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第一章
シンという男 4
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一瞬、何が起こったのかがわからず、思考が停止するレイヴン。パチパチと瞬きを繰り返すものの、口腔にぬるりとした何かが侵入したことで、それが何であるかを理解した。
(これ……し、舌……? 入ってきてる……!?)
男はレイヴンにキスをしたかと思えば、そのまま自身の舌をレイヴンの口の中へと挿し込んだのだ。
あまりに唐突で、正気の沙汰とは思えない男の行動に、レイヴンには戸惑うものの抵抗はできなかった。決して強引なのではない。だが、男の動きはまるで、そうすることが当然とでもいうように自然だったのだ。
「んっ……んんぅ……!」
互いに名も知らない、初対面の人間のはずだった。それにも関わらず、男はレイヴンをよく知っているとばかりに呼吸を合わせ、彼の唇を貪った。
「ん……んぁ……や……っ、んぅ……」
相手は瀕死の男だ。事実、この行為は力づくでも、無理やりでもなかった。しかし戸惑いのあまりに抵抗ができすにいるレイヴンは、どうすればいいのかわからずただ混乱していた。
そうこうしているうちに男は満足したのか、銀糸を引きながらゆっくりとレイヴンから唇を離した。
「あー……満足。ごちそうさま」
そう言って、男は堪能したとばかりに微笑んだ。下唇を舐める様が何とも艶めかしく映った。
対して、レイヴンは乱れる呼吸を必死で抑え込みながら、
「はあっ……はあ……あ、あ、あのっ……はあっ……な、な、なっ……!?」
と、真っ赤になる自身の困惑をそのまま目の前の男にぶつけた。
なぜ、このようなことをするのか? そう尋ねたいだけなのに、上手く言葉にすることができなかった。長いこと己の感情を抑え込むしかなかった人間だ。それだけ人と話すことに慣れていないのだ。
だが、男にはレイヴンが何を言いたいのかがわかったらしい。特に悪びれた様子もなく、あっけらかんとした調子で言葉だけの謝罪を口にした。
「ああ、悪い。目の前に天使が現れたのかと思ったら、つい……」
「へっ……?」
「ん? ここ、天国なんだろう?」
あまりにも堂々とした様子で尋ねる男に、レイヴンは拍子抜けしてしまった。
天使とはいったい何だ? いや、たとえ天使だとしても、いきなり人の唇を奪うことが村の外の常識なのか? レイヴンの脳内はさらに混乱を増した。
「違う?」
男が再び、レイヴンへと問いかける。罵倒や叱責以外の言葉は久々に耳にした。また、男の言葉かけは酷く優しげで、まるで大人が子供へ尋ねかけるような安心感を覚えた。
レイヴンは首を振った。
「は、はい。ここは……天国、というところではなく……」
(村の名前は言っちゃ駄目だよね……)
一瞬の間を置いた後、レイヴンは今いる場所を自分一人が暮らしている山だと答えた。
「ふうん? 山、ねぇ……」
男は特に訝しむ様子もなく呟いた。
「つまり、オレはまだ生きているということか」
「あ……はい。でも……」
瀕死であることに変わりはない。無我夢中で助けたものの、レイヴンはこれからについて思い悩んだ。
(これ……し、舌……? 入ってきてる……!?)
男はレイヴンにキスをしたかと思えば、そのまま自身の舌をレイヴンの口の中へと挿し込んだのだ。
あまりに唐突で、正気の沙汰とは思えない男の行動に、レイヴンには戸惑うものの抵抗はできなかった。決して強引なのではない。だが、男の動きはまるで、そうすることが当然とでもいうように自然だったのだ。
「んっ……んんぅ……!」
互いに名も知らない、初対面の人間のはずだった。それにも関わらず、男はレイヴンをよく知っているとばかりに呼吸を合わせ、彼の唇を貪った。
「ん……んぁ……や……っ、んぅ……」
相手は瀕死の男だ。事実、この行為は力づくでも、無理やりでもなかった。しかし戸惑いのあまりに抵抗ができすにいるレイヴンは、どうすればいいのかわからずただ混乱していた。
そうこうしているうちに男は満足したのか、銀糸を引きながらゆっくりとレイヴンから唇を離した。
「あー……満足。ごちそうさま」
そう言って、男は堪能したとばかりに微笑んだ。下唇を舐める様が何とも艶めかしく映った。
対して、レイヴンは乱れる呼吸を必死で抑え込みながら、
「はあっ……はあ……あ、あ、あのっ……はあっ……な、な、なっ……!?」
と、真っ赤になる自身の困惑をそのまま目の前の男にぶつけた。
なぜ、このようなことをするのか? そう尋ねたいだけなのに、上手く言葉にすることができなかった。長いこと己の感情を抑え込むしかなかった人間だ。それだけ人と話すことに慣れていないのだ。
だが、男にはレイヴンが何を言いたいのかがわかったらしい。特に悪びれた様子もなく、あっけらかんとした調子で言葉だけの謝罪を口にした。
「ああ、悪い。目の前に天使が現れたのかと思ったら、つい……」
「へっ……?」
「ん? ここ、天国なんだろう?」
あまりにも堂々とした様子で尋ねる男に、レイヴンは拍子抜けしてしまった。
天使とはいったい何だ? いや、たとえ天使だとしても、いきなり人の唇を奪うことが村の外の常識なのか? レイヴンの脳内はさらに混乱を増した。
「違う?」
男が再び、レイヴンへと問いかける。罵倒や叱責以外の言葉は久々に耳にした。また、男の言葉かけは酷く優しげで、まるで大人が子供へ尋ねかけるような安心感を覚えた。
レイヴンは首を振った。
「は、はい。ここは……天国、というところではなく……」
(村の名前は言っちゃ駄目だよね……)
一瞬の間を置いた後、レイヴンは今いる場所を自分一人が暮らしている山だと答えた。
「ふうん? 山、ねぇ……」
男は特に訝しむ様子もなく呟いた。
「つまり、オレはまだ生きているということか」
「あ……はい。でも……」
瀕死であることに変わりはない。無我夢中で助けたものの、レイヴンはこれからについて思い悩んだ。
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