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第一章
んじゃ、お望み通りにしてやるよ 13
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ーーーー…
「ぅ……」
自分の声で気づいたのか、レイヴンは目を覚ました。パチパチと瞬きを繰り返し、彼は周囲を見渡した。
「……こ、こは?」
見慣れない天井。いや、それよりも酷く声が掠れている。喉奥が焼けるような痛みを帯び、それ以上は言葉にできなかった。
身体も重い。これが鉛のようなものかと、レイヴンは瞼を閉じながらぎこちない動作で寝返りを打ち、雲の上のようにふかふかと柔らかい地の上で両手をつき、身体を起こした。
臀部に何かが挿入されているような違和を感じつつも、額に手を当てる。頭痛が酷い。頭が割れるような痛みを感じつつ、レイヴンは現状を把握しようと自身の記憶を掘り起こした。
(確か……シンさんと一緒に割れた地面の底へ……でも、こんなに痛みがあるということは、死んでない……? それに、ここはいったい……)
ここでふと、誰かに見られているような視線を感じ、顔を右側へと動かした。そこには、蛙のようにギョロリとした大きな金色の目が六つ、こちらを睨むようにして横に並んでいたのだ。
「わっ!?」
驚いたレイヴンが声を上げ、思わずその場にあった布地を引っ張り自身へと巻き付けた。無意識ではあるがそこでようやく、今の自分が裸であることに気がついた。
いったい何がどうなっているのかと、考える為に頭を使おうとすると身体の痛みがぶり返し、その場で蹲る。すると、耳元で複数のしゃがれた声が飛び交った。
「おきた」
「おきた。おきた」
「イヴ、おきた。みず、やらなくちゃ」
「エサは? エサは?」
「エサ、だす。みず、みずも」
声の主はこちらを睨んでいた金色の目を持つ彼らだった。結膜と角膜の境目がない彼らがいったい何者なのか、現状を把握する為にレイヴンはそろりと顔を動かし、彼らを観察した。
彼らは見たこともない人種だった。いや、人のような四肢はあるものの、彼らを人と形容していいのかもわからない。それほど特徴のある容姿だったのだ。
つるりと半円を描くような頭部に長く尖った二つの耳、顎はしゃくれて牙が剥き出しており、鼻も大きな鷲鼻だ。加えて子供ほどの大きさの頭が胸よりも前に出ており、猫背気味の身体はすべてが深い緑色。背は三人とも一様に低く、レイヴンの腰ほどの高さだろう。平たい胸の下は腹がぽっこりと出ており、服という服は纏っておらず、局部だけを隠すように腰回りに薄い布地を巻いている。
この時、レイヴンが気づいたことがもう一つあった。はじめ、彼らの目だけが見えていたのは、レイヴン自身が彼らの顔よりも上にいることが原因だった。
(これ、地面じゃない……ベッドだ……)
彼らはベッドの縁に手を乗せ、レイヴンを見つめていたらしい。いつからかはわからない。危害を加えるつもりもないのだろう。だとしたらなぜ、自分を観察する必要がある?
触れただけで上質だとわかるようななめらかな質感のシーツが巻かれているベッドに感心しつつ、レイヴンは緑色の彼らに声をかけようと、恐る恐る口を開いた。
「あ……あの……」
「ああ、よかった。ちゃんと目覚めたな。偉い、偉い」
しかし返事は意外なところから飛んできた。彼らのいる反対、レイヴンから見て左側の方からだった。レイヴンが首を動かすと、そこには死なないで欲しいと願った人間の姿があった。
「シンさん……!」
「おはよ、レイヴン。ヌードを見るのは二度目だな」
横たわりつつも、相変わらず軽口を叩くシンにレイヴンは瞳を潤ませた。ああ、よかった。本当に生きていると、心の底から喜んだ。
そのシンもレイヴンと同じく裸だった。状況から察するに、それまで二人で並んで寝ていたようだ。自然と下肢の方に視線が滑るも、彼の臍が見えたところで慌てて顔を背けた。
そして自身が奪ってしまっただろうシーツを戻しつつ、レイヴンはシンヘ質問する。
「し……シン、さん……あの、ここは? それに、この方達は……いったい……」
すると、シンの反対側からわらわらと、緑色の彼らが遠慮なく声をかけた。
「イヴ、おきた。エサ、エサ」
「エサ、なにたべる? なに? なに?」
「みず、みず」
顔は怖いが、言葉や動きに子供のような無邪気さが窺えた。彼らとシンは知り合いなのか? レイヴンのその疑問には、彼らの方から端的に明かされた。
「「「まおーさま」」」
彼らは声を揃えてレイヴンの、その向こう側にいるシンに対してそう言った。
「え……?」
レイヴンは耳にした名称に目を見開きつつ、ポツリと復唱した。
「ま…………魔、王……さま?」
かつての記憶が蘇る。魔王とは、魔界と呼ばれる世界を統べる王のことではなかったか、と。その魔界は、レイヴンがかつて聖女として倒してきた魔物達が蔓延る世界のことではなかったか、と。
レイヴンの額から、一滴の汗が頬を滑って滴り落ちた。頭が酷く痛み、身体はそれ以上動かなかった。
そんなレイヴンを目にしてシンはほくそ笑み、起き上がりつつも彼の身体を抱き寄せると、耳元で楽しそうに囁いた。
「我が城へようこそ……愛しいレイヴン」
第一章・終
「ぅ……」
自分の声で気づいたのか、レイヴンは目を覚ました。パチパチと瞬きを繰り返し、彼は周囲を見渡した。
「……こ、こは?」
見慣れない天井。いや、それよりも酷く声が掠れている。喉奥が焼けるような痛みを帯び、それ以上は言葉にできなかった。
身体も重い。これが鉛のようなものかと、レイヴンは瞼を閉じながらぎこちない動作で寝返りを打ち、雲の上のようにふかふかと柔らかい地の上で両手をつき、身体を起こした。
臀部に何かが挿入されているような違和を感じつつも、額に手を当てる。頭痛が酷い。頭が割れるような痛みを感じつつ、レイヴンは現状を把握しようと自身の記憶を掘り起こした。
(確か……シンさんと一緒に割れた地面の底へ……でも、こんなに痛みがあるということは、死んでない……? それに、ここはいったい……)
ここでふと、誰かに見られているような視線を感じ、顔を右側へと動かした。そこには、蛙のようにギョロリとした大きな金色の目が六つ、こちらを睨むようにして横に並んでいたのだ。
「わっ!?」
驚いたレイヴンが声を上げ、思わずその場にあった布地を引っ張り自身へと巻き付けた。無意識ではあるがそこでようやく、今の自分が裸であることに気がついた。
いったい何がどうなっているのかと、考える為に頭を使おうとすると身体の痛みがぶり返し、その場で蹲る。すると、耳元で複数のしゃがれた声が飛び交った。
「おきた」
「おきた。おきた」
「イヴ、おきた。みず、やらなくちゃ」
「エサは? エサは?」
「エサ、だす。みず、みずも」
声の主はこちらを睨んでいた金色の目を持つ彼らだった。結膜と角膜の境目がない彼らがいったい何者なのか、現状を把握する為にレイヴンはそろりと顔を動かし、彼らを観察した。
彼らは見たこともない人種だった。いや、人のような四肢はあるものの、彼らを人と形容していいのかもわからない。それほど特徴のある容姿だったのだ。
つるりと半円を描くような頭部に長く尖った二つの耳、顎はしゃくれて牙が剥き出しており、鼻も大きな鷲鼻だ。加えて子供ほどの大きさの頭が胸よりも前に出ており、猫背気味の身体はすべてが深い緑色。背は三人とも一様に低く、レイヴンの腰ほどの高さだろう。平たい胸の下は腹がぽっこりと出ており、服という服は纏っておらず、局部だけを隠すように腰回りに薄い布地を巻いている。
この時、レイヴンが気づいたことがもう一つあった。はじめ、彼らの目だけが見えていたのは、レイヴン自身が彼らの顔よりも上にいることが原因だった。
(これ、地面じゃない……ベッドだ……)
彼らはベッドの縁に手を乗せ、レイヴンを見つめていたらしい。いつからかはわからない。危害を加えるつもりもないのだろう。だとしたらなぜ、自分を観察する必要がある?
触れただけで上質だとわかるようななめらかな質感のシーツが巻かれているベッドに感心しつつ、レイヴンは緑色の彼らに声をかけようと、恐る恐る口を開いた。
「あ……あの……」
「ああ、よかった。ちゃんと目覚めたな。偉い、偉い」
しかし返事は意外なところから飛んできた。彼らのいる反対、レイヴンから見て左側の方からだった。レイヴンが首を動かすと、そこには死なないで欲しいと願った人間の姿があった。
「シンさん……!」
「おはよ、レイヴン。ヌードを見るのは二度目だな」
横たわりつつも、相変わらず軽口を叩くシンにレイヴンは瞳を潤ませた。ああ、よかった。本当に生きていると、心の底から喜んだ。
そのシンもレイヴンと同じく裸だった。状況から察するに、それまで二人で並んで寝ていたようだ。自然と下肢の方に視線が滑るも、彼の臍が見えたところで慌てて顔を背けた。
そして自身が奪ってしまっただろうシーツを戻しつつ、レイヴンはシンヘ質問する。
「し……シン、さん……あの、ここは? それに、この方達は……いったい……」
すると、シンの反対側からわらわらと、緑色の彼らが遠慮なく声をかけた。
「イヴ、おきた。エサ、エサ」
「エサ、なにたべる? なに? なに?」
「みず、みず」
顔は怖いが、言葉や動きに子供のような無邪気さが窺えた。彼らとシンは知り合いなのか? レイヴンのその疑問には、彼らの方から端的に明かされた。
「「「まおーさま」」」
彼らは声を揃えてレイヴンの、その向こう側にいるシンに対してそう言った。
「え……?」
レイヴンは耳にした名称に目を見開きつつ、ポツリと復唱した。
「ま…………魔、王……さま?」
かつての記憶が蘇る。魔王とは、魔界と呼ばれる世界を統べる王のことではなかったか、と。その魔界は、レイヴンがかつて聖女として倒してきた魔物達が蔓延る世界のことではなかったか、と。
レイヴンの額から、一滴の汗が頬を滑って滴り落ちた。頭が酷く痛み、身体はそれ以上動かなかった。
そんなレイヴンを目にしてシンはほくそ笑み、起き上がりつつも彼の身体を抱き寄せると、耳元で楽しそうに囁いた。
「我が城へようこそ……愛しいレイヴン」
第一章・終
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