ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜

古森きり

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ドルオタの希望なので

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「待って! じゃあ事務所から『好きな食べ物なに?』とか『自炊するならレシピを教えてほしい』とか質問されてたのもしかしてコラボカフェのメニューについての質問だったの!?」
「え? そんな質問されたんですか? ……まあ、そうなんじゃないんですか?」
「松田、自炊するんだっけ?」
「しない! 無理って言った! でも捻り出してくださいって無茶振りされたからチャーハンを適当に提案した……」
「「え……」」
 
 沈黙。
 しかし、一応「ま、まあ、コラボカフェのメニューとは限らないので」と慰めておく。
 多分手遅れ。
 
「なんて言ってるんですけど、俺と上総さんにもコラボカフェメニューの質問が来ているんですよね」
「マジで料理きついんだよなぁ……自炊はしてるんだけど」
「プロテインホットケーキとかはやめてくださいね」
「ぐっ……いや、さすがにそれは……。でもプロテインバーとかでよくないか?」
「よくはないでしょう」

 石動上総、料理は作れるがジム通いで体作りにハマっているせいか食事にプロテイン必須。
 プロテイン信者。
 おかげさまでアイドルにしてはなかなかに筋肉質。
 元々その気があったが、卒業後はセーブも必要なくなった上「十八歳以上は肉体の成長も完全に止まりつつあるから、本格的に鍛えてもいいだろう」ということになっているらしい。
 朝科あさしなとはまた違った妖しい魅力のある人だったのに、ジムで筋肉が増えたことで雄らしい魅力が加わって、フェロモンが増えた気がする。
 在学中からフェロモン男の一角だったのに、「増えるのか……」と謎の絶望感を味わったのは記憶に新しい。
 なんだろう、あの絶望感。
 男としての敗北感か?

「じゅ、淳くんはなんか余裕そうだね?」
「俺料理は作れるので」
「作れるの!?」
「栄治先輩のようなアイドルになりたいので! できないことは少ない方がいい、というのと、普通に家の料理が当番制なので」
「マジで……? すごい……」

 実際は割と『早く帰ってきて作れそうな人が作る』ことが多いけれど、朝は当番通りのことが多い。
 まあ、朝ご飯は簡単なものでいいので、朝に担当した方が夜にガッツリ作る必要がないので朝担当はちょっと奪い合いだ。

「MVの流れの確認もしますけれど、コラボカフェメニュー提案は締め切りが来週なので早めに記載して提出してくださいね。ちなみに俺はお餅ピザを提案しましたね。腹持ちもいいし、カット野菜とピザソースと少量のチーズでカロリー控えめ。炭酸系の飲み物とも、お茶系とも合う。焼くだけなのでキッチンの負担も少ない。アイドルのコラボカフェは女性客が多いので、そういう配慮も必要かな、と思いまして」
「なんだよお餅ピザって……!?」
「くっそ、なんかオシャレなこと言い出したぁ……!」
「もうお前が俺らの分もメニュー考えてくれよ」
「ダメですよ、自分の分は自分で考えてください。スケジュールがきつくてどうしても無理だというのなら、リーダーとして代打をすることは吝かではありませんが、ドルオタとしては絶対にご本人が考えたメニューがいいですからね」

 沈黙。
 非常に複雑そうな表情。
 そこんところは甘やかす気はないので、にこりと微笑みながら「ファンサだと思って頑張ってください。相談には乗りますから」と言い放つ。
 少なくともプロテインは要相談案件だろう。
 
「それと、共通衣装の正式決定に向けていくつか試着用のものをスタジオに用意してあるそうです。自由に気崩すなり、カスタムオーケーだそうなのですがデザイン一箇所だけ統一させたいそうです。それ以外は好きにしろと」
Frenzyうちそのへんはめちゃくちゃ放任だよなぁ。ありがてぇけど」
「むしろどこを統一の箇所にします? アクセサリでもいいと言われたんですけれど。一箇所だけでも共通するものがないと、同じグループだと認識されない可能性が爆上がりするので一箇所だけでも、と言われまして」
「それはそうだな」

 スタジオの端に布がかかったハンガーラックが並んでいる。
 立ち上がった淳がそれの布を外すと、上着、インナー、ズボン、靴、アクセサリが並んでいた。
 仮の衣装だがすべてデザインが違う。

「色を統一する、とか?」
「なんでだよ。イメージカラーそれぞれ違うだろうが」
「自分のイメージカラーと、趣味で選んでいいのでは? 梅春さんの場合、選んだ衣装で2Dと3D衣装を作るそうなので三日以内に決めてくださいだそうなので」
「鬼なの?」

 だって仕方ない。
 松田だけはVtuberとしてデビューして、VtuberとしてFrenzyフレンジーに参加するのだ。
 都度都度2Dと3D衣装を作ってもらえるだけですごいし、事務所の金のある感じが伝わる。
 MVにもそれぞれの曲のイメージに合わせたものが作られるらしいので、通常衣装は本当にさっさと決めてもらいたいんだろう。
 
「えーとえーと……そ、んなこと急に言われてもなぁ……。ふ、二人はどんなのにするんだ?」
「俺はこれかなー。程よく露出のある、動きやすいやつ。上着は軽め。ジャージっぽいやつ。中はタンクトップ。裾短め。ズボンはダメージの入ってるやつで、靴はスニーカーっぽいの」
「俺は星光騎士団のリーダーも務めているので、動きやすさと堅実なイメージのもの……ハイネックのタンクトップとスーツ風の上着、ズボンは動きやすくかつ通気性のあるウール生地のもの、靴は丈長めのブーツの方がいいかな」
「なんで二人ともサクサク決めてんのぉ……!?」

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