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ふたつの体
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リヒトの両頬を包み、唇を合わせた。
口の端を指で押さえると、やわらかな唇が開く。先ほどよりも大胆に舌を動かしてリヒトの口腔をまさぐったけれど、リヒトはユリウスを拒まなかった。
本当に、なにをされるかわかっているのだろうか?
舌先をちゅ、ちゅ、と吸い、甘噛みする。
「んぅ」
ひくんと肩を揺らしたリヒトが、可愛い鼻声を漏らした。
その声がまたユリウスの理性を揺さぶってくる。
ふだんから呼吸の下手くそなリヒトが、キスの合間にはふはふと浅い息をついているのが可愛くてたまらない。
はふ、と吐いた呼気を飲み込むように唇で覆って、甘い唾液を啜った。
「ふぁ……ゆぅりさま、ゆぅり、さま」
互いの舌が触れあうたびにあがる水音に、リヒトが戸惑ったようにまばたきをする。瞳の金色を縁取る睫毛にあった涙の名残が、ほろりとこめかみを転がり落ちていった。
可愛い。離せない。もう離せない。
「リヒト」
「んぁ……ふぁい」
「服を脱がせてもいい?」
「ふぁい」
ユリウスの問いかけに、リヒトがこくりと頷いた。
ユリウスは覆いかぶさっていた細い体から一度身を起こし、リヒトの夜着の前ボタンを外してゆく。見上げてくるリヒトは、されるがままだ。
シャツの前を開き、下着ごとズボンを下した。リヒトはユリウスがそうしやすいようにとすこし腰を浮かせて協力してくれた。
ユリウスは無防備に肌を晒したおのれのオメガを見つめ……それからハタと手を止めた。
あれ? と引っかかりを覚え、リヒトの表情をまじまじと観察する。
先ほどの濃厚なキスの余韻で目は潤んでいるが……羞恥や恥じらいの感情はそこにはなかった。
リヒトは至って当然のように、裸で寝転んでいる。
「リヒト」
「はい」
「僕になにをされるか、本当にわかってる?」
ユリウスがそう問えば、大真面目に「はい」と返ってくる。
本当かなぁ、とユリウスは疑わしく思いつつも、おのれの衣類に手を掛けた。
ボタンを外し、シャツを脱ぎ、下衣を下ろそうとして……ああそうかと思い至る。
リヒトは幼い頃からユリウスの手で生活のすべてを介助されていた。五感が弱いときも(時にはそれが治癒してからも)、入浴や着替えを手伝われることが当然で、だからいまも服を脱がされること、裸を見られることに対する羞恥心がないのだ。
それはつまり、自分が性的な目で見られているということがわかっていない証左である。
ユリウスはズボンの腰に置いていた手を浮かせ、一度両手で顔を覆った。
頭に上った熱を、大きな吐息とともに下げてゆく。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
おのれに言い聞かせながら、リヒトには、今日はやめようと言おうと決めた。
これから行おうとしている行為は、心身ともに成熟していないリヒトには、早すぎた。
「リヒト」
呼びかけながら、顔から手を離し、おのれのオメガを見た。
きょとんとしているだろうと想像したリヒトの顔は……なぜか、夜目でもわかるほどに真っ赤になっていた。
大きな瞳を更に大きくして、頬を林檎のように火照らせている。
「リヒト、どうしたの。熱がある?」
性欲よりも心配が勝って、ユリウスはリヒトのひたいにてのひらを当てようとした……ところで、
「わぁっ!」
と叫んだリヒトに手を払われた。
え? と驚くユリウスの下からリヒトがバタバタと手足を動かし、ベッドの隅に逃げてそこにあった枕ごと膝を抱えて小さくなった。
「え? リヒト? どうしたの?」
突然の行動にユリウスはわけがわからず、マットレスの上を這ってリヒトに近づき、枕に顔を埋めているオメガを覗き込む。
「……は」
「は?」
「はなれてくださいぃ」
リヒトが片腕でユリウスの胸を押し返し、直後にビクっと跳ねてパッと手を引っ込めた。
離れてくれ、だなんてほとんど初めての拒絶に、ユリウスはしずかにショックを受けた。
やはり性的な接触は早すぎたのだ。
これで嫌われたらどうしよう、僕はもう立ち直れない。
リヒトの拒絶はユリウスの致命傷となり、先ほど感じていた昂揚も跡形もなく消し飛びそうだった。
ユリウスは悄然となって、謝罪した。
「リヒト、ごめん。離れるから、怯えないで」
「…………が、…………です」
ユリウスの言葉に被って、消え入りそうな声が聞こえた。
なんだろうと思いリヒトに顔を近づけると、枕に口元を埋めたままのリヒトが目だけを覗かせて、
「ゆぅりさまがかっこうよすぎてしにそうです」
ぼそぼそとそう言った。
「え?」
聞き間違いだろうかと更に身を乗り出すと、リヒトは「わぁ」と叫んで、ヘッドボードにこれ以上はないというほど半身を押し付け、なんとかユリウスから遠ざかろうとしながらまた、
「近づかないでくださいぃ」
と半泣きで訴えてきた。
「リヒト、待って。意味がわからない」
ユリウスが恰好良いから死にそう、などと言われる意味がわからない。
自慢ではないが、生まれてこの方容姿を褒められなかったことなどなかった。
リヒトも目がきちんと見えるようになったときは、ユリウスの顔に中々慣れないようだった。恥ずかしがって視線をきちんと合わしてくれるまですこし時間が必要だったのを覚えている。
しかし、視覚が治ってからもう一年以上はゆうに経過しているし、いまさら緊張するだろうか?
そう思ったユリウスだったが。
顔を真っ赤にしたリヒトが、だって、とつぶやいた。
「だって、ゆぅりさまの裸を見るのは初めてです」
リヒトの言葉に、ユリウスはおのれの姿を確認した。下はまだ履いているものの、寝間着の上は脱いでおり上半身は裸だ。
それを言うならリヒトはもう全裸で、枕とともに足を抱える姿勢が中々きわどいことになっているが、そんな自分は気にならないのか、枕越しにものすごく恥ずかしそうにユリウスに視線を投げてきて、すぐに顔を枕に伏せた。
「ダメです! 僕、恥ずかしいです!」
ユリウスは一瞬呆気にとられ、次いで湧き上がってきた笑いが堪えきれずに、くっくっと肩を揺らした。
「リ、リヒト、くっ、あははっ。そうか、僕の裸、初めてだったね。大丈夫だからおいで」
怯えられたわけではなかった、という安堵以上に、リヒトの反応が可愛すぎてたまらない。
ユリウスは数えきれないほどリヒトの裸を見てきたが、確かにリヒトの言う通り、彼の前でユリウスが脱いだのは今日が初めてかもしれない。
リヒトを風呂に入れるときも着衣していたユリウスである。
それは、リヒトの匂いで万が一にでも下腹部が反応したときのための、防衛策であったのだが。
ユリウスはベッドに座りなおし、おいでと両手を広げた。
リヒトが野生の小リスのような動きで、チラチラとこちらを見てくる。
ユリウスは諸手のままでもう一度、
「おいで、リヒト」
と誘った。
リヒトがぐっと唇を噛み、おずおずと枕を脇に除ける。
それからそろり、と四つん這いでこちらに身を乗り出してきた。
ユリウスの方から迎えに行った腕を、リヒトは今度は拒まなかった。ただビクっと肩を揺らして、けれどあぐらをかいた足の間に抱き寄せると大人しく身を寄せてきた。
「服が一枚ないだけで、いつもの僕と変わりないよ」
笑いながらそう告げたユリウスの肩に、リヒトが手を置いた。
「でも、全然違います」
「そう?」
「僕と全然違います」
リヒトの返事に、ユリスはまた笑ってしまう。
「それはそうだよ。僕はアルファで、きみはオメガだから」
オメガという性は華奢な骨格の者が多い。
その中でもリヒトは取り分け小柄だ。幼少期の栄養不良が根深い影響を残している。
リヒトは自分の腕とユリウスの腕を並べて、交互に手触りを確かめ始めた。
あんまり可愛い仕草で二の腕をまさぐられ、ユリウスはくすぐったさをこらえながら右手にぐっと力を込めた。
上腕に硬く盛り上がった筋肉を見て、リヒトが驚いたようにてのひらを離す。それから自分の右手の肘を折り曲げて、ユリウスを真似て力を込めた。
しかしリヒトの細い腕には力こぶはできない。
「オメガは筋肉がつきにくい体質だからね」
「きんにく」
「そう。きみが悠々と剣を振るえたら僕の出番がなくなってしまうから、きみはそのままでいいんだよ、僕のオメガ」
ちゅ、とひたいにキスを落としてリヒトに微笑みかけたユリウスは、
「もう僕に慣れた?」
と尋ねた。
リヒトがまだ恥ずかしそうにまばたきをして、はにかむように笑った。
「……ユーリ様の体、恰好いいです」
うふふと小さな声をこぼして、リヒトが先ほどよりも遠慮のない動きでユリウスの裸の上半身を触ってくる。
「ロンバードさんもサデスさんも、腕がすごく太いんです。サデスさんはこんな大きなお鍋を軽々持ってるんです。でもお二人の腕は、ユーリ様と全然違います。ユーリ様の方が細いのに、筋肉がたくさん……ここも筋肉ですか? すごい。ぼこぼこしてます」
リヒトの両手が腹筋に触れた。
ユリウスは外交長官の地位についた後も、定期的にロンバードに剣の相手をさせていた。だからそれなりに筋肉はある。それをおのれのオメガに「恰好いい」と褒められて悪い気はしない。
悪い気はしないが……。
ユリウスは自分に乗りかかる体勢で腹部をさすってくるリヒトの腕を掴み、その体をころんとベッドに転がした。
「え?」
急に回転した体に驚いたリヒトが、目を丸くする。
「この状況で他の男の名前を呼ぶなんて……悪い子だね、リヒト」
ユリウスは双眸を細め、唇に薄い笑みを刷いた。
口の端を指で押さえると、やわらかな唇が開く。先ほどよりも大胆に舌を動かしてリヒトの口腔をまさぐったけれど、リヒトはユリウスを拒まなかった。
本当に、なにをされるかわかっているのだろうか?
舌先をちゅ、ちゅ、と吸い、甘噛みする。
「んぅ」
ひくんと肩を揺らしたリヒトが、可愛い鼻声を漏らした。
その声がまたユリウスの理性を揺さぶってくる。
ふだんから呼吸の下手くそなリヒトが、キスの合間にはふはふと浅い息をついているのが可愛くてたまらない。
はふ、と吐いた呼気を飲み込むように唇で覆って、甘い唾液を啜った。
「ふぁ……ゆぅりさま、ゆぅり、さま」
互いの舌が触れあうたびにあがる水音に、リヒトが戸惑ったようにまばたきをする。瞳の金色を縁取る睫毛にあった涙の名残が、ほろりとこめかみを転がり落ちていった。
可愛い。離せない。もう離せない。
「リヒト」
「んぁ……ふぁい」
「服を脱がせてもいい?」
「ふぁい」
ユリウスの問いかけに、リヒトがこくりと頷いた。
ユリウスは覆いかぶさっていた細い体から一度身を起こし、リヒトの夜着の前ボタンを外してゆく。見上げてくるリヒトは、されるがままだ。
シャツの前を開き、下着ごとズボンを下した。リヒトはユリウスがそうしやすいようにとすこし腰を浮かせて協力してくれた。
ユリウスは無防備に肌を晒したおのれのオメガを見つめ……それからハタと手を止めた。
あれ? と引っかかりを覚え、リヒトの表情をまじまじと観察する。
先ほどの濃厚なキスの余韻で目は潤んでいるが……羞恥や恥じらいの感情はそこにはなかった。
リヒトは至って当然のように、裸で寝転んでいる。
「リヒト」
「はい」
「僕になにをされるか、本当にわかってる?」
ユリウスがそう問えば、大真面目に「はい」と返ってくる。
本当かなぁ、とユリウスは疑わしく思いつつも、おのれの衣類に手を掛けた。
ボタンを外し、シャツを脱ぎ、下衣を下ろそうとして……ああそうかと思い至る。
リヒトは幼い頃からユリウスの手で生活のすべてを介助されていた。五感が弱いときも(時にはそれが治癒してからも)、入浴や着替えを手伝われることが当然で、だからいまも服を脱がされること、裸を見られることに対する羞恥心がないのだ。
それはつまり、自分が性的な目で見られているということがわかっていない証左である。
ユリウスはズボンの腰に置いていた手を浮かせ、一度両手で顔を覆った。
頭に上った熱を、大きな吐息とともに下げてゆく。
落ち着け、落ち着け、落ち着け。
おのれに言い聞かせながら、リヒトには、今日はやめようと言おうと決めた。
これから行おうとしている行為は、心身ともに成熟していないリヒトには、早すぎた。
「リヒト」
呼びかけながら、顔から手を離し、おのれのオメガを見た。
きょとんとしているだろうと想像したリヒトの顔は……なぜか、夜目でもわかるほどに真っ赤になっていた。
大きな瞳を更に大きくして、頬を林檎のように火照らせている。
「リヒト、どうしたの。熱がある?」
性欲よりも心配が勝って、ユリウスはリヒトのひたいにてのひらを当てようとした……ところで、
「わぁっ!」
と叫んだリヒトに手を払われた。
え? と驚くユリウスの下からリヒトがバタバタと手足を動かし、ベッドの隅に逃げてそこにあった枕ごと膝を抱えて小さくなった。
「え? リヒト? どうしたの?」
突然の行動にユリウスはわけがわからず、マットレスの上を這ってリヒトに近づき、枕に顔を埋めているオメガを覗き込む。
「……は」
「は?」
「はなれてくださいぃ」
リヒトが片腕でユリウスの胸を押し返し、直後にビクっと跳ねてパッと手を引っ込めた。
離れてくれ、だなんてほとんど初めての拒絶に、ユリウスはしずかにショックを受けた。
やはり性的な接触は早すぎたのだ。
これで嫌われたらどうしよう、僕はもう立ち直れない。
リヒトの拒絶はユリウスの致命傷となり、先ほど感じていた昂揚も跡形もなく消し飛びそうだった。
ユリウスは悄然となって、謝罪した。
「リヒト、ごめん。離れるから、怯えないで」
「…………が、…………です」
ユリウスの言葉に被って、消え入りそうな声が聞こえた。
なんだろうと思いリヒトに顔を近づけると、枕に口元を埋めたままのリヒトが目だけを覗かせて、
「ゆぅりさまがかっこうよすぎてしにそうです」
ぼそぼそとそう言った。
「え?」
聞き間違いだろうかと更に身を乗り出すと、リヒトは「わぁ」と叫んで、ヘッドボードにこれ以上はないというほど半身を押し付け、なんとかユリウスから遠ざかろうとしながらまた、
「近づかないでくださいぃ」
と半泣きで訴えてきた。
「リヒト、待って。意味がわからない」
ユリウスが恰好良いから死にそう、などと言われる意味がわからない。
自慢ではないが、生まれてこの方容姿を褒められなかったことなどなかった。
リヒトも目がきちんと見えるようになったときは、ユリウスの顔に中々慣れないようだった。恥ずかしがって視線をきちんと合わしてくれるまですこし時間が必要だったのを覚えている。
しかし、視覚が治ってからもう一年以上はゆうに経過しているし、いまさら緊張するだろうか?
そう思ったユリウスだったが。
顔を真っ赤にしたリヒトが、だって、とつぶやいた。
「だって、ゆぅりさまの裸を見るのは初めてです」
リヒトの言葉に、ユリウスはおのれの姿を確認した。下はまだ履いているものの、寝間着の上は脱いでおり上半身は裸だ。
それを言うならリヒトはもう全裸で、枕とともに足を抱える姿勢が中々きわどいことになっているが、そんな自分は気にならないのか、枕越しにものすごく恥ずかしそうにユリウスに視線を投げてきて、すぐに顔を枕に伏せた。
「ダメです! 僕、恥ずかしいです!」
ユリウスは一瞬呆気にとられ、次いで湧き上がってきた笑いが堪えきれずに、くっくっと肩を揺らした。
「リ、リヒト、くっ、あははっ。そうか、僕の裸、初めてだったね。大丈夫だからおいで」
怯えられたわけではなかった、という安堵以上に、リヒトの反応が可愛すぎてたまらない。
ユリウスは数えきれないほどリヒトの裸を見てきたが、確かにリヒトの言う通り、彼の前でユリウスが脱いだのは今日が初めてかもしれない。
リヒトを風呂に入れるときも着衣していたユリウスである。
それは、リヒトの匂いで万が一にでも下腹部が反応したときのための、防衛策であったのだが。
ユリウスはベッドに座りなおし、おいでと両手を広げた。
リヒトが野生の小リスのような動きで、チラチラとこちらを見てくる。
ユリウスは諸手のままでもう一度、
「おいで、リヒト」
と誘った。
リヒトがぐっと唇を噛み、おずおずと枕を脇に除ける。
それからそろり、と四つん這いでこちらに身を乗り出してきた。
ユリウスの方から迎えに行った腕を、リヒトは今度は拒まなかった。ただビクっと肩を揺らして、けれどあぐらをかいた足の間に抱き寄せると大人しく身を寄せてきた。
「服が一枚ないだけで、いつもの僕と変わりないよ」
笑いながらそう告げたユリウスの肩に、リヒトが手を置いた。
「でも、全然違います」
「そう?」
「僕と全然違います」
リヒトの返事に、ユリスはまた笑ってしまう。
「それはそうだよ。僕はアルファで、きみはオメガだから」
オメガという性は華奢な骨格の者が多い。
その中でもリヒトは取り分け小柄だ。幼少期の栄養不良が根深い影響を残している。
リヒトは自分の腕とユリウスの腕を並べて、交互に手触りを確かめ始めた。
あんまり可愛い仕草で二の腕をまさぐられ、ユリウスはくすぐったさをこらえながら右手にぐっと力を込めた。
上腕に硬く盛り上がった筋肉を見て、リヒトが驚いたようにてのひらを離す。それから自分の右手の肘を折り曲げて、ユリウスを真似て力を込めた。
しかしリヒトの細い腕には力こぶはできない。
「オメガは筋肉がつきにくい体質だからね」
「きんにく」
「そう。きみが悠々と剣を振るえたら僕の出番がなくなってしまうから、きみはそのままでいいんだよ、僕のオメガ」
ちゅ、とひたいにキスを落としてリヒトに微笑みかけたユリウスは、
「もう僕に慣れた?」
と尋ねた。
リヒトがまだ恥ずかしそうにまばたきをして、はにかむように笑った。
「……ユーリ様の体、恰好いいです」
うふふと小さな声をこぼして、リヒトが先ほどよりも遠慮のない動きでユリウスの裸の上半身を触ってくる。
「ロンバードさんもサデスさんも、腕がすごく太いんです。サデスさんはこんな大きなお鍋を軽々持ってるんです。でもお二人の腕は、ユーリ様と全然違います。ユーリ様の方が細いのに、筋肉がたくさん……ここも筋肉ですか? すごい。ぼこぼこしてます」
リヒトの両手が腹筋に触れた。
ユリウスは外交長官の地位についた後も、定期的にロンバードに剣の相手をさせていた。だからそれなりに筋肉はある。それをおのれのオメガに「恰好いい」と褒められて悪い気はしない。
悪い気はしないが……。
ユリウスは自分に乗りかかる体勢で腹部をさすってくるリヒトの腕を掴み、その体をころんとベッドに転がした。
「え?」
急に回転した体に驚いたリヒトが、目を丸くする。
「この状況で他の男の名前を呼ぶなんて……悪い子だね、リヒト」
ユリウスは双眸を細め、唇に薄い笑みを刷いた。
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