終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

文字の大きさ
220 / 385
間章

弟の恋模様(1)

しおりを挟む
 
 霜月になった。
 デュレオのコンサート——ライブは大成功。
 なんなら反王家で残っていた一部が、狂信者に反転した。
 あれ、本気で怖い。
 ディロック・レバー伯爵という、反王家筆頭みたいなやつがデュレオのライブ以降手のひらクルーってルオートニス守護神教信者に転じたのだ。
 その人今のところ一番権力と発言権が残ってた人なんだけど、あまりにも綺麗な瞳でデュレオを賞賛する言葉だけを紡ぐので思わず「洗脳でもした?」ってデュレオに聞いちゃったよね。
 なお、デュレオの返答は「洗脳できなくもないけどあんな醜い信者は要らないかな……」だそうで。
 ついでに言うとドン引きして失笑してた。
 あと母上も思った通りデュレオにどハマりしたよ。
 父上がやきもち妬くくらい「ヒューバート、デュレオ様のグッズはいつできるのかしら? 次のコンサートは? 今度は観劇場を使って寄付金を集めましょう! わたくしいくらでも出すわよ!」とウキウキし始めてしまった。
 思えばルオートニスの音楽って、太鼓やギターもどきぐらいしか楽器も残っておらず、歌も少女が歌うアカペラ。
 そこにきてのあの大画面、爆発、色とりどりの光を纏い、多種多様な楽器の音を組み合わせた超イケメンの美声ライブは刺激が強すぎたのだろう。
 ついでに言うと、十曲も歌ってくれたし。
 あの曲数の多さも魅力の一つ。
 なんならデュレオ、持ち歌は七十曲以上あるらしい。
 元々プロだから、当たり前だけど。
 その上一曲一曲、イメージ衣装に着替える——多分千年前の映像技術が使われているもんだから、色んなデュレオ・ビドロを一日で怒涛の勢いで突きつけられてとんでもないことになっている。
 学院も未だ浮き足立っており、話題がデュレオ一色。
 なお、生徒だけでなく先生たちもだ。
 なんなら数名の先生は刺激が強すぎたのか、未だに心が帰ってこない者もいる。
 市井の方も先生たちみたいなのが多いらしくて、聖殿へ足を運ぶ者が増えたらしい。

「……やりすぎたな」

 と、今言っても遅いのだが。
 俺は前世のテレビとかで慣れてるけど、この時代の人間たちにとってはとんでもない劇物だった。
 仕事が手につかない人たちが大量に発生して、城も業務が滞っている。
 デュレオは「この俺をこんな狭い場所で飼えると思っているなんて、とか出だしに言ってたが、小出しにしないと他国もこうなりそうなのでしばらくは不出だよお前。
 いやぁ……アイドル歌手の力を舐めてましたね、俺も。
 さすがは千年前のカリスマシンガーソングライター様でしたわ……。
 そりゃ、軍の広告塔にも抜擢されますわ……。

「兄上!」
「レオナルド、聖殿の様子はどうだ?」
「そ、そのことでご相談がっ」

 ですよね。
 王宮でレナとジェラルドが来月の二年生進級試験の勉強をしている間に、俺はレオナルドと聖殿の今後について話し合いにきたのだ。
 学院の談話室を貸し切り、入り口に護衛騎士を置き、顔の青いレオナルドと向き合う。

「聖殿への寄付が……留まるところを知りません……!」

 ですよね。
 はは、と乾いた笑いを浮かべつつ、減る一方だった寄付金が倍どころか増え続ける恐怖にレオナルドが苛まれているのをなんとかしなければ。
 兄として、任命した者の一人として。

「父上に相談はしたのか?」
「少し考えられたあと、『お前の好きなようにやってみなさい』と言われましたぁ!」

 それは泣いちゃっても仕方ない。
 父上、なかなかにスパルタだなぁ!

「寄付のほとんどは神デュレオ様へのものですから、神デュレオ様のご意向をお聞きすべきなのかとも思うのですが……そもそも神デュレオ様と会話するのは恐れ多くて……!」
「お前もかぁ」

 デュレオにどハマりした一人だな。
 無理もないけど。

「レオナルドには紹介した時説明したと思うけど、デュレオは食人衝動のある邪神でもあるんだよ」
「は! ……は、はい、それはお聞きしています」
「別に人間を食うのが好きなわけではないけど、国を滅ぼした実績ならばっちりある」
「あ……」
「俺としては——いや、まあ、俺もレオナルドが自分で寄付の使い道を、決めた方がいいと思うよ」
「そんな!」

 父上のスパルタ、と思うけれども、きっとこれはレオナルドのためだ。
 レオナルドだってもう15歳だし。

「んー、じゃあ取引しよう」
「取引?」
「俺は今国内の貴族勢力とか、マジでわからない。教えてほしい」
「は、はい。それは、はい」
「その代わり、レオナルドの相談には俺の考えを伝える。これが取引。どうだ?」
「は、はい! ありがとうございます!」

 レオナルドに情報をもらったところによると、やはり神格化した神々が俺とルオートニス王家についたのは相当でかかったらしい。
 国内の貴族勢力は今や9.9割王家派。
 残りの0.1も、デュレオに踏み潰されて搾りカスのよう。
 しかし、たった数年でここまで手のひらを返す貴族たちよ……。
 元々の王家派と中立派以外の起用は、父上に引き続き要相談だな。

「お役に立ちそうですか?」
「そうだな……まあ……うん。父上が新しい村の建設をしようとしているだろう?」
「はい」
「そこの領主を任せる者は、王家派が多いと思うんだ。しかしその補佐が足りないから、元々反王家の者も使わねばならない。中立寄りだった者に新事業を頼むのは少し悩むな、という話だ」
「な、なるほど」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

寿明結未(旧・うどん五段)
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...