悪役執事

梛桜

文字の大きさ
26 / 32
花の朔祭編

其の九

しおりを挟む


「早くしろ、あの執事達が帰ってくるだろう!」
「エアベル様も手伝って下さいよ!」
「そんな小さな令嬢一人持てないのか!?」
「無能は放って置きなさいエアレズ」
「母上…」

 馬車の中でふんぞり返っているのは、アイクロメア王国の側妃と元第一王子ですね。国王陛下には何て言ってお仕置きをしましょうか…。スティヒ宰相は忙しいのは分かってますけど、コレは警備が手抜きなのか何なのか。
 アイクロメア王国の第一側妃クリステラ様、昔はキラキラと輝くストロベリーブロンドの髪と、空色の瞳の美しく天真爛漫な方だと評判でした。子爵令嬢で貴族としての身分は低いのに、王太子である現国王陛下に見初められたと、物語にもなっている方ですが。

(王太子妃としての礼儀がまるでなく、王妃教育も放棄して逃げ出した為に側妃どまりになったんですよね…。王太子妃候補には、マリアーナ様も名前を連ねていたそうですが、正式に王太子妃として婚約者にならなくて良かったと笑ってらしたのが良くわかります)

「所詮は物語という事ですね」
「子供は可愛いのでしょう、王太子になったではありませんか。今では元が着きますがね」
「よく反乱が起きませんよね」
「それが、アイクロメア王国の不思議なところですね」

(そもそも、エアレズはどこかに謹慎させていたはずですよね?もしかして側妃が暮らしている王宮の部屋じゃないでしょうね?ボールド男爵令嬢に掛かりきりというのもありますし)

 それにしても、大変そうにリーユお嬢様を抱いてますけど、非力過ぎませんか?仮にも騎士団長の子息ですよね?アルフォード殿。私達の中で一番小柄なルファエルでさえ、一人で横抱きして走れるのに。

「騎士の質が落ちたのか…」
「今の騎士団長は辺境へ見回りの最中だと聞いてましたね」
「あの側妃の所為でしかありませんね、どうせ無茶を言って王宮騎士を困らせたんでしょう。安い給料しか出さないのに良く従えますよね」
「ルファ」
「だって、騎士団長が辺境に見回りって聞いた事無いよね?ゼルク」

 ルファエルの言葉に、ゼルクは苦笑いを浮かべることしか出来ない。スティヒ宰相から聞いているのは、急ぎ辺境より帰還させるとの事だったが、宰相様に連絡をすると面倒な気がするんですよね。こっちだけで終わらせたいものですが。

「す、すみません。遅くなりました…」
「多少音を立てても分かってないって言ったのに」
「いや、でも…。リーユお嬢様の魔法防御を薄くかけて其れをずっと維持するの、大変なんですよ?」
「魔術師団長のご子息も居ましたが、気付いてないのですか?」
「貴族科だからなぁ…」

 連れ去るにしては身元は割れていますし、退学予定の学生しか使えない。しかも人の多い祭りの日を選ぶなんて、どうやって王宮へ戻るつもりなんでしょうね。

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。 他小説サイトにも投稿しています。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...