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第一章
シンという男 2
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「……何だろう?」
顔を洗っていると、透明だった川に赤い染料のようなものが混ざっていることに気がついた。
(川魚の血かな?)
不思議に思いつつも、レイヴンは手拭いで顔を拭く。そして清拭で多少なりともさっぱりしたその身に下着をつけている時だった。
バシャン! と一際大きな水飛沫の上がる音が、自分のいる場所よりもさらに上の方から聞こえたのだ。
まさか村人がここまでやってきたのかと、レイヴンは即座に音のする方へ首を動かした。するとそこには、川から迫り上がった岩と岩の間に挟まるように、大きく黒い何かがあった。
(熊……じゃない。あれは……)
山で育ったおかげか、視力の良いレイヴンはそれが何であるのかがわかるのと同時に、自身の上着を羽織りつつ、すぐさま岩の下へ向かって駆け出した。
岸辺に沿って走ること十数秒。岩に最も近い岸辺でもう一度、その黒い物体を確認する。
(やっぱり……!)
確信が確証へ変わるのと同時に、レイヴンは躊躇うことなく川の中へと飛び込んだ。上流とはいえレイヴンの膝下ほどの深さのそこは流れも緩やかで溺れる心配はないものの、凍てつくような冷たさを持っている。そのような中へ戸惑うことなく入る人間は、なかなかいるものではない。
だがそんなことを気にしている猶予は、少なくともこの時のレイヴンにはなかった。
「大丈夫ですかっ!?」
レイヴンはそれの一部を持ち上げながら、大きな声で叫んだ。レイヴンの持ち上げるもの……それは人の顔だった。
岩と岩の間に挟まっていたものは、人間だったのだ。
「男の、人……」
瞼を閉じ、気を失っている様子のその人間は背が高く、明らかに若い男性の顔立ちをしていた。
「村の人……じゃない……?」
細見すると、それは初めて目にする顔だった。見知った人間でないことはもちろん、瞼を閉じていてもわかる彫の深い目元に高い鼻は、少なくともこの村の人間にはない特徴だ。
また、茶や黒色がこの村の主である髪色から生まれることはない真っ赤な髪色が、村の人間でないことを決定づけていた。
「きれい……」
見たこともない顔立ちとその髪の色に、レイヴンの口から思わず感嘆の声が漏れた。水面に揺れる男の髪が、まるで踊る炎のように美しいと感じたのだ。
だが、赤く揺らめくものは男の髪だけではなかった。
「う、そ……」
男の身体からは大量の赤い液体が、止め処なく溢れていた。先ほど、レイヴンが顔を洗っていた時に気づいたそれは、人間の血液だったのだ。
顔を洗っていると、透明だった川に赤い染料のようなものが混ざっていることに気がついた。
(川魚の血かな?)
不思議に思いつつも、レイヴンは手拭いで顔を拭く。そして清拭で多少なりともさっぱりしたその身に下着をつけている時だった。
バシャン! と一際大きな水飛沫の上がる音が、自分のいる場所よりもさらに上の方から聞こえたのだ。
まさか村人がここまでやってきたのかと、レイヴンは即座に音のする方へ首を動かした。するとそこには、川から迫り上がった岩と岩の間に挟まるように、大きく黒い何かがあった。
(熊……じゃない。あれは……)
山で育ったおかげか、視力の良いレイヴンはそれが何であるのかがわかるのと同時に、自身の上着を羽織りつつ、すぐさま岩の下へ向かって駆け出した。
岸辺に沿って走ること十数秒。岩に最も近い岸辺でもう一度、その黒い物体を確認する。
(やっぱり……!)
確信が確証へ変わるのと同時に、レイヴンは躊躇うことなく川の中へと飛び込んだ。上流とはいえレイヴンの膝下ほどの深さのそこは流れも緩やかで溺れる心配はないものの、凍てつくような冷たさを持っている。そのような中へ戸惑うことなく入る人間は、なかなかいるものではない。
だがそんなことを気にしている猶予は、少なくともこの時のレイヴンにはなかった。
「大丈夫ですかっ!?」
レイヴンはそれの一部を持ち上げながら、大きな声で叫んだ。レイヴンの持ち上げるもの……それは人の顔だった。
岩と岩の間に挟まっていたものは、人間だったのだ。
「男の、人……」
瞼を閉じ、気を失っている様子のその人間は背が高く、明らかに若い男性の顔立ちをしていた。
「村の人……じゃない……?」
細見すると、それは初めて目にする顔だった。見知った人間でないことはもちろん、瞼を閉じていてもわかる彫の深い目元に高い鼻は、少なくともこの村の人間にはない特徴だ。
また、茶や黒色がこの村の主である髪色から生まれることはない真っ赤な髪色が、村の人間でないことを決定づけていた。
「きれい……」
見たこともない顔立ちとその髪の色に、レイヴンの口から思わず感嘆の声が漏れた。水面に揺れる男の髪が、まるで踊る炎のように美しいと感じたのだ。
だが、赤く揺らめくものは男の髪だけではなかった。
「う、そ……」
男の身体からは大量の赤い液体が、止め処なく溢れていた。先ほど、レイヴンが顔を洗っていた時に気づいたそれは、人間の血液だったのだ。
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