終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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二人の聖女と悪魔の亡霊編

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 ラウトかディアスに頼もう、と振り返る。
 しかし、特にラウトがものすごい顔でシャルロットを睨む。
 な、なんかずっとこういう対応なんだけど、過去になにかあったんだろうか。

「ディアス、シャルロット王女がコルテレ東の結界を修復したいらしいんだけど、連れて行ってあげてくれないか?」
「お前が行けばいいのではないのか?」
「いや、俺は一応現場責任者だし——ジェラルドとファントムから目を離すのが怖い」
「なるほど。よかろう。リリファの子孫ならば“歌い手”である可能性も高いしな」
「!」

 “歌い手”——!
 あ、そうか……スヴィア嬢がそうじゃなかったから気を抜いてたけど、シャルロット様とミレルダ嬢が“歌い手”の可能性もあるのか。

「あの、でも“歌い手”が多いとなにかあるんですかね?」
「そうだな……現代だとあまり意味はないかもしれないが……千年前は殺害対象だったからな」
「え? な、なんでですか?」

 思いも寄らない答え。
 なんで?
 ギア・フィーネを強化するブースターのはずなのに?

「もちろんその勢力の方針にもよる。ミシアは欲しがっていたよ。しかしアスメジスア基国とカネス・ヴィナティキ帝国は、第一級殺害対象だった。ギア・フィーネを強くしてしまう力があるからだ。それが発覚した当時の戦況は、五号機が反乱に加担したばかり。カネス・ヴィナティキは第二皇子が帝位を手に入れようと、皇位継承権第一位の“歌い手”——ラミレス・イオ・カネス・ヴィナティキをどうやって正当な理由で殺そうかと策を巡らせていたからな。彼女が“歌い手”だったことは、ちょうどいい理由になったらしい」
「っ」

 カネス・ヴィナティキ帝国は一度もギア・フィーネを得られなかった。
 大国であるにも関わらず、だ。
 ラウトは『カネス・ヴィナティキの英雄、スヴィーリオ・イオは単体でギア・フィーネと同等』とまで言っていたが、それでもやはり“個人”とギア・フィーネは比べるべくもないのだろう。
 そうか、“歌い手”が保護対象だったのは、ギア・フィーネの関係者だけ。
 外から見れば、脅威でしかないのか。
 リリファ・ユン・ルレーンも、共和主義連合国軍からすると最初から殺害対象だったらしいし。
 デュレオだってよく考えると当時は共和主義連合国軍所属の軍人だ。
 アスメジスア基国とカネス・ヴィナティキ帝国からすれば、普通にいない方がいい。

「それに、もし“歌い手”ならばお前の側にあまり置かない方がよかろう」
「え、なんでですか?」
「馬鹿者、忘れたのか! お前はすでにギア3に到達しているのだぞ! まだろくにGF電波と脳波が同調しているわけでもないのに!」
「あ」

 そ、そういえば。

「迂闊に“歌い手”の歌を搭乗中に聴いたら、うっかりギア4に到達してしまうかもしれないだろう!? 死ぬぞ! 今度こそ!」
「……は、はい……そ、そうでした……」

 そうだったぁーーー!
 結構マジで命が懸かっていた、俺!

「——そうだ、そのこと、ザード……いや、ファントムに相談しておくといいかもしれん。ギア・フィーネに関して、あの男より詳しい者はいないはずだ。……むしろ新しいサンプルとして弄くり回される可能性もゼロではないが……」
「え?」
「命が懸かっているのだから多少は我慢して……相談しておくといい。四号機の登録者のお前のことを、無碍にはしないだろう。多分!」

 未だかつてディアスから聞いたことのない大きな「多分!」が出た時点でなに一つ安心材料がないんだが!?

「あ、あの……」
「ああ、コルテレの東の結界まで連れて行くのは俺が承ろう。ルレーン国の姫よ」
「あ、は、はい。医神様に連れて行っていただけるなんて光栄です。よろしくお願いします」
「待って! ボクも行くよ!」

 って、シャルロットの後ろから駆け寄ってきたのはミレルダ嬢。
 俺と彼女の間に入って、ディアスを睨むように見上げる。

「シャルロットを一人になんてできない! ボクはシャルロットの護衛なんだから!」
「まあ、大丈夫よミレルダ。この方は医神様でいらっしゃるのよ。なにも恐ろしいことなどないわ。しかもこの方は一号機の登録者様よ?」
「でも! 男じゃないか!」
「!」

 え、ディアスがシャルロットになにかセクハラ的なことをするとでも?
 ……それはそれで絵になるだろうなぁ、と思わないでもないが一切想像できない。
 俺の想像力が死んでるからじゃないぞ!
 単純に、まったく! これっぽっちも! その可能性を絞り出せないのだ!
 だってディアスだし!

「男だとなにかまずいのだろうか?」

 ほら、これですよ。
 多分シズフさんも同じようなこと言うだろうなぁ。

「性的な危険を示唆しているのではないか?」

 と、口を挟んできたのはラウトだ。
 それを聞いてディアスが「ああ、なるほど」と手を叩く。
 ダメだこいつら。

「特にそのような欲求はないので安心するといい」
「シャルロットに女の子として魅力がないっていうの!?」

 お、ミレルダ嬢、めんどくさい切り返ししてきたぞ!
 話がめちゃくちゃ拗れるやつじゃん、それ!

「そういうわけではないと思うが、そもそも神格化してから男や女という概念を超えて、こう、一括りに“人間”というカテゴリの生物にしか見えなくなっているというか」

 こっちはこっちでアウトなことを……!
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