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心強い仲間?

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「お、おお……ステータスがえらい事になってるな?」
「うえーん! パパ~~! ショコラ化け物みたいだよおおぉーーー!」
「そんな事ない! そんな事ないぞー!」

とは言ったものの、実際シロのステータスと見比べてみると——。


【ショコラ】
種族:ドラゴン(成長期)
レベル:31
HP:5369/2369
MP:1860/1860
ちから:2835
ぼうぎょ:2452
すばやさ:1693
ヒット:61
うん:162
[戦闘スキル]
『頭突き』
『ファイヤーブレスレベル9』
『ドラゴンパンチ』
『ドラゴンキック』
『ドラゴンクロー』
『ドラゴンテイル』
『ファイヤーボール』
『ウォーターボール』
『ウインドショット』
『グランドボール』
『エナジードレイン』
『メタルパンチ』
『アイシクル」
『サンダーショック』
『ブラッドボール』
[特殊スキル]
『力強化レベル2』
『防御強化レベル2』
『鱗強化レベル2』
『素早さ強化レベル2』
『経験値取得増』
『全属性耐性』
『毒耐性』
『裂傷耐性』
『火傷耐性』
『凍傷耐性』
『飛行』
[称号スキル]
『竜王の転生者』
効果①経験値取得量を増やす。
効果②敗者を従属化させる。
効果③レベル15以上で全属性の技が取得可能。
効果④レベル30以上全属性耐性を取得。
効果⑤威圧(自身よりレベルが低い相手を行動停止にする)
効果⑥————
効果⑦————
効果⑧————
効果⑨————

【シロ】
種族:フェンリル
レベル:29
HP:600/600
MP:153/153
ちから:129
ぼうぎょ:72
すばやさ:203
ヒット:61
うん:23
[戦闘スキル]
『かみつく』
『引き裂く』
『アイシクル』
『氷爪』
『アイスグラウンド』
『アイスシャワー』
[特殊スキル]
『素早さ強化』
『吹雪』


レベル差が2しかないにも関わらず、ステータスの差がおかしくなかろうか。
倍とか、そういうレベルではない。
これが種族故の差だというのか。

「これはすごい。このレベルですでにドンと同じくらいのステータス数値です」
「さすが竜王様なのダワ」
「がぁん!」
「ドンって、そういえばレベル幾つなんだ?」
「レベル50だと噂があります。本当のところは誰も分かりませんが……」
「……ドンのレベルが50で、ステータスは同じぐらいって……」

まともに戦っていれば勝てはしなかっただろう、あのドンとショコラのステータスは同じぐらい。
それに、なにやら『竜王の転生者』に新たな効果が加わっている。
『レベル差10以下の相手を行動停止にする』。

「この威圧って、もしかして……」
「はい、恐らくドンと対峙した時に感じたあれだと思われます」
「だよな」

生きた心地がしなかった、あの感覚。
あれが『威圧』の効果。
ものすごいスキルだ、と一人で頷く。

『ねえ、今のシロの話だと、シロは他のモンスターのステータスが見られるの? そう聞こえるんだけど』
「ん? ……そういえば……」

またも腕時計から聞こえる声。
ドンと同じぐらいのステータス数値、という事は、見た事があるという事ではないか?
ステータスが見られるのは、契約者やその従属になった相手だけではないのだろうか。
不思議に思って見下ろすと、シロは首を傾げる。
本人にもよく分かっていないのだろうか。

「イヤダワ、ご主人ったら知らないの? フェンリルは『獣王』の血筋なのダワ。空を竜王が統べり、地上は『獣王』が預かり守る、ダワ。遥か昔に『獣王』は子どもに『王権』を譲らないまま寿命で亡くなってしまって、その『王権』は『竜王』様の元へと返されたのダワ。それ以来、この世界では『竜王』様が唯一無二の絶対神となったのダワ」
「獣王? ……竜王の部下って事か?」
「そうダワ。でもせっかくお借りしていた力をお返ししたんだって伝わってるダワ」
「「「へーーー」」」
「待って、なんであんたも初めて聞いたみたいになってるダワ、シロ」
「いや、俺は……生まれた時から一人だったからそんなの知らない。同族に会った事もないし」
「そうなのか?」

そういえばねぎまは「仲間がいるはずなんだけどはぐれたぅるる~」と言っていた。
この島のどこかにいるはずの群も、いつか保護したいのでその時は頼むな、的な話を少しした覚えがある。
作業中だったが、他にもショウジョウたちやドンにも一族が島のどこかにいるはずだ、とか。
みな食糧を求め、本来の住処を離れてしまっているのだそうだ。
だからこそ拠点を作り、食糧生産は安定化させなければならない。
と、改めて強く思ったものだが……。

「まあいいのダワ。きっとドンならその辺りの事もリリィより詳しいのダワ。帰ったら聞いてみるといいダワ」
「そうだな、シロの家族の事も何か分かるかもしれないしな」
「! マスター……」
「しかし一人で生きてきたなんてシロはすごいんだな。俺は絶対のたれ死んでる自信があるぜ」
「ホントホント! ショコラもパパに会わなかったら死んでたよ! シロすごい!」
「…………」

耳が垂れ下がってしまった。
その表情も、どこか寂しげ。
何か辛い事を思い起こさせただろうか?
「シロ?」と名前を呼んでみる。
シロは顔を上げた。

「いえ……俺は自分の家族よりも、竜王様とマスターに従える方が幸せです」
「……シロ」
「! マスター、バイコーンが!」
「!」

白が上半身を低くする。
いつでも襲い掛かれる体勢。
ショコラは右往左往、オロオロ。
先程、一番弱いはずの技で怪我をさせてしまい、戦闘になればまた怪我をさせるかもしれないと、不安なのだろう。
起き上がったバイコーンは、しばらくぼーっとして、忠直たちの存在を正しく理解した後ハッとしたように起き上がる。
そして——。

『バイコーンが仲間になりたそうにこちらを見ています』
『バイコーンを仲間にしますか?』
【はい】      【いいえ】

やや申し訳なさそうな顔で、左前足の蹄をカッ、カッと鳴らしている。
頭を下げてこちらを伺うその目にもう敵意はない。
ショコラがちらりと忠直を見る。
潤んだ瞳。

「ああ、もちろん」

【はい】を押す。
バイコーンが前足を鳴らしながら嬉しそうに近付いてくる。

『バイコーンが仲間になった! 名前を付けますか?』
「そうだなぁ……二本ツノがあるし……カクさんでどうだ!」
『知ってるよ! ニッポンの人気長寿ドラマの偉いジジイの部下だね!』
「そうそう、そんな感じ!」

カクさんが仲間になった!
名前を付けられたバイコーン、カクさんは、頭を下げる。

「カクさんか、悪くねぇ。なんかこう、強そうだしな! よろしく頼むぜお頭。あんたがお頭だよな?」
「ん? いや、えーと、俺はただの人間で……」
「この方は竜王様の転生者であらせられるショコラ様の契約者。その認識で合っているだろう」
「シ、シロ!」

なんか今更だがそんな紹介のされ方をされてしまうとむず痒い。
すごいのはショコラであり、忠直ではないのだ。
そう言おうとしたがカクさんには納得されてしまう。

「ご主人、そういうものなのダワ」
「そういうもんなのか……」
『まあ、せっかく仲間が増えたんだし彼に案内してもらえばいいんじゃないのかな?』
「ああ、じゃあ……カクさん、悪いんだが案内してくれるか? 実は今————……」



と、いつも通り事情を説明して森へと立ち入る。
目的は木と石の採取。
本当なら川に結界を通して水を確保したいところだが、先程ギベインに言われた通り電力とやらが足りない。
それを聞いたカクさんはかなり残念そうだったが、事情は理解してくれるそうだ。
そして次に確認するべきなのは、この森に住むというモンスターたちの詳細。

「この森には何種類ぐらいのモンスターが住んでるんだ? ドンの話ではペガサス、ユニコーン、バイコーンって聞いたんだけど」
「そうだぜ。ペガサスたちは翼があるから偉そうにしてやがるんだ。ユニコーンは五体しかいねぇ。バイコーンも俺様と仲間が三体だけだ」
「え? そうなのか? 意外と少ないんだなぁ?」
「ペガサスどもはクソ多い。だからいばり散らしてやがんのさ。大体八十前後はいたな」
「きょ、極端だなぁ!」

いや、動物(?)として数が多いのはいい事だ。
というよりもユニコーンとバイコーンが少なすぎる。
そう聞けば、この島の群れがそのぐらいであり他の島の同種たちの群れはもっと多いのではないか、との事。

「俺様たちはこの島に昔からいた群れだが、ペガサスどもは他の島の群れが合流して今の数になってる。一部のユニコーンや俺様の群れの奴らは他の島に食べ物を求めて走っていった」
「お前たちもそうだったのか……。しかし、ペガサス八十はなかなかキツイな」
「パパ……ショコラまた強い技で怪我させるかもしれないから不安だよぅ」
「しまった、その問題もあったな」
『最大限に手加減してみてもあの威力なのかい?』

と、ギベインの声にショコラが頭を下げる。
そして意を決したように開くなった場所に向かって口を開け、一応シロに「木に燃え移ったら消してね」と頼み……。

「ファイヤーブレス~」

とかなりやる気を抜いて炎を吐いた。
もちろん大惨事だ。
ショコラが放った炎は五メートル四方に燃え広がり、圧倒的な火力で以って六メートルほど遠くにあった木に燃え移り、葉を焦がす。
シロが慌てて吹雪でかき消すが、地面の砂は黒くなって焼け焦げた臭いを放つ。

「……最大限に手加減してこれか……。これはヤバイな……」
「リ、リリィのMPにも限界があるダワ……」
「俺の吹雪で力を加減出来ないか試してみましょう」
「おお、それはいい考えだな!」

というわけで、シロが吹雪を発動。
そこへ向かってショコラが最大限に手抜きしたファイヤーブレスを放つ。

「あ」

結論から言うと、吹雪が消えた。
シロの放った吹雪をかき消すほどに、ショコラのファイヤーブレスの威力の方が大きかったのだ。
これには、全員が唖然となる。

「…………」
「お、お力になれず……」
「い、いや……」
『では別なスキルならどうなの? 炎系の技はもう一つあったよね? 確かファイヤーボールとかいうの』
「え? そんなのあったっけ? あ、本当だ」

そしてよく見ると『ファイヤーブレスレベル9』になっている。
その事に気が付いて、スー……と血の気が引く。
思い返すとこのスキル、ずーっと使い続けてきた。
そして、このスキルは最初『ベビーブレス』というスキルが進化したものだった事も思い出す。
レベル9……と、スキルにレベルが設定してあり、更にいつの間にやらこんなにレベルアップしている事を考えると……。

「もしかして、ファイヤーブレスはもう一段階進化するスキルなのか?」
『その可能性はあるね。……しかし、突然スキルレベルが見えるようになったのは理由があるんだろうか? そういえば話が逸れていたけれど、シロは他の者のステータスが見える的な事を言っていたよね? それと関係があるのかな?』
「あ、ああ、その事であれば俺にもよく分からない……」
「ああ、ドンなら何か知ってるかもしれない。帰ってから相談しよう」
『うーん、そうか。分かった。で、早速だけど新たな熱源反応が接近中だ。数は十五。木々を無視して直進中だから多分空を飛んでいるだろう』
「な、なにぃー!?」
「ペガサスどもだ! そんな数で群れてやがるのはやつらしかいねぇ!」

カクさんが前足を持ち上げて苛立たしげに嘶く。
どうもカクさんにとってペガサスは忌々しい相手のようだ。
対するショコラは不安げなまま。

「仕方ない。ショコラ、このファイヤーボールで戦ってみよう。ボールってくらいだし、狙いを定めるのが大変そうだけど……」
「練習していい?」
『悪いけどその時間はなさそうだよ。先発五体急速降下を確認。急接近!』
「みんな、構えろ! ……あ」

そうだ、カクさんのステータスを確認しておこう。
戦いに参加してもらえれば助かる。
何しろ十五体ものペガサスが近付いてくるらしい。


【カクさん】
種族:バイコーン
レベル:30
HP:1245/619
MP:530/480
ちから:451
ぼうぎょ:320
すばやさ:1652
ヒット:52
うん:24
[戦闘スキル]
『踏み潰す』
『踏み付ける』
『蹴り付ける』
『蹴り飛ばす』
『突進』
『突き飛ばす』
『突き上げる』
『グランドランス』
『ストーンランス』
『石飛礫』
[特殊スキル]
『飛翔』
『騎乗』


「え、お前も強くね?」
「バイコーンのオスは喧嘩するからな」

と、鼻を鳴らす。
つまり、現代で言うところのヤンキー……。

「ペガサスの奴らは土属性じゃなく風属性だ! 俺様が活躍してやるぜ! ヒャッハー!」
「ちょぉ!? なにやる気になってんだ!? 言っておくが出来る限り怪我とかさせずに保護するんだからな!? おい! こら、カクさん! ああもう、シロ、カクさんのフォローを頼む!」
「りょ、了解!」
「ショコラはコブ付きならコブの位置を確認してファイヤーボールを試してみろ! 威力がでかかったらその時はまた考えるが……炎のスキルはお前しか持ってないんだ、頼む」
「う、うん」
「大丈夫、リリィがフォローしてあげるダワ!」
「うん、ありがとうリリィ」

頷いて、前を向く。
五体のペガサスが皆揃って首を擡げた。
その鼻先には風の塊。
恐らく『ウインドショット』だろう。

「えーと、風の弱点は~」
『火だよ』
「え、火のスキルってショコラの……あっ……」
「ストーンランス!」
「カクさーーーん!?」


その後、カクさんの大活躍により十五体全員あんまり無事じゃない感じだったが保護は出来た。


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