175 / 553
コラボユニットライブ(3)
しおりを挟む呼ばれてすぐにそのまま列になっていくメンバーたち。
お辞儀をしたり、客席に手を振ったりして、ついに全員がステージに揃う。
淳が「顔だけでもお気に入りのアイドルがいたら名前を覚えてあげてくださいねー。物販に参加アイドルの名前入りグッズも置いてありますので、忘れそうな人は帰りに名前入りグッズをご購入よろしくお願いします!」とさらなる宣伝。
宣伝上手か?
メンバー全員「ありがとう音無……」と内心で手を合わせる。
「最後に本人たちにも自己紹介してもらいますので、目で追いかけておいてくださいね~。そして、『決闘』についてもう少し詳しくご説明します。『決闘』は星光騎士団の“特権”です。譲れないものがあった時にグループ同士のトラブル解消のために用いられます。定期ライブで双方が同じ曲を歌い、在校生とライブを見にきたお客様、公式ワイチューブチャンネルにて生配信を見てくださっているリスナーさんにジャッジしていただきます! 投票の仕方もご説明しますね。会場の方は東雲学院芸能科公式ホームページ、『イースト・ホーム』のトップページからチームA、チームBのパフォーマンス後にどちらかへご投票ください! ワイチューブで観てくださっているリスナーさんは、アンケート機能からご投票くださいね~。説明が長くなりましたが、このシステムは東雲学院芸能科の定期ライブで『決闘』が起こったら同じルールで投票できますので、ぜひぜひ、今後も楽しく東雲学院芸能科の定期ライブに遊びにきてくださいね~」
ユニットメンバーからの、尊敬の眼差し。
淳のMC能力が高すぎて、魁星と周以外笑顔を貼りつけたまま震えている。
東雲学院芸能科は現場主義。
特に星光騎士団は一年生であっても容赦なく仕事に放り出す。
質疑応答はもちろん、先輩たちのMCを見ながら覚えて、場数も踏んでいく。
中でも淳は、劇団の方でも練習していた。
本来『決闘』の時は執行委員会からローテーションでMC及び審判を派遣してくるけれど、今回は一年生だけでやらせよう、と言うことになったらしい。
「ここまで大丈夫ですかね? わからないことがあったらとりあえず『イースト・ホーム』で検索してください。皆さんの清き一票で、我々の運命が決まりますので! ではでは、前振りが長くなりましたが、そろそろ本日限定のコラボユニット――始動させていただきます!」
淳が叫ぶとチームBがステージ後ろの際に並び直し、チームAが位置につく。
スタッフが曲を流し始める。
先制は不利だが、チームBには日守がいるのでこのくらいは――ハンデだ。
「「「~~~♪ ~~~~♪」」」
出だしは全員で。
そこからは位置を替えつつ、最初のAメロ一節を周、二節目を淳、三節目を千景と歌唱力つよつよ組で固めてBメロを全員。
歌詞の振り分けはチームメンバー全員で話し合い、決めた。
だから楽しく歌い上げ、全員がミスもなくパフォーマンス終了。
そのままチームAがステージの後ろに向かい、チームBメンバーがステージ中央へと進む。
残った淳が「次はチームBのパフォーマンスです! それではご覧ください!」と言って脇へと移動する。
その瞬間、日守がマイクのスイッチをオンにして叫ぶ。
「祭りの時間じゃーあ!」
淳もギョッとした。
だが、日守風雅のキャッチコピーは『祭り大好きお祭り男』だ。
同じ曲が開始したが、始まりの位置も歌い出しは魁星一人、とチームAとまったく違うパフォーマンスの仕方。
チームAメンバーもチームBメンバーのパフォーマンスを初めて観たが、魁星を中心にしたやり方。
チームAのパフォーマンスは全員に一度はセンターを経験するように、という配慮があったのだが、チームBは真逆。
ただ、それをしたのには理由がある。
魁星がやはり、飛び抜けて歌とダンスが上手い。
なにより顔とダンスが人目を引く。
しかし、チームBがやや全体的に困惑している。
魁星の隣に、日守が挑むように陣取っているのだ。
「あれ――」
「うん。すごいね……」
入学から今まで、練習をサボっていた日守。
対して魁星はずっと星光騎士団で扱かれてきた。
実力差はどう頑張っても埋めようがない。
それを埋められるのは――天才的な才能のみ。
そして日守にはそれがない。
ないと思っていた。
とんでもない。
『俺を見ろ! 俺を見ろ!』
そう叫んでいるかのような、強烈な存在感。
笑顔も歌声もダンスも、なによりオーラ……雰囲気も。
今までまったくそんな感じはしなかったので、日守風雅は『お客さんのいるステージ』で真価を発揮する“天才型アイドル”だということが今、発覚した。
歌もダンスもやはり、他のメンバーに比べて下手くそで、まして魁星と並んで前へ出たら当然、その差が非常に目立つはずなのに。
その技術力も歌唱力の差も吹っ飛ばす。
アイドルにとってもっとも必要不可欠なモノ。
存在感。
「っ――!」
だがどうやらその日守の姿に魁星も焚きつけられたらしい。
淳も周も目を見開く。
「~~~~♪」
日守に引けを取らない、聴いたこともないほどの歌声。
魁星はこんな歌い方をするタイプではない。
一番は周りを見ながら、周囲のバランスを調整しつつ強みを強調したパフォーマンスだったのに、日守に煽られるように二番が始まると一気に周りを置いてけぼりにして『花房魁星』を出してきた。
技術も歌唱力もある魁星が“自我”を出してきたら、日守も太刀打ちできない――なんて思っていた時期が一瞬でもありました。
「「~~~♪」」
とても合唱ではない。
あれはもう――戦争だ。
たった二人の、ステージ上の。
101
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
美人なのに醜いと虐げられる転生公爵令息は、婚約破棄と家を捨てて成り上がることを画策しています。
竜鳴躍
BL
ミスティ=エルフィードには前世の記憶がある。
男しかいないこの世界、横暴な王子の婚約者であることには絶望しかない。
家族も屑ばかりで、母親(男)は美しく生まれた息子に嫉妬して、徹底的にその美を隠し、『醜い』子として育てられた。
前世の記憶があるから、本当は自分が誰よりも美しいことは分かっている。
前世の記憶チートで優秀なことも。
だけど、こんな家も婚約者も捨てたいから、僕は知られないように自分を磨く。
愚かで醜い子として婚約破棄されたいから。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる