5 / 21
試験説明
しおりを挟む翌朝、あくびをしながら背を伸ばす。
ふぇー、高い布団ふかふかでマジよく眠れるわ~。
「聖女候補様、おはようございます……」
「ん?」
怯えたように入ってくる女官。
頭を下げて、食事の載ったトレイをテーブルに置く。
置いたら置いたでサッと入り口まで移動して、俯いて震えるのだから気分が悪い。
「食っていいの?」
「は、はい。もちろんでございます」
「…………」
手を合わせて、恵みを精霊に感謝する。
村の古い風習だが、おれはこれが結構嫌いではないのだ。
実際孤児のおれには食い物にありつける機会はまさに『幸運』だったから。
感謝すればまた、飯にありつける。
村長はめちゃくちゃありがたがるとすげー調子乗るからな~。
「……あのさー、用がないならそこにいなくていいんだけど?」
あんな震えられてちゃ、美味い飯も味がしなくなる。
そう思って声をかけたがやはりふるふるしながら「いいえ」と首を振られた。
「お、お食事が終わりましたら、試験のご説明を……」
「あ、そうなんだ」
マジでおれなんかに試験受けさせる気かよ、狂ってるわ。
ま、なんにしても向こうもさっさとおれには落ちて帰って欲しいはずだ。
こっちも聖女なんざ願い下げ!
双方の利害は一致してるよなぁ。
「ごっそーさーん。……で?」
手を合わせて、空の皿をトレイに戻す。
女官は周りを一度確認してから、おれの方へと寄ってくる。
一体なににそんなに警戒しているんだか。
もしかしてノワールか?
精霊騎士って精霊だよな?
精霊を信仰する教会の女官なら普通ありがたがるんじゃねぇの?
なんでビビってんの?
「え、ええと、それでは……今後受けて頂く試験についてご説明を致します。聖女候補様は全員で二十人……この人数は聖女候補の試験をまとめて受けられる人数としては、最大数と言われていて……試験はこの人数が揃うまで行われません。今回は貴方様で二十人目……貴方様は、『二十番目』と呼ばれます」
「ふーん?」
名前では呼ばれず、番号で呼ばれるって言いたいのか?
まあ、別にいいけど。
……フィーネ、ね。
それが一時の仮の名という事か。
もしかしておれの名前を聞いてこなかったのも、どうせそれで呼ばれるからか?
「試験の内容は直前に担当神官より説明されます。大まかに五つの試験があるとされ、それに合格した者が『聖女の試練』に挑戦する権利を得られるといいます。どの試験も休日を挟んで一日以内に終わるそうなので、何事もなければ十日後に『聖女の試練』を受ける資格のある聖女候補様が選出される事となるでしょう」
「え? 待ってくれ。その、一回目の試験に落ちたら帰れるとかじゃねーの?」
「は、はい。基本的には精霊騎士がいる間は……残って頂く形になるかと思います。送還に関しては、私もよく存じ上げないので……神官様方にお聞き頂ければと思います……」
「…………」
つまりすぐには帰れねーのか。ちぇ~。
「そして、あの……でも……ここ三年間で聖女は決まらず、ずっと繰り返していまして……最近は休日が取り除かれ、連日の試験に、ともなっておりますので……その……以前よりは、早くお帰りになる事も出来るかと……」
「ふーん、そっか。分かった」
「では、その……最初の試験の場所へご案内します。……試験はすべて『精霊騎士』と同伴で受けてもらうのですが……」
「ノワールと? えっと、ノワール?」
部屋を見回し、名前を呼ぶ。
すると、どこからともなく黒い画面と黒い鎧、黒いマントの漆黒の騎士が現れる。
その姿に女官は「ヒッ」と喉を引きつらせた。
あー、やっぱりノワールにビビってたのか。
「あ……っ、え、と、では、あの……ご、ご案内、します」
「あ、ああ」
完全に縮こまる女官。
一体ノワールのどこが怖いのだろう?
仮面つけてるから?
真っ黒だから?
鎧だから? ……でも騎士って鎧着てるもんじゃねーの?
「んじゃあ、まあ、行くか」
「はい、主」
さっさと帰るためにも、さっさと終わらせよーっと。
0
あなたにおすすめの小説
異世界に喚ばれた私は二人の騎士から逃げられない
紅子
恋愛
異世界に召喚された・・・・。そんな馬鹿げた話が自分に起こるとは思わなかった。不可抗力。女性の極めて少ないこの世界で、誰から見ても外見中身とも極上な騎士二人に捕まった私は山も谷もない甘々生活にどっぷりと浸かっている。私を押し退けて自分から飛び込んできたお花畑ちゃんも素敵な人に出会えるといいね・・・・。
完結済み。全19話。
毎日00:00に更新します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――
ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。
魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。
ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。
誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。
契約結婚の相手が優しすぎて困ります
みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
チョイス伯爵家のお嬢さま
cyaru
恋愛
チョイス伯爵家のご令嬢には迂闊に人に言えない加護があります。
ポンタ王国はその昔、精霊に愛されし加護の国と呼ばれておりましたがそれももう昔の話。
今では普通の王国ですが、伯爵家に生まれたご令嬢は数百年ぶりに加護持ちでした。
産まれた時は誰にも気が付かなかった【営んだ相手がタグとなって確認できる】トンデモナイ加護でした。
4歳で決まった侯爵令息との婚約は苦痛ばかり。
そんな時、令嬢の言葉が引き金になって令嬢の両親である伯爵夫妻は離婚。
婚約も解消となってしまいます。
元伯爵夫人は娘を連れて実家のある領地に引きこもりました。
5年後、王太子殿下の側近となった元婚約者の侯爵令息は視察に来た伯爵領でご令嬢とと再会します。
さて・・・どうなる?
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる