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① 乙女ゲームのヒロインに転生しました。
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「アンジェ……」
紫と碧のオッドアイ。
金髪の整った顔が眼前に迫ってくる。
「……コーエン様……っ!」
それを、私は必死で突っ張ねる。
アンジェリーナ・ラッセン。今流行りの乙女ゲームの転生ヒロイン、18歳。ただ今、貞操のピンチです!
*****
ここは、乙女ゲーム「恋する君に誓いの口づけを」の世界。(今思うと、タイトル、さっむい……!)私がそれに気づいたのは、まだ幼い日のことだった。物心つく前からおかしな夢を見ていた私は、ある日それが前世の記憶であることを理解した。
なんと言ってもヒロインだったので。これがモブだったりすれば気づかなかったかもしれないけれど、なにせ前世でやりこんだ乙女ゲームの、あろうことかヒロインだったので!(大事なことだから二回言ったよ!)
はい。今流行りの「転生」ってヤツですね。しかもよくある悪役令嬢とかじゃなく、ヒロインだよ!ヒロイン!やったぁ!……なーんて思ったのは一瞬のこと。次の瞬間、私が思ったことは、「悪役令嬢を救わなくちゃ!」ということでした。
メインルートの王子様と恋してる場合じゃないの!王子様は悪役令嬢とくっつかなくちゃ!
だって、このゲームの悪役令嬢は、悲劇のヒロインなんだから。
「恋する君に誓いの口づけを」は、よくある中世ヨーロッパ風の学園恋愛モノ。期間は一年。
この世界には魔法があって、魔力のある人は身分関係なく15~18歳の好きな時期に、魔法学園で過ごすことになる。
魔法と偏に言っても、そんなにすごい魔法が使えるわけじゃない。どんなに凄い火系魔法でも、キャンプファイアに火を灯せる程度のもの。
だって、メインは恋愛ですからね!ストーリーに魔法はほとんど関係ないからね!年頃の少年少女を身分問わずに一所に集める為のご都合主義です、ようするに。
ゲームは、伯爵家令嬢であるヒロイン――つまり私!が入学するところから始まる。
攻略対象者は5人。まず、メインルートのこの国の王子様(同級生)。まぁ、王道だよね!
それから、騎士団長の御令息(一つ年上)に、王子様の親友でもある宰相の御令息。平民だけど一つ年下の天才少年。最後に先生枠から一人。
なにかものすごい波瀾万丈があるわけでもなく、攻略対象者に暗い過去があったりするわけでもなく。王道中の王道を突っ走る乙女ゲームです。考えようによっては面白味もなんにもない……、とか言っちゃダメ!
まぁ、ストーリーはどうでもいいんです、とりあえず。問題は、ヒロインを虐め抜く悪役令嬢。こちらもパターンもパターンで、王子の婚約者である公爵令嬢様です。
この子がまぁ……、プレイヤーに嫌われに嫌われました。悪役としては最高の賛辞とも言えるほどの悪女ぶり。だけど、ゲーム発売から一年後。公式ファンページで明かされた悪役令嬢サイドのお話に、ファンはみんな号泣した。
よくある素直になれないツンデレさん!王子との仲を拗らせ、将来の王妃としてのプレッシャーを抱えて悩んでも、冷めた仲の王子はもちろん、友人にも本音を打ち明けられずに追い詰められる日々。
そんな中で、ゲームには一切出てこなかった、闇の呪い?のようなものにかかって、悪感情を抑えられない性格に。そのせいでヒロインを虐め抜いていたわけなのですが、どうにもならない負の衝動に、心の中で誰か助けてと叫び声を上げている悪役令嬢の姿に、今まで彼女を叩きまくっていたファンは掌を返したように涙するという……。
まさに悲劇のヒロイン!
だから私は決めました!
私自身は攻略対象者たちとのフラグを折りまくり、是非悪役令嬢には王子様と幸せになって貰いたい!
え?王子様とのフラグだけ折ればいいんじゃないかって?まぁ、それも考えなかったわけではないのだけれど……。
ゲームならいいのよ、ゲームなら。でも、よくよく考えたら本当の意味で私の好みのキャラがいないことに気づきました。実際彼らと恋愛するとなると……、なんか違う。なんか違うというより、ゲーム内での恋愛イベントのあれこれを私が彼らと繰り広げるのかと想像すると、ぞわりと肌の毛が逆立った。
あー、無理無理!耐えられない!あんなイベントやこんなイベント、プレイヤーとして画面を見ている分にはいいけれど、実際に自分が体験するとなるとこそばゆくて拒絶反応が!
そうして幼い日の私は、攻略対象者たちとのフラグを折りまくり、悪役令嬢を救うための決意をしたのだった。
紫と碧のオッドアイ。
金髪の整った顔が眼前に迫ってくる。
「……コーエン様……っ!」
それを、私は必死で突っ張ねる。
アンジェリーナ・ラッセン。今流行りの乙女ゲームの転生ヒロイン、18歳。ただ今、貞操のピンチです!
*****
ここは、乙女ゲーム「恋する君に誓いの口づけを」の世界。(今思うと、タイトル、さっむい……!)私がそれに気づいたのは、まだ幼い日のことだった。物心つく前からおかしな夢を見ていた私は、ある日それが前世の記憶であることを理解した。
なんと言ってもヒロインだったので。これがモブだったりすれば気づかなかったかもしれないけれど、なにせ前世でやりこんだ乙女ゲームの、あろうことかヒロインだったので!(大事なことだから二回言ったよ!)
はい。今流行りの「転生」ってヤツですね。しかもよくある悪役令嬢とかじゃなく、ヒロインだよ!ヒロイン!やったぁ!……なーんて思ったのは一瞬のこと。次の瞬間、私が思ったことは、「悪役令嬢を救わなくちゃ!」ということでした。
メインルートの王子様と恋してる場合じゃないの!王子様は悪役令嬢とくっつかなくちゃ!
だって、このゲームの悪役令嬢は、悲劇のヒロインなんだから。
「恋する君に誓いの口づけを」は、よくある中世ヨーロッパ風の学園恋愛モノ。期間は一年。
この世界には魔法があって、魔力のある人は身分関係なく15~18歳の好きな時期に、魔法学園で過ごすことになる。
魔法と偏に言っても、そんなにすごい魔法が使えるわけじゃない。どんなに凄い火系魔法でも、キャンプファイアに火を灯せる程度のもの。
だって、メインは恋愛ですからね!ストーリーに魔法はほとんど関係ないからね!年頃の少年少女を身分問わずに一所に集める為のご都合主義です、ようするに。
ゲームは、伯爵家令嬢であるヒロイン――つまり私!が入学するところから始まる。
攻略対象者は5人。まず、メインルートのこの国の王子様(同級生)。まぁ、王道だよね!
それから、騎士団長の御令息(一つ年上)に、王子様の親友でもある宰相の御令息。平民だけど一つ年下の天才少年。最後に先生枠から一人。
なにかものすごい波瀾万丈があるわけでもなく、攻略対象者に暗い過去があったりするわけでもなく。王道中の王道を突っ走る乙女ゲームです。考えようによっては面白味もなんにもない……、とか言っちゃダメ!
まぁ、ストーリーはどうでもいいんです、とりあえず。問題は、ヒロインを虐め抜く悪役令嬢。こちらもパターンもパターンで、王子の婚約者である公爵令嬢様です。
この子がまぁ……、プレイヤーに嫌われに嫌われました。悪役としては最高の賛辞とも言えるほどの悪女ぶり。だけど、ゲーム発売から一年後。公式ファンページで明かされた悪役令嬢サイドのお話に、ファンはみんな号泣した。
よくある素直になれないツンデレさん!王子との仲を拗らせ、将来の王妃としてのプレッシャーを抱えて悩んでも、冷めた仲の王子はもちろん、友人にも本音を打ち明けられずに追い詰められる日々。
そんな中で、ゲームには一切出てこなかった、闇の呪い?のようなものにかかって、悪感情を抑えられない性格に。そのせいでヒロインを虐め抜いていたわけなのですが、どうにもならない負の衝動に、心の中で誰か助けてと叫び声を上げている悪役令嬢の姿に、今まで彼女を叩きまくっていたファンは掌を返したように涙するという……。
まさに悲劇のヒロイン!
だから私は決めました!
私自身は攻略対象者たちとのフラグを折りまくり、是非悪役令嬢には王子様と幸せになって貰いたい!
え?王子様とのフラグだけ折ればいいんじゃないかって?まぁ、それも考えなかったわけではないのだけれど……。
ゲームならいいのよ、ゲームなら。でも、よくよく考えたら本当の意味で私の好みのキャラがいないことに気づきました。実際彼らと恋愛するとなると……、なんか違う。なんか違うというより、ゲーム内での恋愛イベントのあれこれを私が彼らと繰り広げるのかと想像すると、ぞわりと肌の毛が逆立った。
あー、無理無理!耐えられない!あんなイベントやこんなイベント、プレイヤーとして画面を見ている分にはいいけれど、実際に自分が体験するとなるとこそばゆくて拒絶反応が!
そうして幼い日の私は、攻略対象者たちとのフラグを折りまくり、悪役令嬢を救うための決意をしたのだった。
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