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ヒナ 2
一瞬、何をされたのかわからなかった陸は思考が停止しかけるも、従順な恋人から拒絶されたことを知り、忌々しげに睨みつけた。
「この……アバズレが!」
陸は藍時に掴みかかると、力任せに頬を張り倒した。自分よりも一回り以上も大きな男から受けた暴力は、藍時の身体をあえなく床に叩きつけた。
息を荒らげて藍時を見下ろす陸の両目は血走り、その表情はさながら野獣のようだった。
「こっちが下手に出てやっているからって、調子に乗るなよ。何もできないΩのくせに……!」
続けて、陸は収まらない怒りをソファにぶつけた。何度も何度も蹴りつけて、藍時への怒りを晴らそうとしていた。
床にへばりつく藍時はその光景を目にしながら、この空間からの脱出を考えた。
一番近くにあるエレベーターは、ボタンを押したところですぐに乗り込めるかわからない。また、乗り込めたところで、陸にあえなく捕まってしまうのがオチだろう。非常口を目指すのも同じことだと、それはすぐに候補から外された。
とにかく今はこの男から離れなければ、と。藍時は身体を起こし、急いである場所に向かった。
(トイレなら鍵がかけられる。僅かでも、あの人から離れられる)
エレベーターからすぐのところに患者用のトイレがあり、藍時はそこへ駆け込んだ。扉を閉め、すぐにレバー上の鍵をかけるとトイレの中を見渡した。あるのは洋式の便器と人ひとりがなんとか通れるような引違い窓が一つだけ。出口の役目を果たすのは窓になるが、たとえそこから出られたとしてもここは三階だ。飛び降りたら最悪、死ぬこともあるだろう。
他に手立てはないだろうかと、藍時が必死に考えていると、扉の向こうからノックとともに、こちらを呼ぶ声が聞こえた。
「藍時~? そんなところにいても出口はここしかないよ。早く出てきなさい。もう、君は本当に手のかかる子だなぁ」
その声は優しく語りかけるようでありながら、少々上擦っていた。顔を見なくともわかる。今の陸は、蟀谷にたくさんの筋を浮き上がらせていることだろう。
(とにかく、今は助けを呼ばなくちゃ)
身体に巻き付けているボディバッグからスマホを取り出すと、「110」番にかけようとした。だが……
(ここへかけても、声が出ないから状況を詳しく説明することができない。それにたとえ警察が来てくれたとしても、ここは精神科だ。患者の俺がヒステリックを起こしてトイレに立て籠もったなんて医師から言われたら、ろくに話を聞かずに帰ってしまうかもしれない。それを成してしまうのが、この人の上手いところなんだ……)
過去にも、近隣住民から通報され、警察から話を聞かれたことがあった。その時も、陸はΩによるヒートが原因だといって、彼らを信じ込ませた。
もはや、自分はこの男の下に戻るしかないのだろうか。藍時は瞼を瞑り、偽りでも家族として接してくれた彼らを思い出した。
(秀一さん……純……ごめんなさい……)
それは自分を救い出してくれた彼らを信じることができなかっただけでなく、そんな二人の存在を忘れてしまっていることに対しての謝罪だった。もしも過去に、ヒナとして彼らと出会っていたのであれば、なぜその記憶を失くしてしまったのか。あれほど可愛い子どもと、大切に自分を扱ってくれた彼をなぜ……。
その答えは、この扉の向こうにいる男が握っていた。
「無駄だよ、藍時。君が帰るところなんてここしかない。それに私にはもう、扇とその子どもの居場所がわかっているんだ。君が逃げたら彼ら……いや、あの子どもはどうなるかな。低能なΩでも、そのくらいはわかるだろう?」
それは言ってみれば、ありきたりな脅し文句だった。藍時にとって我が子のように大切な純を、陸は人質にしたのだ。実際にそれを行ってしまえば、捕まるのは陸本人になるのだが、暴力による恐ろしさを知っている藍時に、それは聞き流せない脅しだった。
この時、何度目かのフラッシュが頭の中で焚かれ、愛憎に満ちた陸の声が蘇る。
『あの男とガキの居場所はわかっているんだ。藍時、君がまた私を裏切ると言うのなら、あの二人がどうなるか、わかるよな? まったく……私から逃げられると思うなよ』
藍時は思い出した。最後に落とされた台詞の、本当の意味を。
(俺は……俺は、あの時も二人に……ううん。二人を、陸から遠ざけようとして……)
だから当時、大怪我を負いつつも自分は逃げたのか。痛みに悶え、気を失い、動けない身体に鞭を打ち、地面を這いつくばって陸から逃れようとした。秀一と純に、伝えるために。
(だとしたら、二人と過ごした時間の記憶を失くしたのも……)
憶測だが、記憶の中から秀一と純を消すことで、彼らを守ろうとしたのかもしれない。これ以上、自分と関わることがないようにするために。彼らに危険が迫らないようにするために。
しかし、結局は見つかってしまった。自分を母だと信じ求めた、あの幼き子どもに。
(純……)
「藍時っ! ほら、早く出てこい……藍時ぃ!」
痺れを切らした陸が、ドン! ドン! と、外から扉を蹴り始めた。もしかしたら、鈍器のようなものを使っているのかもしれない。叩く音に交じり、扉の板が壊れていく音が聞こえた。
ここで捕まれば、きっとこれまで以上の暴力をふるわれるに違いない。
(一か八かだ)
意を決したように、藍時は便器の上にある窓枠に手をかけた。
トイレの扉は、たちまち壊されてしまった。空いた穴から腕を差し込み中の鍵を開けると、陸は引き攣った笑みを浮かべながら顔を出した。
「藍時ぃ…………えっ?」
突如、陸は驚きの声をあげた。目的の人物は、てっきり怯えて蹲っているものだと思っていたからだ。しかし予想に反して、彼の目の前には信じられない光景が広がっていた。
「な、何をしているんだ、藍時っ?」
藍時はいた。目の前に。だが、彼の身体はトイレの中にはなかった。
(うわ。高い……三階って思った以上に高さがあるんだな……)
藍時は外を見下ろしながら、引き攣るような笑みを浮かべた。そう、彼はトイレの窓から身体を出し、外に出ていた。今は落ちないように、窓枠に足をかけ、縁を掴んで自分の身体を支えている。
外にいる通行人からも気づかれたのか、「キャー!」と、どこかから悲鳴が上がった。それを耳にして、藍時ははっきりと、ある記憶を思い出した。
自分は一度、こうして高い場所から飛び降りている。ここではない、別のどこかで。鳥にでもなったかのような気持ちになって。その時も、下にいる人間の口から、悲鳴が上がっていた。
(そうだ。あれは「L’oiseau」の裏手にある外階段から落ちたんだ……)
つい最近、初めて足を踏み入れたと思っていたあの店に、藍時は一年以上も前に来ていたのだ。既視感があったのはそのためだ。あの頃はすべてに悲観し、すべてに絶望し、すべてがどうでもよくなり、死を選んだ。
だが、今は違った。これは死ぬための行動ではない。自分を認め、受け入れてくれた人間の下に帰るための手段だった。
さすがに、藍時のこの行動には陸も肝を冷やしたのか、こちらへ引き寄せようとジリジリと近づいた。
「藍時……さ、やめなさい。そんなところから落ちたら、無事では済まないよ? ああ、藍時。怒らないから、ね? 早くこっちに戻ってくるんだ。ほら、ほらぁ……いい子だからぁ!」
その叫びのような陸の声に、藍時は向かってにこっと笑みを浮かべた。そして自分の人差し指を右目の下に添えると、そのまま下瞼を裏返して真っ赤な舌を見せつけた。
陸はぎょっと目を丸くさせ、石化したように固まってしまった。
(今だ……!)
その隙をついて、藍時は窓から飛び降りた。
「藍時ぃぃぃ!」
陸の叫び声が一瞬で遠くなる。重力が一気に藍時の身体を下へ下へと押しつけた。
死まで覚悟した藍時。しかし想像をしていた衝撃はなく、代わりに大きな何かによってその身体は受け止められた。
「あー、びっくりした。まーた、雛鳥が落ちてきたのかと思ったよ」
頭上から、聞き馴染みのある声が降ってきた。よく透る低い声。いつの間にか閉じていた瞼をそっと開けると、そこにはこちらを見下ろし、ニッと笑う秀一の姿があった。
「この……アバズレが!」
陸は藍時に掴みかかると、力任せに頬を張り倒した。自分よりも一回り以上も大きな男から受けた暴力は、藍時の身体をあえなく床に叩きつけた。
息を荒らげて藍時を見下ろす陸の両目は血走り、その表情はさながら野獣のようだった。
「こっちが下手に出てやっているからって、調子に乗るなよ。何もできないΩのくせに……!」
続けて、陸は収まらない怒りをソファにぶつけた。何度も何度も蹴りつけて、藍時への怒りを晴らそうとしていた。
床にへばりつく藍時はその光景を目にしながら、この空間からの脱出を考えた。
一番近くにあるエレベーターは、ボタンを押したところですぐに乗り込めるかわからない。また、乗り込めたところで、陸にあえなく捕まってしまうのがオチだろう。非常口を目指すのも同じことだと、それはすぐに候補から外された。
とにかく今はこの男から離れなければ、と。藍時は身体を起こし、急いである場所に向かった。
(トイレなら鍵がかけられる。僅かでも、あの人から離れられる)
エレベーターからすぐのところに患者用のトイレがあり、藍時はそこへ駆け込んだ。扉を閉め、すぐにレバー上の鍵をかけるとトイレの中を見渡した。あるのは洋式の便器と人ひとりがなんとか通れるような引違い窓が一つだけ。出口の役目を果たすのは窓になるが、たとえそこから出られたとしてもここは三階だ。飛び降りたら最悪、死ぬこともあるだろう。
他に手立てはないだろうかと、藍時が必死に考えていると、扉の向こうからノックとともに、こちらを呼ぶ声が聞こえた。
「藍時~? そんなところにいても出口はここしかないよ。早く出てきなさい。もう、君は本当に手のかかる子だなぁ」
その声は優しく語りかけるようでありながら、少々上擦っていた。顔を見なくともわかる。今の陸は、蟀谷にたくさんの筋を浮き上がらせていることだろう。
(とにかく、今は助けを呼ばなくちゃ)
身体に巻き付けているボディバッグからスマホを取り出すと、「110」番にかけようとした。だが……
(ここへかけても、声が出ないから状況を詳しく説明することができない。それにたとえ警察が来てくれたとしても、ここは精神科だ。患者の俺がヒステリックを起こしてトイレに立て籠もったなんて医師から言われたら、ろくに話を聞かずに帰ってしまうかもしれない。それを成してしまうのが、この人の上手いところなんだ……)
過去にも、近隣住民から通報され、警察から話を聞かれたことがあった。その時も、陸はΩによるヒートが原因だといって、彼らを信じ込ませた。
もはや、自分はこの男の下に戻るしかないのだろうか。藍時は瞼を瞑り、偽りでも家族として接してくれた彼らを思い出した。
(秀一さん……純……ごめんなさい……)
それは自分を救い出してくれた彼らを信じることができなかっただけでなく、そんな二人の存在を忘れてしまっていることに対しての謝罪だった。もしも過去に、ヒナとして彼らと出会っていたのであれば、なぜその記憶を失くしてしまったのか。あれほど可愛い子どもと、大切に自分を扱ってくれた彼をなぜ……。
その答えは、この扉の向こうにいる男が握っていた。
「無駄だよ、藍時。君が帰るところなんてここしかない。それに私にはもう、扇とその子どもの居場所がわかっているんだ。君が逃げたら彼ら……いや、あの子どもはどうなるかな。低能なΩでも、そのくらいはわかるだろう?」
それは言ってみれば、ありきたりな脅し文句だった。藍時にとって我が子のように大切な純を、陸は人質にしたのだ。実際にそれを行ってしまえば、捕まるのは陸本人になるのだが、暴力による恐ろしさを知っている藍時に、それは聞き流せない脅しだった。
この時、何度目かのフラッシュが頭の中で焚かれ、愛憎に満ちた陸の声が蘇る。
『あの男とガキの居場所はわかっているんだ。藍時、君がまた私を裏切ると言うのなら、あの二人がどうなるか、わかるよな? まったく……私から逃げられると思うなよ』
藍時は思い出した。最後に落とされた台詞の、本当の意味を。
(俺は……俺は、あの時も二人に……ううん。二人を、陸から遠ざけようとして……)
だから当時、大怪我を負いつつも自分は逃げたのか。痛みに悶え、気を失い、動けない身体に鞭を打ち、地面を這いつくばって陸から逃れようとした。秀一と純に、伝えるために。
(だとしたら、二人と過ごした時間の記憶を失くしたのも……)
憶測だが、記憶の中から秀一と純を消すことで、彼らを守ろうとしたのかもしれない。これ以上、自分と関わることがないようにするために。彼らに危険が迫らないようにするために。
しかし、結局は見つかってしまった。自分を母だと信じ求めた、あの幼き子どもに。
(純……)
「藍時っ! ほら、早く出てこい……藍時ぃ!」
痺れを切らした陸が、ドン! ドン! と、外から扉を蹴り始めた。もしかしたら、鈍器のようなものを使っているのかもしれない。叩く音に交じり、扉の板が壊れていく音が聞こえた。
ここで捕まれば、きっとこれまで以上の暴力をふるわれるに違いない。
(一か八かだ)
意を決したように、藍時は便器の上にある窓枠に手をかけた。
トイレの扉は、たちまち壊されてしまった。空いた穴から腕を差し込み中の鍵を開けると、陸は引き攣った笑みを浮かべながら顔を出した。
「藍時ぃ…………えっ?」
突如、陸は驚きの声をあげた。目的の人物は、てっきり怯えて蹲っているものだと思っていたからだ。しかし予想に反して、彼の目の前には信じられない光景が広がっていた。
「な、何をしているんだ、藍時っ?」
藍時はいた。目の前に。だが、彼の身体はトイレの中にはなかった。
(うわ。高い……三階って思った以上に高さがあるんだな……)
藍時は外を見下ろしながら、引き攣るような笑みを浮かべた。そう、彼はトイレの窓から身体を出し、外に出ていた。今は落ちないように、窓枠に足をかけ、縁を掴んで自分の身体を支えている。
外にいる通行人からも気づかれたのか、「キャー!」と、どこかから悲鳴が上がった。それを耳にして、藍時ははっきりと、ある記憶を思い出した。
自分は一度、こうして高い場所から飛び降りている。ここではない、別のどこかで。鳥にでもなったかのような気持ちになって。その時も、下にいる人間の口から、悲鳴が上がっていた。
(そうだ。あれは「L’oiseau」の裏手にある外階段から落ちたんだ……)
つい最近、初めて足を踏み入れたと思っていたあの店に、藍時は一年以上も前に来ていたのだ。既視感があったのはそのためだ。あの頃はすべてに悲観し、すべてに絶望し、すべてがどうでもよくなり、死を選んだ。
だが、今は違った。これは死ぬための行動ではない。自分を認め、受け入れてくれた人間の下に帰るための手段だった。
さすがに、藍時のこの行動には陸も肝を冷やしたのか、こちらへ引き寄せようとジリジリと近づいた。
「藍時……さ、やめなさい。そんなところから落ちたら、無事では済まないよ? ああ、藍時。怒らないから、ね? 早くこっちに戻ってくるんだ。ほら、ほらぁ……いい子だからぁ!」
その叫びのような陸の声に、藍時は向かってにこっと笑みを浮かべた。そして自分の人差し指を右目の下に添えると、そのまま下瞼を裏返して真っ赤な舌を見せつけた。
陸はぎょっと目を丸くさせ、石化したように固まってしまった。
(今だ……!)
その隙をついて、藍時は窓から飛び降りた。
「藍時ぃぃぃ!」
陸の叫び声が一瞬で遠くなる。重力が一気に藍時の身体を下へ下へと押しつけた。
死まで覚悟した藍時。しかし想像をしていた衝撃はなく、代わりに大きな何かによってその身体は受け止められた。
「あー、びっくりした。まーた、雛鳥が落ちてきたのかと思ったよ」
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