【完結】ルームメイト〜僕と彼の関係〜

天白

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越えてはいけない境界線のその先は、メジャーだったのです。

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 中間テストも終わり、携帯ゲーム機で余暇をひっそりと楽しんでいた午後八時でした。

 急に部屋の中が煙たくなったので火事かと思い、皇君を置いて部屋からの脱出を試みたのです。フーッという、長い息が聞こえなければ、本気でエスケープしていたことでしょう。

 即座に振り返り、皇君スペースからゆらゆらと揺れる紫煙を見て、がっかり……もといがっくりしました。

 他の生徒か、もしくは寮長が入室した場合、どう言いわけするのでしょう?

「ケホケホ……す、皇君……煙いです」

「換気しなさい。それか、退室すればいいでしょう」

「吸わないという選択肢はないのですか」

「馬鹿ですか。吸いたいから吸っているんです」

 馬鹿ですか。だったら外で吸えばいいじゃないですか……あ、バレるか。むしろ、バレてしまえ。捕まってしまえ。猛省してこい。

「ケホッ……窓、開けますよ」

 も~、この人は石ですか。気遣いなんて皆無です。その様子すら見せませんでしたよ。僕が折れるしかないじゃないですか。

 少しだけ窓を開け、換気させてもらいました。うぅ~。

 まあ。実際、吸ってないとやってられないのかもしれませんが。いえね、さっきから皇君、自分のデスク上の高さ五センチはあろう書類の山を抱えているんですよ。おそらく、生徒会の仕事です。めずらしく部屋に持って帰ってこなしているんです。

 業務内容なんてのはよくわかりませんが、会長のお仕事が大変なんだってことはわかります。たまに教室で会う、副会長の七海君もボヤいていました。特に今は……

「文化祭もあと五日ですね。皇君のクラスの出し物ってなんでしたっけ?」

 どこの学校でも大抵は行われる、恒例行事――文化祭。これが今、生徒会を悩ませている種なのです。いや、種と言いますか……これがあるから他の仕事が後回しになって、残業ルートになってしまうというわけなのですが……。

 でもだからって。

「話しかけないでくれますか。気が散るどころかお前が手にするゲーム機を反対側に叩き折りたい気分になります」

「すいませんでした」

 それはなくね? 僕は急いでセーブし、ゲーム機を机の中へと片付けました。

 しかしそれでは僕が暇になります。

 ベッドへと寝そべり、他にやることもないなと腹筋を始めました。特に体脂肪が気になるわけではないのですが、ひょろひょろのままなのも男としてどうかと思った次第です。嘘です。ただ暇なだけです。

「ういっしょ、どっこいしょ……」

 う~ん。やっぱり腹筋とはキツイものですね。どうやったら割れるんですかね? 皇君のお腹、知ってますか? これがまたムカつくほどにキレーに割れてるんですよ。鉄バッドで叩いても平気なんじゃないかってほどに。あれ、どうやって鍛えてんの? 喧嘩? 喧嘩なの?

「いっちにっ(馬鹿かいちょっ)……さんしっ(アホかいちょっ)……ごろく「ガツン!」……痛いっ!?」

 何!? 何事!? 頭に何か飛んできましたよ!?

「いって~……?」

 ちょ……これ、さっき片付けた僕のゲーム機!! これ!? これが飛んできたの!? 原因分かったらさらにいてぇ!!

 当たったおでこを摩りながら、幸いにも傷ついていないゲーム機を再び机へと戻そうとベッドから降りると、皇君がこちらを睨んでいました。つか、てめぇか! 犯人は!!

「な、何です?」

「不快です」

「は?」

「奇声を上げながらみっともない動きを見せないでくれますか」

「みっともないって……腹筋です。鍛えるくらい、別にいいじゃないですか」

「必要ありません」

「そりゃ、皇君には必要ないかもしれないけど、僕には……」

「必要ありません」

「いや、だからあんたと違って……」

「カチ割りますよ」

「二度としません」

 誓ってしまいました……あ、体育の授業時は許されるよね?

「はあ……」

 それまで走らせていたペンを一端デスクの上に置くと、皇君は咥えていた煙草の火を手の平で揉み消し、吸殻を携帯灰皿の中に仕舞いました。え、それ熱くないの?

「慣れました」

 良い子の皆さんは、真似しないでね。

 それより、仕事はもう終わったんでしょうか? 皇君、書類を纏め始めました。

「後は書記と会計に回します。私の仕事は終わりました」

 なるほど。それでは、僕も心おきなくゲームを再開することができるわけですね。

 先ほど痛い思いをしたゲーム機を再びこの手にしました。喜びも一入です……いつか絶対に復讐してやるんだからな。

 電源をポチリ。

「ああ、忘れていました。お前のクラスの出し物は何でしたか?」

 ん? 珍しい。僕に質問ですか? てか、それさっき、僕が質問したことだよな? なに、その俺様姿勢。

 ムカつきましたが、ここで答えないと、このゲーム機の命がどうなるかわかりません。しぶしぶですが答えました。

「展示ですけど」

 ホントは模擬店志望だったんですけどね~。前回の期末テストのクラス平均、悪かったから叶いませんでしたけど。

 まあ、その分、文化祭中は監視役以外皆が回れますし、その監視役も一時間ごとの交替ですし、当日は存分に楽しめるのですけどね。

「そうですか……なら、ちょうどいいですね」

「へ?」

「お前、女になりなさい」

「は?」

 この会長。とうとう頭がイかれたんだと思いました。

 性別の壁を、そうそう越えられるわけが無いでしょうに。
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