「あー! ジャンさんズルい! 僕だって頑張って部屋を綺麗にしたのに!」
「テトさん、ジャンさん、ありがとうございます」
ダダダッと走ってきたテトが文句を言うが、アリアナが礼を言うとすぐに二人とも笑顔になり、穏やかな雰囲気に包まれたのだった。
「一人でちゃんと来ることが出来たか。上出来だな。だが、ぼーっとしている暇はない、さっさと始めろ」
ジゼルは先に始めていた様子で、荷物にかぶっていた埃を下に落とす作業をしていた。しかし特にアリアナに対する指示はなく、てっきり何か言い渡されると思っていたアリアナはおずおずとジゼルに声をかけた。
「えっと、私は何をしましょう?」
「指示が無いと動けないのか? お前はお前が出来ることをしろ」
「はい…」
厳しい言葉にアリアナはシュンとしつつも、持ってきた箒でとりあえず床にたまった埃を掃き始めた。
そして互いに言葉を交わすことなく黙々と掃除をしていると、次第にアリアナはジゼルの動きに合わせて掃除をすることが出来るようになってきて、効率よく動けるようになっていた。
そこからさらに一時間かけて掃除をすると、埃っぽさは無くなって随分と綺麗な部屋になっていた。
「…よし、これくらいでいいだろう」
「ようやく終わった……」
「まあ、女にしては根気よく頑張ったな。使えなかったら海に放り出そうかと思っていたが、そうならなくて良かったな」
ジゼルの言葉にアリアナはゾッとしつつも、実際にそうならなくて良かったと心底ほっとして頷いた。
「じゃあ、俺は元の仕事に戻る。片づけはお前に任せるぞ」
「分かりました」
片づけを任されたアリアナは無意識に緊張していたのか大きく息を吐いて、肩から力を抜くと道具やごみの処理をし始めた。
そして片づけを終わらせると甲板に向かい、ロゼと宝の選別をしてるジャンとテトに声をかけた。
「お待たせしました…。掃除、終わりました」
「お疲れ、アリアナ。ジゼルにいじめられなかった?」
真っ先にロゼがアリアナのところに来て、ペタペタと体を触る様子はどこからどう見ても過保護な親か姉で、ジャンとテトは女性に優しくするロゼにまだ慣れず苦笑をした。
「ロゼが女に優しくするって、夢でも見てるんじゃないかって思うんだよな」
「分かります」
「ああ、こんなに埃まみれになって…あとで一緒にお風呂に入りましょうね」
「えっ、船にお風呂があるんですか!」
「えぇ、あるわよ」
驚くアリアナを見て満足げな笑顔で返すロゼに、アリアナはこの船は豪華客船並みの規模なのではと、改めてすごい船に乗り込んでしまったのだと実感した。
「おい、アリアナ。ちょっと来い」
ロゼにナデナデされていたアリアナの腕を引き、不機嫌そうな声を上げるロゼに構わずずんずんとアリアナの部屋となる空き部屋の前に来ると、くるっとアリアナの方を見てジャンが「開けてみろ」とドアの前に立たせた。アリアナは訳も分からず連れてこられたことに戸惑いつつも、言われたとおりにドアを開けてみる。
「わぁ…! 綺麗になってる!」
部屋は埃一つない綺麗な部屋になっており、さっきまで足の踏み場が無かった部屋とは思えないほど綺麗になっていた。
「あぁ、テトがきれいに掃除してくれた。あとこれ、簡易的なものだが無いよりマシだろ」
さらに部屋の奥にはベッドが置いてあり、かわいらしい色合いの布が何枚か置かれていた。
「えっ、なんでベッドが…」
「俺が作った」
「作れるものなんですか!」
「売り物に比べたら強度はねぇけどな。アリアナ一人が寝るくらいなら問題ない。安心して寝ていいぞ」
驚くアリアナに、ジャンは誇らしそうに笑いながら笑ってアリアナの頭をワシワシと撫でた。アリアナはその力強さにあわあわしつつも、ジャンの優しさに笑顔がこぼれた。
「あー! ジャンさんズルい! 僕だって頑張って部屋を綺麗にしたのに!」
「テトさん、ジャンさん、ありがとうございます」
ダダダッと走ってきたテトが文句を言うが、アリアナが礼を言うとすぐに二人とも笑顔になり、穏やかな雰囲気に包まれたのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
55
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる