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前日打ち合わせ
しおりを挟む去年はだいぶ余裕がなかったけれど、今年は去年より余裕がある。
今夜ホテルの部屋で最後の打ち合わせをして、明日ぶっつけ本番。
通常のライブならリハーサルもあるが、今回のは“勝負”。
ぶっつけ本番のパフォーマンスを見られる。
「あ」
『ナッシー、荷物置いたら僕の部屋来てねー』
というメッセージがスマホに届く。
はーい、と宇月の部屋に行くと「対戦表届いたよー」とのこと。
戦い方は去年と変わらない。
まずは初日二日、一発目は新曲をぶつける。
ある程度の知名度があるグループはそれで本戦の予選を突破できるのだ。
なにがやばいってBlossomは初日二日全曲新曲なのが去年の怖いところ。
しかも、パフォーマンスレベルがその道のプロのレベル。
毎年必ず一年生が入る星光騎士団には、厳しいレベル差。
そして毎年知名度の低めなグループが担当する初戦から五戦目までに、星光騎士団は配置されがち。
だが去年は準優勝。
星光騎士団は初日の最後から三番目に配置されていた。
初日の対バン相手はDancing Link Production、『applause』。
「去年もシード枠だったグループじゃない? なんかアイドルっていうかバンドっていう感じのグループだよね?」
「そう。Dancing Link Productionの顔ともいうべきバンド系アイドル。天才ボーカリストの紗遊がリーダーで、ギター季伊助とベース茂紗、エアードラムの佐保の四人組。第三回IG冬の陣優勝経験あり。集まりが悪くて、リーダー紗遊は攻撃的。トラブルが多いもののパフォーマンスと紗遊の飛び抜けた歌唱力で代表曲『オリオン座から見える恋人』は八週連続オリコン一位を記録。集まりが悪いからこそメンバー同士のわちゃわちゃが好評で、悪戯をし合う姿が『エモい』『可愛い』と人気。ちなみに全員年齢不詳。もっと補足するとギター季伊助とベース茂紗は実際他のバンドグループにも所属しており、そちらのグループは知名度があまり高くない」
「さっすがアイドルwiki、淳先輩」
「詳しい……」
「そ、そうなんだ。初めて知った……」
「あんま他のグループ見てなかったけどそんなにすごかったんだ……」
「優勝経験ありだったんだ!?」
うちのグループ、本当に他のアイドルに興味ある人が淳しかいないな。
相手の情報を持っておくことは戦略的に重要だと思うのだけれど。
感心する宇月以外のメンバーに、少しがっくりするけれどそれはまあこの際どうでもいい。
問題はシンプルに相手が優勝経験者、ということ。
アイドル寿命が二十代半ばというのは比較的有名な話だが、applauseのヤバいところはメンバー全員が年齢不詳で普通のアイドルというよりバンドグループ寄りなところだろう。
バンドグループの寿命なんて下手したらアイドルよりも短いが、長ければ七十代でも続けているバンドもある。
有名どころのバンドグループは、今も海外で活動しているニュースが流れてくるほどだ。
それもあって、applauseは今もIGの最前線を走り続ける強豪。
「楽器を弾きながら踊るパフォーマンスもすごいんですけれど、やっぱり自分たちで生演奏ができるっていうところが強いんですよね」
「それは本当に強いよねぇ。魔王軍も割と楽器つよつよメンバーが揃っているけれど、あのレベルには到達してないもんね~」
「そういえば一年生に果林トウラっていう子がいて、魔王軍なんですけど……あの子、バンド組んでライブしたいって言ってたなぁ。もしかしてapplauseのファンだったから同じようなことをやりたかったんでしょうか?」
「なにそれkwsk」
「あれ、相談しませんでしたっけ? 実はですね」
果林トウラ。
鏡音や響と同じ一年生で、三大大手グループ『魔王軍』に加入を果たした配信経験者。
自身でギターを弾いて歌を歌う動画などを投稿しており、軽音部に所属している。
魔王軍以外にコラボユニットでバンドを組み、ライブをしたいのだ、と淳に相談してきたことがある。
申し訳ないがスケジュールが詰まっていたので、千景に丸投げしてしまったのだが、結果的に『どっちにしろメンバーは自分で集めなさい』という感じに落ち着いた。
可哀想だがバンドというのは楽器ができるのが大前提。
現在の東雲学院芸能科軽音部は麻野と果林しかいない。
芸能科なのに軽音部に二人しかいないのもどうかと思うが、そのあたりは部員の頑張りが関係しているのでやはり他所の部のことを淳が知ったこっちゃないのは仕方ない。
「えーでも、話自体は面白そうかもね。うちの学院からapplauseに対抗できる新進気鋭グループがIGに出たらかなりその座を脅かせると思うよぉ」
「宇月先輩、悪い顔になっていますよ」
「おっとぉ~♪」
本当に邪悪な顔してた。
嫌がらせに余念がなくて結構である。
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