最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

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乙女ゲームの王子様

怒らせてはいけない家族

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 ザワザワと人混みが続く、王都の大通り。
 正門を真っ直ぐに少し進んだ其の先に、無骨な外観をした大きな建物が冒険者ギルドと呼ばれる冒険者の集まる場所。扉を開けると屈強な男たちが犇めき合い、暑苦しさと息苦しさを感じる。そんなギルドの中で一人、のんびりとテーブルでお菓子を食べているローブを纏った男の側へと、冒険者ギルドのギルド長が頭を下げてきた。

「ルシアン、頼む!この依頼直ぐに出来ねーか?」
「んー?ああ、石系のゴーレムかぁ~。五体って多いね、何かあったの~?」
「急に捻じ込まれて困ってるんだよ、何でも新しい採掘場を開拓したら出てきたらしくてな?ゴーレムが塞いでてどうにも出来ないらしいんだ。打撃系の上位ランクの冒険者はフローライト領でレベリングしてるのは常識なのに、わざわざ王都のギルドに持ってくるんだ。いい迷惑だっての」
「王都のギルドは初心者育成に力を入れているって報告してるのにね~?打撃系を鍛えるならうちの領地の黒の森が一番だもんね~」

 王都のギルド長に手渡された一枚の依頼書を見ると、その場所に目が留まる。そして納得してしまった。どうして此処にいきなり捻じ込まれたのか。

「ごめんねー、ギルド長ー」
「ん?どうした?」
「これ、僕は受けれないかな?」
「は!?ルシアンが受けなきゃ誰が受けるんだよ!」
「えー?しらなーい」

 ニコニコと笑顔を浮かべていると、依頼書を奪われてしまう。もう一度依頼書を確認しなおしたギルド長の顔色が、一瞬にして真っ青に変化した。
 依頼の内容はおかしくない、キチンと不備無しに書かれているのに、その依頼を受けられないのは、その依頼先の討伐地にあった。

「ごめんね~?ギルド長」
「全然悪いと思ってねぇだろう?ティファーナそっくりの笑い方しやがって…っ」
「だって母親だから仕方無いよね?なにー?ギルド長母様にも虐められてたのー?忘れられない人って奴じゃないんだよね~?」
「それこそ止めてくれ!お前らの父親の辺境侯に殺されっから!」

 僕の言葉に鳥肌が立ったのか、ごっつい自分の両腕を擦って身体を温めているけど、失礼だよね?父様は思っているって口に出してないなら殺すまではしないと思うんだよね~、多分。
 ずっと腕を擦っているギルド長に生温い瞳を向けつつも、手元に取り返した依頼書を眺めてみた。討伐地『メルギフト』勿論、フローライト一族を『狂戦士』呼ばわりしたメルギフト宰相の治める領地。

(此処の特産は鉱山から出る鉄鉱石だよねぇ~)

 この土地の鉱山は他の鉱山と比べると、品質は中級といったところ。家庭用のちょっといいお鍋とかの日用品や、初級から中級の冒険者にとっては主要装備にも使えるちょっといい鉄鉱石。
 身の丈にあった装備というものは絶対に必要で、そういう物を加工する鍛冶屋も職人だって育てる為に必要なものだ。その最適な鉱山の新しい採取地にゴーレムが五体も出た。

「う~ん、暫くは仕事は出来ないかもねぇ…」
「それが一番困るんだよ!育成に力入れてるって言ってんだろ!」
「だぁって~、僕の所為じゃないし~?」

(そっかぁ…、これじゃ暫くは王都の物価は上がる一方だね。品不足にもなるよね)

 王都が品不足になると、物価が高くなるのは常識。フローライト領は魔獣や魔物の素材に魔石、鉱山は一応有るけど高価なミスリルにオリハルコンに金と銀。鉄鉱石が出ない土地なのは、魔物の強さも関係しているんだろうか?
 自領の品物を卸すにしても、鉱物が高価なら値段だって上がるのは当然。メルギフトよりも品質の良い物を出してしまうと、前の品質には戻れなくなる。

(自分で自分の首を絞めてるんだよねぇ、馬鹿なのかな?)

「あ、そうか~。何でリアン兄さんが僕達だけじゃなくて、フローライト領出身者と活動したい冒険者って付け加えたんだろって思ってたら。そうだよね、無理だよね」
「なにがだよ」
「この依頼、どうするの?ゴーレムって石だとは思うけど、打撃系の冒険者ってメインの活動場所はフローライト領だよ?」
「!?」
「あ、今気がついたって顔だ」
「いや、待て!何だその、フローライト領出身者と活動したい冒険者ってのは!?其処までの規制はグリンディアは一度もやってなかったぞ!?」
「うん、だって指示はリアン兄さんだもの」

 にっこりと笑みを浮かべて言い切ると、ギルド長が床に手を着いて項垂れた。これから極貧になって領主としての評価は最悪にもなる宰相のことは知らないけど、ギルド長はちょーっと可哀想かな。まぁ、お城の騎士団と、低ランクの冒険者を十人単位で派遣すればいけるいける。宰相の信頼と懐が痛むだけだろうしね。

(今の宰相さんは、いい加減引退してもいい年齢だもんね~。うちの祖父様だって父様に領主を任してるんだから、さっさと引退すればいいのに)

「何だよルシアン、依頼は受けてくれるのか?」
「うん、フローライト領の隣の国にね。ちょっと友達と約束してたのがあったんだぁ~」
「フローライト領の隣って、魔族の国か」

 ギルド長に突撃されながらも食べていたお菓子の最後の一欠けらを口へと放り込み、メルギフトではない依頼書を手にとって、ウキウキと楽しげに受付へと向かって歩き出した。

(魔族の国に、召喚術を使える友達が待ってるのは内緒だけどね)

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