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似なくていいよ
しおりを挟むマズイ、忘れていた。
宇月美桜、立派な腐男子である。
さすがにナマモノは、と声をかけたら「そ、そうなんだけどねぇー!」と本人もわかってはいらっしゃる。
でもすでにBLドラマでナマモノへの抵抗感が、と続けられては「た、確かに」と納得せざるおえない。
「わっかりますぅ! 円くんがすごい人って言ってたから検索したら本当にイケメンだし戦歴やばいしでチームのホームページからグッズ買っちゃった~」
「「え?」」
まさかの柳参戦。
ギョッとしてしまったが、柳響は役を降臨させて演じる『憑依型』の役者。
ライブの度に宇月を憑依させていたことで、似なくてもいいところまで似てしまったらしい。
宇月の表情がわかりやすく『まっずーーーーーーーい!』という顔になっている。
後輩の性癖をやばい方に歪めた可能性が、ワンチャン。
「あ、もちろん円くんのグッズも買いましたよ! 東雲学院芸能科の公式サイトで買えるやつ! 円くんの配信も最近見てるんですけど、全部かっこよくって~」
「へ、え、え、あ、そ、そうなん、だぁ?」
「だから明日の開会式絶対観たかったんですよね~。円くん、今日の前夜祭には出演しないみたいで……。でもエイランさんは出るから見られてラッキーっていうか!」
「うんうん、そうだね」
宇月はだいぶ脂汗まみれ。
自分の私生活のオタク面を見せつけられるのは確かにしんどい。
彼にはできるだけ早く宇月を演じずにライブでパフォーマンスできるようになってもらった方がいいのではなかろうか。
影響の出方がえぐい。
「一瞬で萎えちゃった……」
可哀想に、と思ったが仕方ない。
これは萎えても仕方ない。
せっかくイケメンにテンション上がっていたのに。
「ん?」
「どうしたの、ナッシー。そろそろホテルに移動しよう~。いつまでも廊下でキャッキャしているのも邪魔になるしぃ」
「待ってください。鏡音くんから個人メッセージが来ていて……」
「ええ? どうしてぇ?」
鏡音からの個人メッセージなんて珍しい。
鏡音と聞いて宇月と柳も淳のスマホを覗き込む。
内容は『明日の開会式のあと、SBOのエキシビションプレイがあるのですが先輩たち、どなたかまだ残っていませんか? バフをお願いしたいです』とのこと。
んんんん? とスマホを覗き込んでしまう。
どういうこと、と聞き返す。
『エキシビションマッチ、毎日あるんです。大会中』
『そうなんだ。明日の開会式にもあるってこと?』
『そうです。午前と午後に、それぞれ違うゲームの発売前の』
鏡音、結構読みづらい。
電話してもいい? と聞いてみるとすぐに電話がかかってきた。
「どうしたの?」
『あの、明日の開会式、朝十時からなんですけれど』
「うん」
『西3番ホールでエキシビションマッチをやるんですけど、あの、あの』
「ちょっと落ち着いて? 大丈夫だから」
文章が奇妙だな、と思ったら本人が相当にテンパっている。
ひとまず鏡音に落ち着くよう繰り返しているとようやく深呼吸をしてくれた。
『す、すみません。でも急ぎで……あの、明日の朝、開会式が終わった直後にSBOのエキシビジョンマッチが日本のセカンドチームとアメリカのセカンドチームで行われるんです。その時に、双方のチームに歌バフをしてくださる予定だった歌手の方が突然出演拒否し出したらしくて……』
「え? え? え? どういうこと? エキシビジョンマッチって未発売のゲームの宣伝を兼ねているんじゃないの? SBOはもう発売されて一年経ってるし、エキシビジョンマッチに使えるようなゲームじゃないんじゃ……」
『自分も最初に聞いた時はそう思ったのですが、スポンサー陣が突然今年デビューした新人アイドルの売り込みに使えるとかなんとか言い出して、急遽エキシビジョンマッチを各国に提案したんだそうです。なんか、その……昨日』
「昨日!?」
スポンサーの無茶振りに、各国のチームは当然困惑。
しかし、各国のスポンサーはその無茶振りを『宣伝のチャンス。うちも売り出したい歌手がいるから』と便乗。
SBO運営も今朝方『歌バフをかけることのできる歌手を用意できるのであれば、SBOを使っていただいて構いません』と返答。
じゃあ歌手も連れて行け、とのことで日本、韓国、中国、フィリピンなどのアジア圏の他、イギリス、アメリカも参戦。
サードソング近辺のダンジョン『龍水龍牙の滝』を貸し切って、全員敵のデスゲーム形式バトルロワイヤルが開催されることになったらしい。
「よ、よくアメリカやイギリスも歌手を連れてこられたね?」
『いえ、歌手は自国からログインさせればよい、ってことで……連れてきている国はいないんですよ』
「あ、ああ、そうか。でもSBOって外国展開してたっけ?」
『それがミソといいますか、実は来年度大型アップデートで高性能翻訳機能が追加され全世界展開される予定があったらしいんです。今回のエキシビジョンマッチの目玉はまさにそれで、フルフェイスマスク型VR機を開発したソルロック社とSBOを開発、運営している紫電株式会社が共同開発した高性能翻訳機能のお披露目も兼ねているとか……』
「あ、ああ、なるほど……それは……でも確かに画期的かも」
世界展開しているVRMMOは、基本的にゲーム内に自動翻訳機能が備わっている場合が多い。
しかしそれはAIの自動翻訳機能の延長上で、なかなかに意味が伝わらない場合がある。
まだまだ、その辺りは未発達な部分なのだ。
今回フルフェイスマスク型VR機を開発したソルロック社とゲーム会社紫電が共同開発した翻訳機能は、それまでのものとは比べ物にならない性能を誇る――らしい。
リアルタイムで翻訳されて、プレイヤーが発する言葉が相手プレイヤーの設定している言語で聴こえるという。
ラグの調整は今後入るだろうが、リアルタイムで翻訳というのは他のゲームには現時点で“不可能”とされている。
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