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花の朔祭編
其の九
しおりを挟む「早くしろ、あの執事達が帰ってくるだろう!」
「エアベル様も手伝って下さいよ!」
「そんな小さな令嬢一人持てないのか!?」
「無能は放って置きなさいエアレズ」
「母上…」
馬車の中でふんぞり返っているのは、アイクロメア王国の側妃と元第一王子ですね。国王陛下には何て言ってお仕置きをしましょうか…。スティヒ宰相は忙しいのは分かってますけど、コレは警備が手抜きなのか何なのか。
アイクロメア王国の第一側妃クリステラ様、昔はキラキラと輝くストロベリーブロンドの髪と、空色の瞳の美しく天真爛漫な方だと評判でした。子爵令嬢で貴族としての身分は低いのに、王太子である現国王陛下に見初められたと、物語にもなっている方ですが。
(王太子妃としての礼儀がまるでなく、王妃教育も放棄して逃げ出した為に側妃どまりになったんですよね…。王太子妃候補には、マリアーナ様も名前を連ねていたそうですが、正式に王太子妃として婚約者にならなくて良かったと笑ってらしたのが良くわかります)
「所詮は物語という事ですね」
「子供は可愛いのでしょう、王太子になったではありませんか。今では元が着きますがね」
「よく反乱が起きませんよね」
「それが、アイクロメア王国の不思議なところですね」
(そもそも、エアレズはどこかに謹慎させていたはずですよね?もしかして側妃が暮らしている王宮の部屋じゃないでしょうね?ボールド男爵令嬢に掛かりきりというのもありますし)
それにしても、大変そうにリーユお嬢様を抱いてますけど、非力過ぎませんか?仮にも騎士団長の子息ですよね?アルフォード殿。私達の中で一番小柄なルファエルでさえ、一人で横抱きして走れるのに。
「騎士の質が落ちたのか…」
「今の騎士団長は辺境へ見回りの最中だと聞いてましたね」
「あの側妃の所為でしかありませんね、どうせ無茶を言って王宮騎士を困らせたんでしょう。安い給料しか出さないのに良く従えますよね」
「ルファ」
「だって、騎士団長が辺境に見回りって聞いた事無いよね?ゼルク」
ルファエルの言葉に、ゼルクは苦笑いを浮かべることしか出来ない。スティヒ宰相から聞いているのは、急ぎ辺境より帰還させるとの事だったが、宰相様に連絡をすると面倒な気がするんですよね。こっちだけで終わらせたいものですが。
「す、すみません。遅くなりました…」
「多少音を立てても分かってないって言ったのに」
「いや、でも…。リーユお嬢様の魔法防御を薄くかけて其れをずっと維持するの、大変なんですよ?」
「魔術師団長のご子息も居ましたが、気付いてないのですか?」
「貴族科だからなぁ…」
連れ去るにしては身元は割れていますし、退学予定の学生しか使えない。しかも人の多い祭りの日を選ぶなんて、どうやって王宮へ戻るつもりなんでしょうね。
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