263 / 553
今年の勇士隊(1)
しおりを挟む翌日はSBOの中でSBO1周年記念ライブ。
Blossomメンバーのライブで全力応援のシーナとチコと両親のアバター。
「これ無料でいいのぉ!? うわーん! 栄治様ぁー!」
「かっこいいかっこいいかっこいいかっこいい……」
二ヶ月ぶりに見た綾城もかっこいい。
というか、ますます仕上がっている気がする。
今年の夏の陣も優勝して、殿堂入りしてしまうんじゃないだろうか?
そのくらい、Blossomの人気は鰻登りの勢い。
――だが、裏を返すとこの勢いを危険視する事務所も多かろう。
(多分、秋野直芸能事務所としては元魔王軍の三年生たち――朝科先輩たちをIG夏の陣にぶつけて勢いを削ごうとしている……んだろうな。でも……)
Blossomのデビュー曲のイントロ。
やばい、とチコとともに心臓を強く持ち、あのセリフがくるのを覚悟する。
が――
『おいで』
ぶつん。
目の前が真っ暗になった。
SBOの……現実ではないアバター越しのはずなのに、シーナ……淳は自室で目を覚ます。
失神していた時間は約三十分。
多分ライブ終わってる。
神野栄治の、デビュー曲間奏に入るあのセリフの威力、去年のデビュー当時から増していやしないだろうか?
淳、この一年でしっかり耐性をつけてきたと思ったのに全然失神した。
あの人の色気やばすぎる。
(朝科先輩たちのお色気もすごいけど、俺がファンすぎるせいなのかやっぱり栄治先輩の色気の方がダメージでっかいんだよなぁ……)
ログインし直す。
ファーストソングの広間に出ると、ライブはやはり、Blossomから魔王軍になっていた。
新生魔王軍は茅原一将と麻野ルイ、長緒幸央、緋村壮馬、飯葛快斗の五人が“フルメンバー”としてパフォーマンスを行っていた。
魔王は茅原。
四天王は新たに長緒、緋村、飯葛が参入。
一年生たちも今は何人残るか不明だが話題に上がった楪ルシルくんがいた。
有名なSNSモデルとのことだが、自分の魅せ方をわかっているパフォーマンスをしている。
親のエゴでSNSモデルをやっていそうだったが、存外真面目にやっている様子。
「あ、おとなし……シーナくん」
「あ! ラチカくん」
声をかけてきたのはラチカ――御上千景。
このあとライブらしいので、シンプルにドルオタ活動にステージ近くへ来たらしい。
そういえば入学式以降、あまり会えていない。
「勇士隊、新入生はどうだった?」
「えーと……蓮名先輩が……全然ミーティングに出てくれなくて……な、苗村先輩も行方が知れずで……」
「え……」
「日守くんに突かれて、ぼ、ぼくがみんなを集めて、一年生の面談とか加入手続きとかを、やって、ました」
「………………」
思わず沈黙してしまった。
石動が「蓮名と苗村はグループ維持の仕事しないだろうな」と言っていたが本当になにもしていないのか。
石動と柴は卒業前の一年間で二人にグループリーダー、副リーダーの仕事を教え込んだとは言っていたのだが。
ダメそうだったから千景にも多少教えておいたけど、と肩を落としていたのを思い出して思わず目を泳がせてしまう。
石動の予想通りになり過ぎている。
「そ、それは大丈夫、なの?」
「一応……先生たちには代理リーダーのように扱われるようになってしまって……グループのホウレンソウはなぜか僕に連絡が来るようになってしまって……」
教師陣から蓮名・苗村への信用度がなさすぎる。
「一年生はええと……田島優太くん、小城野雷人くん、愛咲由依くんが加入してくれて……」
「ああ、愛咲って劇団上がりの俳優の子」
「はい。とてもいい子で……なんでも手伝ってくれるんですけど……」
「けど?」
「日守くんと……仲が悪いみたいで……」
逆に日守と仲良くできるタイプの人間っている? と聞きそうになって口を閉ざす。
笑顔でごまかしつつ、それは大変だね、と共感を示しておいた。
「あと、三年生二人が練習に顔を出してくれない上、前回の定期ライブでも戦隊モノのお芝居を始めてしまってライブにならず……」
「えっ。そ、そうだったの?」
「せ、星光騎士団は星光騎士団で大変そうでしたもんね……」
「あ、ああ、うん……」
勇士隊の出番と星光騎士団の空き時間ライブが被ってしまっていたから知らなかった。
というか、あの二人ついにやったのか。
アイドルのライブで、戦隊もののお芝居を。
さすがなんでもありの勇士隊。
いや、間違いなく二年、一年の意見は完全無視っぽい。
「日守くんがそれでものすごく怒ってしまって……熊田くんも怒っていて……」
「それは……怒るだろうね……。即興だったんでしょう?」
「はい……。先輩たちがそういうのをしたがっていたのは知っていたのですが、さすがに愛咲くん以外アドリブで演技できる人はいないので……その、ぼく含め……」
「まあ、それはそうだよね。演技慣れしてて初めて対応できるというか」
いくら蓮名たちのやりたいことがニチアサ定番のお芝居だったとしても、定期ライブに来ているお客さんたちが観たいのはアイドルのライブパフォーマンス。
しかも、先月の定期ライブは、新入生たちのお披露目がメイン。
つまり、勇士隊も新加入メンバーをファンに紹介する場面なのだ。
それなのに突然三年生たちが、無断でお芝居を始めたら誰も練習につき合っていないので訳がわからずぐだぐだになるに決まっている。
まして、勇士隊で演技に定評のあるメンバーはいない。
せいぜい新加入している愛咲くらい。
その愛咲だって、サプライズばりになにも聞かされていない状態でニチアサ定番のお芝居は宇宙猫になるだろう。
「それは……困ったね」
「思わず石動先輩にメールしちゃいました……」
「それで上総先輩昨日心配してたのか……」
「し、心配されてました……?」
「うん」
110
あなたにおすすめの小説
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
制服の少年
東城
BL
「新緑の少年」の続きの話。シーズン2。
2年生に進級し新しい友達もできて順調に思えたがクラスでのトラブルと過去のつらい記憶のフラッシュバックで心が壊れていく朝日。桐野のケアと仲のいい友達の助けでどうにか持ち直す。
2学期に入り、信次さんというお兄さんと仲良くなる。「栄のこと大好きだけど、信次さんもお兄さんみたいで好き。」自分でもはっきり決断をできない朝日。
新しい友達の話が前半。後半は朝日と保護司の栄との関係。季節とともに変わっていく二人の気持ちと関係。
3人称で書いてあります。栄ー>朝日視点 桐野ー>桐野栄之助視点です。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜
隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。
目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。
同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります!
俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ!
重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ)
注意:
残酷な描写あり
表紙は力不足な自作イラスト
誤字脱字が多いです!
お気に入り・感想ありがとうございます。
皆さんありがとうございました!
BLランキング1位(2021/8/1 20:02)
HOTランキング15位(2021/8/1 20:02)
他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00)
ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。
いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる