1 / 1
第1話「ちょっとハードな異世界転生」
しおりを挟む第1話「ちょっとハードな異世界転生」
「…ぐぁあああああああああ!!!!!」
全身を駆け巡る凄まじい苦痛に苛まれ、俺は覚醒した。
「あああああッ!???なんだよこれぇ!!!」
俺はあまりの痛みに耐えきれず、思わずのたうち回った。
しかし、しばらくのたうち回った後、ある違和感に気づき、行動を静止させ、その事実を確認し戦慄する。
…なぜならば
「腕が….ない!!??」
そう、腕があるという感覚がないのだ。
もっと言えば両腕だけではなく、両足の感覚もない。
先程まで五体満足だった筈の俺の体は、完全に四肢を欠損した状態になってしまっているのだろうか?
何故疑問形なのかと言うと、それは自らの身体を視認できない、詳しく言えば、周りを見渡しても、辺りが真っ暗で何も見えないからだ。
まさか、眼まで失ってしまっているのではないだろうか…
…考えたくはないが、そういうことだろう。
さて、痛みにも漸く慣れてきたところだし、一先ず状況の整理を行うとしよう。
一つ目は今俺がいるこの場所は一体どこなのかということ
二つ目は何故俺の四肢が(恐らく眼球も)失われてしまっているのか
三つ目は何故死んだ筈の俺が……。
….ああ、そうか、俺は死んだのだった。
数時間前
4時間目の授業を終わらせるチャイムが鳴ると、授業中は静かだった教室内が一変し、一気に騒がしくなった。
それぞれ購買に向かって走る者、教室の隅で雑談する者、机を合わせ、友達同士で楽しそうに弁当を食べる者など様々であったが、その中でも一際浮いた存在がいた。
そう、俺だ。
いくら昼休みとは言え、一人で机に突っ伏しているのは俺ぐらいのものだろう。
かと言って俺は別に浮いていようが気にはしていない。
あんな馬鹿どもとつるむぐらいならこうしていた方が何倍もマシだ。
「…ねえ?みんなと一緒にご飯食べないの?そんな机に突っ伏してないでさ!」
…この声は聖堂神花か。
全く、こいつもどうせあの馬鹿どもを構成しているうちの一人だ。
どれ、軽くあしらって…
「べ、ベベ別に、お、お俺はこうしてるのがす、好きなだけだしッ!あ、あんな馬鹿どもとつるむ気ないしッ!」
しまった。
そういや、俺最近女子と全く喋ってなかったんだった。
しかも相手が聖堂神花となると尚更分が悪い。
「ふふ、なにそれ?そうしてると、友達いなくなっちゃうよ?」
何せ相手、聖堂神花は誰もが見惚れてしまうような絶世の美少女で…
「え、う、うんごめん」
…………
「あはは、何で謝るの?やっぱ君って面白いよね」
俺が唯一惚れてしまった女の子だったからだ。
「あはははははは!」
俺は彼女の笑い声を聞きながら、恥ずかしさのあまり机に突っ伏したままである。
全く、いつもはクールな俺の調子が乱されてしまうぜ。
「あはははは……ッ!………………」
?、妙だな…。
急に彼女の笑い声が途絶えた。
それになんだか大きな物音がしたような。
まあいい、それはどうせ馬鹿たちが暴れているんだろう。
「………………………………」
まさか!?何を言っても机に突っ伏したままの俺に遂に呆れてしまったのでは!?
それだけは嫌だ!!
俺は急いで顔を上げる…………と…
「…ィッ!!??」
出たのは声にならない小さなうめき声にも似た悲鳴だった。
目の前には聖堂神花がいた。
正確に言えば、聖堂神花だった筈の潰されたぐちゃぐちゃの肉塊があった。
そして、その背後には巨大なハンマーのようなものを体から直接生やした醜悪でひたすらに悍しい魔物が佇んでいた。
理解できない。
理解したくない。
俺がずっと恋い焦がれていた彼女が、俺に唯一優しく、俺が唯一好きになった彼女が、
こんな訳の分からないことで、こんな理解し難いことで、あっさりと、一瞬で、潰されて殺された。
一瞬で肉塊にされた。
なんで、なんで、なんでなんで!!!!????
理解できない、できるはずがない!!
なんだよこれ!なんなんだよこれは!!
「うわああああああああああ!!!!!」
今度ははっきりと叫んだ。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる