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「スクフェス 想蔵祭」パイロット版
前編
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※こちらはJ庭52に向けて作成した同人誌「スクフェス 想蔵祭」(書き下ろし)のパイロット版になります。内容はこの「奥さま~」と拙作「ルームメイト 僕と彼の関係」のコラボ作品です。
side ~柳~
学園祭ラストシーズン!
転校してから初めての、そして僕にとっては最初で最後の想蔵祭が始まろうとしていた。
「それでね、僕のクラスはお好み焼き屋さんと、焼きそば屋さんを開くことになったの。僕は調理担当だから裏方なんだけど、接客の人達は猫耳のカチューシャをつけて、ええと……ごすろり? っていう服を着るんだって」
「パッと聞くだけでカオスな学園祭ですね」
夕食を食べながら、学園祭のクラスの出し物について旦那さまこと海さんへお話しすると、呆れたような顔で返される。ごすろりについて、よくわかっていない僕に海さんがスマホで検索画像を見せてくれた。わあ、黒が基調なのかな? 格好いいけれどそれだけじゃない、どこか可愛い感じの衣装だね。衣装と飲食物の内容を切り離して考えればどちらも素敵なんだけれど……これ、合うの? 今更抱く疑問に海さんが「だろ?」と目で同意を求めてくる。
でも、クラスのみんなはとっても乗り気だったし、意外と合うの、かも?
頭の中がぐるぐると混乱し始める僕に、海さんが。
「そのゴスロリは柳も着るのですか?」
と、質問する。僕はハヤシライスをスプーンでよそって口元へと運びながら、
「ううん。僕は調理をする係だから制服にエプロンだよ」
と、頬張った。う~ん! 三日前から煮込んでいたから、コクが出て味わい深くておいし~!
ほっぺに手を当ててニコニコする僕に対して、海さんは「つまらない」とがっかりした様子を見せながら、同じくハヤシライスを一口食べた。
美味しい? って聞くと、向かいに座る僕のほっぺを指ですりすりと擦る。えへへ。よかった。
「あ、でも猫耳はつけてねって言われてるの」
「人様の前ではしたない真似はやめなさい」
「え!?」
クラスのみんながやるのに!? た、確かに身長が伸びて身体も大きくなって、周りから格好いいねって言われるようになったから、ああいった可愛いものをつける歳じゃないのかも……。あれ? でも、修学旅行の時に葉月や真実と回ったテーマパークで一緒に買ったマスコットキャラのネズミ耳のカチューシャは、帰ってからも家の中でやりなさいって言われて一か月くらいつけていたのに……???
猫とネズミの違いかな?
「何はともあれ、当日が楽しみですね」
「うん!」
開催当日が待ち遠しい。でも、同じくらい準備している今が楽しいんだ。当初は受験生だから、大掛かりなことができないかもって言われていたんだけれど、青春は大いに謳歌するべきだって養護教諭の神田先生の一言で三年生の模擬店にも規制がなくなったんだよね。まさに鶴の一声。ありがとう、神田先生。
ただ一つだけ問題が。
「それでね、しばらくは下校が遅くなりそうだから、ご飯の用意なんだけれど……」
そこまで言うと、真意に気づいた海さんが頷いてみせる。
「ああ、それは仕方ありません。デリバリーでも頼みましょう。それか、時間に余裕のある時は私が作ってもいいでしょうね」
「海さんが?」
「簡単な物でよければ、ですけれど」
「ありがとう! 僕、海さんが作るご飯、大好き!」
お料理はずっと僕がやっているけれど、たまに海さんが作ってくれるご飯も美味しくて大好きなんだ。海さんは簡単だから誰でも作れるし、大したものじゃないって謙遜するけれど、僕が同じことをやっても同じ味にはならないもん。
わあ。帰ったら海さんのご飯が食べられるんだ~。ますます楽しみ~。
ルンルン気分でハヤシライスを頬張る僕。すると、海さんが。
「はあ。これだから天然は……」
「え? 何?」
「まあ、食事って意味では変わらないか」
「海さん? 何を言って……って、ちょっと!? 僕、まだご飯食べてる……海さん!?」
食事中に突然席を外したかと思えば、僕を抱き上げてどこかへ向かう。
その後、残りのハヤシライスを前にする頃には、ルーはすっかり冷たくなり、ご飯も硬くなっていた。
side ~柳~
学園祭ラストシーズン!
転校してから初めての、そして僕にとっては最初で最後の想蔵祭が始まろうとしていた。
「それでね、僕のクラスはお好み焼き屋さんと、焼きそば屋さんを開くことになったの。僕は調理担当だから裏方なんだけど、接客の人達は猫耳のカチューシャをつけて、ええと……ごすろり? っていう服を着るんだって」
「パッと聞くだけでカオスな学園祭ですね」
夕食を食べながら、学園祭のクラスの出し物について旦那さまこと海さんへお話しすると、呆れたような顔で返される。ごすろりについて、よくわかっていない僕に海さんがスマホで検索画像を見せてくれた。わあ、黒が基調なのかな? 格好いいけれどそれだけじゃない、どこか可愛い感じの衣装だね。衣装と飲食物の内容を切り離して考えればどちらも素敵なんだけれど……これ、合うの? 今更抱く疑問に海さんが「だろ?」と目で同意を求めてくる。
でも、クラスのみんなはとっても乗り気だったし、意外と合うの、かも?
頭の中がぐるぐると混乱し始める僕に、海さんが。
「そのゴスロリは柳も着るのですか?」
と、質問する。僕はハヤシライスをスプーンでよそって口元へと運びながら、
「ううん。僕は調理をする係だから制服にエプロンだよ」
と、頬張った。う~ん! 三日前から煮込んでいたから、コクが出て味わい深くておいし~!
ほっぺに手を当ててニコニコする僕に対して、海さんは「つまらない」とがっかりした様子を見せながら、同じくハヤシライスを一口食べた。
美味しい? って聞くと、向かいに座る僕のほっぺを指ですりすりと擦る。えへへ。よかった。
「あ、でも猫耳はつけてねって言われてるの」
「人様の前ではしたない真似はやめなさい」
「え!?」
クラスのみんながやるのに!? た、確かに身長が伸びて身体も大きくなって、周りから格好いいねって言われるようになったから、ああいった可愛いものをつける歳じゃないのかも……。あれ? でも、修学旅行の時に葉月や真実と回ったテーマパークで一緒に買ったマスコットキャラのネズミ耳のカチューシャは、帰ってからも家の中でやりなさいって言われて一か月くらいつけていたのに……???
猫とネズミの違いかな?
「何はともあれ、当日が楽しみですね」
「うん!」
開催当日が待ち遠しい。でも、同じくらい準備している今が楽しいんだ。当初は受験生だから、大掛かりなことができないかもって言われていたんだけれど、青春は大いに謳歌するべきだって養護教諭の神田先生の一言で三年生の模擬店にも規制がなくなったんだよね。まさに鶴の一声。ありがとう、神田先生。
ただ一つだけ問題が。
「それでね、しばらくは下校が遅くなりそうだから、ご飯の用意なんだけれど……」
そこまで言うと、真意に気づいた海さんが頷いてみせる。
「ああ、それは仕方ありません。デリバリーでも頼みましょう。それか、時間に余裕のある時は私が作ってもいいでしょうね」
「海さんが?」
「簡単な物でよければ、ですけれど」
「ありがとう! 僕、海さんが作るご飯、大好き!」
お料理はずっと僕がやっているけれど、たまに海さんが作ってくれるご飯も美味しくて大好きなんだ。海さんは簡単だから誰でも作れるし、大したものじゃないって謙遜するけれど、僕が同じことをやっても同じ味にはならないもん。
わあ。帰ったら海さんのご飯が食べられるんだ~。ますます楽しみ~。
ルンルン気分でハヤシライスを頬張る僕。すると、海さんが。
「はあ。これだから天然は……」
「え? 何?」
「まあ、食事って意味では変わらないか」
「海さん? 何を言って……って、ちょっと!? 僕、まだご飯食べてる……海さん!?」
食事中に突然席を外したかと思えば、僕を抱き上げてどこかへ向かう。
その後、残りのハヤシライスを前にする頃には、ルーはすっかり冷たくなり、ご飯も硬くなっていた。
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