382 / 553
七月の定期ライブは初の試み(1)
しおりを挟むぼやぼやとしていると、あっという間に七月も末。
七月の定期ライブは平日なので、客寄せの意味も兼ねて三大大手グループが開幕を担う。
魔王軍、勇士隊と来てから三番手。
星光騎士団は本日巨大モニターからSBO内からリアルタイム配信という形。
これは東雲学院芸能科にとっても初の試み。
定期ライブは元々全国配信しているのだが、ゲーム内で行うライブを生配信するのは初めてだ。
そして――
「どうもどうもー! eスポーツチーム『ライデン』格闘チーム所属の逢魔あげはでぇーっす!」
「みんなおっはよぉー。星光騎士団団長で可愛い担当、宇月美桜ちゃんだよぉ~ん」
「星光騎士団衣装担当、後藤琥太郎でーす」
「星光騎士団ドルオタ担当、「音無淳でーす」
「星光騎士団顔面担当! 花房魁星だぜー!」
「星光騎士団頭脳担当、狗央周です」
「はいはーい! 星光騎士団役者担当、柳響ですー! どうもーぉ」
「星光騎士団ゲーム担当、鏡音円です」
「本日は鏡音くんの誕生日月ということで、鏡音くんの所属しているeスポーツチームの先輩である逢魔あげはさんにゲストとして来ていただきました~。東雲学院現地物販では鏡音くんの誕生日月お祝いで鏡音くんのリクエストを受け、我々で作ったショコラケーキの販売が数量限定で行われておりますので、ライブ後ぜひご購入くださいねー」
と、淳が手を振る。
モニターからは凄まじい歓声。
なんなら逢魔の方のコメント欄から『ケーキ!?』『誕生日月ってなに』『ケーキ売ってんの現地!?』『音無くんたちが作ったって言った?』『ケーキ作ったマ!?』『かがねくんお誕生日おめでとう~』『ショコラケーキリクエストかわよ』『普通に食いたい』『ケーキ食べたい』『朝から飯テロ』『手作りケーキ販売してるってことでおけ?』『可愛い』『ケーキー』『通販してませんか!?』という凄まじい流れ。
皆さん、平日朝十時だというのに配信の視聴者数は八千人を超えている。
くどいようだが、本日平日。
夏休みに入ってすぐだというのに、みんな出かけないのだろうか?
「誕生日月ってなんなん? ケーキ!? なんやもう気になることいっぱい言ってはるなあ!?」
「ふふふー。星光騎士団は誕生日月のメンバーのために、リクエストに答えてケーキを作るんですよぉ。ケーキは物販で有料販売するしぃ、同じレシピで製作されたケーキが『片森洋菓子店』のオンラインショップで期間限定販売されておりま~す」
「お一人ワンホール限定、予約必須と前払い制、八月いっぱいまで販売なので、ご注意くださいねー」
宇月と淳でカメラに手を振る。
超絶初心者の逢魔が「え! 本当にケーキ買えるん!? すごい!」と大変にいい反応をしてくださるので、淳たちも説明のしがいがあるというもの。
ファーストソングのステージにも、お客さんがかなり集まってきており、誕生日月のケーキのことを知らなかった層が「そんなことしてるんだ現地」「いいなー」「現地行けなくてもネット通販で買えるの!? 初めて知った!」「えー、後でネットで調べてみよ」と嬉しそうに話している。
そう、こういう現地に来れない層や、東雲学院芸能科にまったく知識のない層の取り込みが本日の目的。
そのためにゲームを通して逢魔をゲストに迎えてSBOのステージを予約した。
「ワイも食べてみたーい。ネットで注文したら食えるん?」
「はい。片森洋菓子店の方では一人用から四人用まで取り揃えておられますので、ネット注文の際はサイズをご指定くださいね」
「はあー、そんなんやっとるんやな~。で、円は今月誕生日やったん? おめでとうさんやん」
「ありがとうございます」
コメント欄が『お誕生日おめでとうー』『おめでとうー』一色になる。
淡々とお礼を言っている鏡音。
ステージの客席からも「お誕生日おめでとうー」というお祝いの言葉が飛んできて、鏡音が少し照れながら客席の方にもお辞儀をして「ありがとうございます」と返す。
「ほな! サーバーで遊んどるプレイヤーのみんなー! ワイと一緒に攻略に行こうやー! なんと今から星光騎士団のライブがあるんやとー! つまり! 無料の歌バフがてんこ盛りやでー! ってことでワイ、今から未攻略のダンジョン踏破してきますわー!」
「はーい、いってらっしゃいー」
「またあとでねぇ?」
「はいなー! ほな、ダンジョン潰して来たらまたくるさかい! そん時お話ししようなー! 一旦離脱~」
逢魔、一度ステージを降りる。
そのままワープでサードソングに飛び、そこから近場の未到ダンジョンを制覇に向かった。
数日で装備も現時点での最高のものに変えてあるので、あっという間にダンジョン踏破を成してげることだろう。
「さあ、そんなわけでー! 普段は夜だったりランダムだったりする東雲学院芸能科、星光騎士団のライブ! 平日朝の定期ライブとしてお楽しみくださいなー! いっくよー! 今日の一曲目は――」
宇月がマイクを片手に曲名を叫ぶ。
後藤がカラオケ選曲でセトリを整えて、全員がダンス開始の定位置について前奏が開始すると一斉に踊り始めた。
「~~~~♪」
現地、野外大型モニターで放映されるのは三曲まで。
それ以降もSBOステージは続くが、学院の野外大型ステージは他のグループがパフォーマンスをする。
なので、SBOステージは星光騎士団のオンステージ。
91
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる