終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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12歳編

事後——サルヴェイション(1)

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『キィヤァアアァァァァアアアアァァァ! ほほほほほほほほ本物のギア・フィーネシリーズ一号機じゃあないですかぁァァァッ!』

 うわ、と引いた。
 サルヴェイションを見た途端にこの悲鳴。
 鷹ってクールなイメージだったけど、ギギのせいで完全に崩れたなぁ。
 ちなみにここは城。
 サルヴェイションを研究塔に入れることはできないので、ギギに直接来てもらった…………ん、だけどー。

「なんだあれ、研究塔の“遺物”か!? も、持ち出せたのか!?」
「喋ってるぞ!」
「と、とんでもねぇ……ヒューバート殿下は他にも遺物と関わりがあったのか」
「だからあんなすげえもんを見つけてこられたんだろう」
「遺物の研究が進めば、結晶化した大地クリステルエリアから土地を取り戻せるって本当かな?」
「そうなのか!?」
「馬鹿、あくまで噂だよ」

 サルヴェイションを見てはしゃぐギギ。
 と、それを見て城内で働く文官武官関係なく野次馬が集まる。
 立った状態だと城壁よりでかいから、できるだけ目立たないよう、しゃがんで待機させているのだがあんま関係なかったなこれ。

「っていうかギギ、お前はしゃぎすぎだぞ、気持ち悪い」
『これが興奮せずにおれますか! ギア・フィーネですよギア・フィーネ! しかも一号機じゃありませんか! 攻守共に優れたバランス型であり、他のシリーズとは比べ物にならないほどの謎を持つ幻の機体! 世界で確認されたのはたったの五回でありながら、その存在を知らぬ者はなし! もっとも多くの民間人を虐殺した——闇世の悪魔ですよ!』
「え」

 なん、だって?
 人を、民間人を? 虐殺?
 サルヴェイションが?

『ギギの記録にもしっかり残っています! 帝国暦104年、十月八日、午後九時四分。場所はアスメジスア基国第二軍事主要都市メイゼア。死者、行方不明者、約310897人余。軽傷、重傷者、437596人余。軍関係者に至っては生存者が154人。それ以降は発見されては雲隠れし、消息は不明ですが……世界で初めて人類の前に現れ、敵対したギア・フィーネです。その苛烈な記録から、世界はギア・フィーネシリーズの争奪戦を行ったのですよ!』
「っ……」

 まさか、と思ってサルヴェイションに乗り込む。
 なんか『登録者より現代の情報共有を申請中』とか言ってたけど、確認せずにはいられない。

「ってことを言ってるんだが、そうなのか?」
『概ね事実であると回答する。だが、あの時は当機登録者の生命が脅かされたことによる、防衛システムの正常な判断である。最初の登録者は毒を投与され、後遺症で死亡した』
「え……」

 サーっと、ギギにサルヴェイションの虐殺話を聞いた時よりも血の気が引く。
 毒を投与?
 俺、毒を蜂に投与されたのであの苦しさはわかる。
 本当につらい。
 思い出しても吐き気がする。
 思わず口を手で覆った。
 しかも、助からなかった?
 後遺症、なるっていうもんな、毒。

『対話が可能なAIを積んでおられる!』
『ヒューバート、そのAIは何者だろうか』
「あ、えーと、研究塔っていう……大和? の研究施設が現代にも生き残ってて、そこの管理をしてるやつ。ギギっていうんだ。俺より詳しそうだから連れてきた」
『大和の。確かに当機の記録でも現在地は大和となっている』

 ギギ、俺の肩の上でめちゃくちゃそわそわと操縦席を見回している。
 お上りさんかよ。
 大興奮すぎじゃん?
 お前、研究塔の管理するAIロボだろー!?

『現在の世界地図を所望する』
『はいー! 我らが持っているものを転送しますー!』
「ギギ……」

 なにこれ、憧れのアイドルに対面したオタクかよ。
 ……かつてレナに出会った時の自分を思い出す。
 はい、ブーメランでーす。
 これ以上はなにも言いませーん。

『照合を行う。また、現代のデータが圧倒的に不足している。引き続き情報の共有を求む』
『なんなりとぉ!』

 でもいいのか?
 まあ、いいのか?
 いいのかなぁ?

「サルヴェイションはこれからどうするんだ?」
『当機の最優先命令は“歌い手”の保護と防衛。レナ・ヘムズリーを守る者に協力を行う』
「その、歌い手ってなんだ?」

 ずっと気になってたんだけど。
 千年前の聖女の呼称かな?

『歌い手とは調律者。当機含めたシリーズ全機にとって重要な存在』
「? よくわからないんだけど」
『ギア・フィーネが神の鎧となるための鍵』
「……いや、ますますわからない……神? の、鎧? 神ってこの世界にいるの?」
『いない。だから神を降ろさねばならない』
「え? うーん? 神を降ろしたらこの世界って助かる? 具体的に結晶化した大地クリステルエリアが普通の土地に戻るとか。そういえばサルヴェイションは結晶化した大地クリステルエリア内でも結晶化してなかったよな? どういうことなんだ?」
『それに関しては不明。情報が圧倒的に不足している』

 ええええぇ~……。
 振り出し~?
 思わず天井を仰ぎ見上げたよね。

「……でもそれってつまり、千年前の戦争云々が原因で結晶病が広がったとかではないってことか? 戦争と結晶病は切り離して考えるべき? でもサルヴェイションとあの金髪の子が結晶化してなかったのは、耐性があったからとしか思えないし?」
『情報不足により回答不可能』
『はいー、同じくー』
「ぐぬぅ」
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