終末革命ギア・フィーネ〜転生先が婚約破棄した聖女を追放してザマァされる悪役王子なんだが、破滅したくないので彼女と幸せになります!〜

古森きり

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二人の聖女と悪魔の亡霊編

強襲(1)

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「失礼いたします! ヒューバート王子殿下、並びにお付きの皆様! 敵襲にございます! すぐにご移動をお願いいたします!」
「敵襲だと?」

 うつらうつらしてきた俺の耳に、バッターンという大きな扉を開く音と、敵襲を告げる男の声。
 聴力補佐の魔法をジェラルドが使ってくれて、ディアスに支えられながら起き上がる。
 ラウトがすぐに「どこからだ」と問いただすと、男は言いづらそうに口を噤む。
 このタイミングで、この場に強襲してくる“敵”。

「コルテレの王か。しかし戦力など連れていたのか? 辺境伯たちはこの領館に来ているよな?」
「あ……そ、その……我がルレーン国が戦力として蓄えておりました、ギア・イニーツィオ三機を強奪されたようで……!」
「ギア・イニーツィオ?」

 俺が聞き返すとラウトが「ファントムが作っていた玩具だろう」と溜息混じりに告げる。
 あー、そういえばあの人なら絶対人型兵器造ってそうって話はしてたな。
 なるほどね。
 ファントムが

「ジェラルド、ギア・フィーネと石晶巨兵クォーツドールを全機[隠遁]で隠してくれ。シャルロット様とソーフトレス、コルテレ両国の者たちにも、抵抗せず一度降参したように見せかけてほしいと提案してきてくれないか? 対処はルレーン国の国守がやるだろう」
「え!? し、しかし……」
「大丈夫。こうなる気はしていたんだ。不安にならずとも悪いようにはならない。なにかあればこちらでも対処を手伝おう」
「あ……は、はっ! すぐにお伝えして参ります!」

 やれやれ、結構大ごとになってしまったな。
 でもまあ、この事態はある程度ファントムが予定していたものだろう。
 ギア・イニーツィオについては早めに説明がほしいところだけど。

「あ、ギア・イニーツィオってみんな知ってた?」
「? 結晶化津波の時にいただろう?」

 ウッソ、ディアス俺それ知りません。

「シャルロット様とミレルダ嬢とご先祖様が乗ってたよ~」
「シャルロット様とミレルダ嬢が!? ……あ!」

 百合だ!
 思い出したぞ!
 尊い光景で記憶が浄化されていた!

「あれがそうなのか」
「どうやらファントムがギア・フィーネを模して作り上げた、完全にオリジナルの新型らしい。機体性能は千年前の新型より高かった。おそらく大和タイワ瑪瑙メノウ級だろうな」
「えっ」

 大和タイワ瑪瑙メノウといえば始まりの石晶巨兵クォーツドール光炎コウエンの原型。
 元の設計図がすごかったので、運動性能もそれなりに高い機体に最初からできたのだ。
 それに、大和タイワ製の疑似歩兵前身兵器は元々世界的に高い技術で作られており、その性能はアスメジスア基国の二足歩行兵器を上回る。
 ただ、その分量産が難しく共和主義連合国軍内でも主に隊長機に採用されているほど、数が少なかったそうだ。
 共和主義連合国軍はレネエルが大和タイワに技術提供を受け、安価な疑似歩兵前身兵器を開発していたらしい。
 しかし、そんな付け焼き刃で軍事国家であり大国アスメジスア基国とカネス・ヴィナティキ帝国に抵抗し切れるはずもなく。
 二号機と大和タイワの新型が主柱となり、ミシアの奇襲でなんとか戦線を維持している状況。
 ……それほどまでに、ギア・フィーネが一機あるのは大きかった。
 そして、当時ギア・フィーネに一番近い性能を誇っていたのが大和タイワ製疑似歩兵前身兵器の最新鋭機瑪瑙メノウ
 なんと世界でたったの五機しか製造されておらず、実践投入されたのは三機だけだったという。
 光学迷彩機能と光学防衛機能を備えた大和最先端科学の結晶。
 飛び抜けて高い能力はないが、同時に非常にバランスの良い機体。
 むしろ、隊長機として腕のいいパイロットが搭乗していたためかなり強かったらしい。
 ギア・イニーツィオはそのレベル。

「ギア・フィーネの『ハッキング』はなさそうだったが、ファントムが造ったのであればギアはありそうだな」
「現代の“魔法”にも対応していた。パイロットがファントムの場合俺たちも油断はできないだろうな」
「まあ、あの男が人型兵器に乗ったらそれは鬼に金棒というやつだ」

 怖い。
 ラウトがなにも言わない。
 むしろディアスの言葉に「チッ」と舌打ちして苦々しそうにしている。
 俺はほとんど意識飛んでたけど、ファントムが乗ったギア・イニーツィオはそれほどにヤバかったのか……。

「ヒューバート様!」
「おわ、シャルロット様」
「ノックもご挨拶もなく失礼いたします。ヒューバート様のご提案を聞きました! 降伏の意を示せとはどういうことですか!」

 あ、そうか。
 シャルロット様はコルテレの王に求婚されている状況。
 降伏したら嫁にされかねない。

「安心してください。降伏した——フリをして欲しいんです」
「フ、フリ……!?」
「はい。ギア・イニーツィオという機体の性能は今、ラウトとディアスから聞きました。ファントムが造った人型兵器……なんですよね?」
「は、はい」

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