「んじゃ、お望み通りにしてやるよ」〜俺様最強チートが不憫な転生美青年をとにかく溺愛するお話(モブありver)

天白

文字の大きさ
16 / 68
第一章

聖なる力の秘密 1

しおりを挟む
 翌朝ー


 暖かみのある白い光を浴びて、シンは深い眠りから目を覚ました。

 辺りを確認するように視線だけを動かすと、今にも崩れそうな歪さのある天井がまず目に入った。木材でできたそれはあちこちが腐っており、その僅かな隙間から陽光が射し込んでいることがわかった。

 続いて木材と畳を合わせて作られたベッドから上体を起こすと、隣りにある滑り出しの窓を押し開いた。木材のそれからはパタパタと強い水滴音が落ち、縁を鳴らした。

 サアッと乾いた風が吹き込んだ。湿った土の匂いが鼻孔を擽り、雨が降ったことを知らせていた。

「雨男だな……オレは」

 独り言を口にしながら視線を反対側へやると、一人の青年がベッド横に置かれた椅子に座って眠っていた。首を傾け静かな寝息を立てる青年は実に無防備で、シンの目には子供のように幼く映った。

 そして視線をさらに下へ落とすと、青年は寝ながらも、シンの手を握っていた。

「……ん」

 吹き込む風が寒いのか、青年の眉間に皺が寄る。シンは自身にかけられた布を一枚捲ると、青年の身体に覆わせた。

「なかなかいい城だ」

 シンは小屋の中を見渡しながら呟いた。人ひとりであれば充分に過ごすことのできる広さのそこは、あまり物が見当たらず、一言で言えば殺風景。さらに中央には、自分が着ていたマントや衣服が、部屋の角と角を繋いで取り付けられた紐に被せる形で干されており、全体的に暗い印象を与えていた。

 シンは自身の首から下を見下ろした。着ていた衣服の代わりに、布地一枚で作られたと思しき継ぎ接ぎの上着が今の自分を覆っていた。しかしサイズが合っていない。身体の前で重ね合わせて腰紐で縛るタイプのそれは、肩幅に余裕がなく、袖の長さも足りていない。不格好であることは明白だった。

「さすがに下は脱がせられなかったか」

 残りの布を捲って下肢を確認すると、元々着ていた下衣はそのままになっており、代わりに、眠る青年の衣服だろうものが何枚も重ねられていた。

 それでも履いていたブーツは脱がせてくれたらしい。小屋の扉近くに揃えてあるのが見えた。シンの脚の形にピッタリと合わせ作られたそれを剥がすのは、さぞ困難だったことだろうと、シンは想像しながらクククと笑った。

 もう一度青年の顔を見て、シンは昨日の出来事を振り返った。

『……レイヴン』

『ん?』

『僕の名前は……レイヴンです』

 濡羽色のような長い黒髪を持つ青年は、律儀に自分の名を名乗ったかと思うと、シンの手を取った。

『小屋は近くです。そこまで……頑張って』

 それからレイヴンは、自身が住んでいるという小屋までシンを運んだ。

 レイヴンの支えもありつつ、何とか屋内へと入り込んだシンは、そこで力尽きたように気を失った。

 覚えているのはそこまでだ。

「…………ぅ、あれ……?」

「おはよう。レイヴン」

 シンは隣で目覚めた青年ーーレイヴンへ朝の挨拶を口にした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...