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初パーティプレイ(2)

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 エイナに『今、リアルの妹や友人と狩りをしているんですが、エイナさんも一緒に遊びませんか?』とメッセージを送る。
 比較的すぐに返事がきて、場所を聞かれた。
 第二の町の近くの森、三又に分かれた道で待ち合わせをすることになる。
 
「SBOってパーティは十人まで組めるんだ? ずいぶん大人数でいけるんだなぁ」
「来月大型レイドバトルのイベントがあるらしいので、それを想定して大人数でパーティを組めるようになっているんじゃないでしょうか」
「へー、レイドイベントがあるんだ! 今度彼女さんも誘ってみようかな~」
 
 シーナが来月のレイドイベントのことをバアルに話しながら、待ち合わせ場所に歩み寄る。
 その時、バアルが告げた人物にチコを始め三人が真顔になった。
 “彼女さん”。
 綾城珀の、恋人!
 
「そ、存在するんですか? ほ、本当に……!?」
「え? うん。実在するけど……え? 僕の彼女さん? 存在を疑われてるってこと?」
「あ、会えるんですか……?」
「ゲームの中なら別にいいよ。リアルは無理だけれど」
 
 その時、チコに緊張が走ったのをお兄ちゃんとカイセイは感じ取った。
 今の最推し、綾城珀のガチ彼女に会える可能性。
 そもそもアイドルに彼女はいるもんじゃない。
 綾城珀はそんな常識を覆す『彼女あり公言のアイドル』。
 そんな綾城珀を推すファンは、彼女の存在も認知した上で推しているものだ。
 けれど、いざ存在を目の前に差し出されたら?
 彼女ありを公言していて、認知しているとしてもさすがに目の前に現れたらファンを続けられるのか?
 
「あ、会ってみたい……珀様の彼女……」
「え? 様?」
「す、すみません、先輩! チコは先輩のファンで……!」
「え!? そ、そうだったの!? それなのに僕の彼女さんに会ってみたいの!? ええ? だ、大丈夫?」
 
 別れろ、とは五十人に一人の割合で詰められるらしい。
 そして「本当にいるのなら紹介すべき」という上から目線のファンも。
 チコのこともその類、と思われたのかもしれない。
 
「会ってみたいです! だって、珀様の命の恩人なんですよね!? お礼を言いたいです! 珀様を現実世界に連れ戻して、アイドルとして会わせてくれてありがとうございます! って!」
 
 けれどチコもシーナと同じ年季の入ったドルオタ。
 その返答は相当に予想外だったのか、バアルがきょとーんとしてしまう。
 
「あ――あはは! そんなこと言われたの初めて!」
「ふええ? そ、そうなんですか?」
「うん。……でも現実世界に連れ戻してくれたのは、彼女さんだけじゃなくて――」
 
 バアルがなにかを言いかけた時、歌声が聴こえた。
 他のパーティが戦っているのだろうか。
 このあたりは魔物があまり出現しないので、おかしいな、と思ったがカイセイの腕が急に吹き飛んだ。
 次にチコの胴が真っ二つになり、体が金色の粒になって消滅――セーブポイントへの強制帰還。
 二人を傷つけた凶刃が、バアルへと振り下ろされる。
 だが、バアルはそれを杖でいなす。
 シーナの体を突き飛ばし、木の根に尻もちをつくとようやくなにが起こっているのか、なにに攻撃されたのかがわかった。
 他のプレイヤーだ。
 
「え、な……!? ビギナー狩り!?」
「魔法使いが生意気だなぁ!!」
「先輩!」
 
 バアルが杖を左手に持ち直す。
 前衛の剣士が二人、後衛の弓士が二人、槍士と魔法使いが一人の六人組。
 剣士がの一人が振り上げた剣を杖で受け止め、そのまま流すとバアルの杖の先で剣士の胴を殴りつける。
 その間に、バアルの唇が新しく覚えたという魔法の歌を口づさむ。
 
「ギャハハ! 初期バフじゃねーか! ちょっとは動けるみてぇだけどビギナーはしょせんそんなもんだろ!」
「淳くんは魁星くんと町に!」
「せ、先輩!」
 
 バアルはフルフェイスマスク型ではなく、歌唱力による追加バフが反映されない。
 彼の歌声で、フルフェイスマスク型を使用すれば間違いなく精密採点で追加バフがかかるはずなのに。
 カイセイが右腕を押さえながら歌唱でバフを行っても、六対一では振りすぎる。
 
(クソ! サービス開始間もないから、プレイヤーキルの罰則がゆるいと思って……!)
 
 プレイヤーキルの旨味は、どのVRMMOに置いても趣旨が対人でもなければ罰則ばかりでたいしたことはない。
 けれど、どのゲームでも必ずこういうビギナー狩りやプレイヤーキラーが現れる。
 ゲーム自体の治安を悪くしたいのか、弱い者を甚振って楽しみたいのか。
 歌バフをバアルが重ねても、相手は六人がかりでバフを盛ってくる。
 言われた通りにカイセイと逃げるべきか、と体を動かそうとしたら、頬を矢が掠めた。
 弓士が弓を引いて、シーナたちを狙っている。
 逃げようと立ち上がったところを狙われるだろう。
 
「た、戦うしかない。カイセイ、歌を」
「わ、わかった」
「くっ!」
「「先輩!」」
 
 相手のバフが、バアルのプレイヤースキルと杖の耐久値を超えた。
 すぐさまバアルが装備変更して長剣を手に持ちかえる。
 だが、迫るもう一人の剣士の剣を避けるのは――

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