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当主含めた対談(4)
しおりを挟むご当主様方が参加した話し合いも無事に終わり、最後に家同士で正式に俺と滉雅さんの婚約は決定とされた。
なんかこう、家同士で婚約の約束がされる瞬間ってものを初めて目の前で見て感動しちゃった。
ちゃんと紙にお互いの家の家名や名前、仲人として両家の当主が署名する。
そして取り決められた諸々をセットにして、ひとまとめにしたそれが“契約書”として両家に式の日まで保管されるという。
契約書は式までの流れも書いてあるので、参考にしながら準備を進めていく。
それであんなふうに細かく書いてあったのか、と納得。
一応、クズポンタンとの婚約に際しても契約書は取り交わされていたが、婚約破棄する際にその契約書を無効にする手続きもしなければならず、時間がそれなりにかかった。
契約書には霊符ほどではないが霊力が込められ、署名と同時に署名した人物の霊力が宿る。
だから契約書の破棄は、署名した人間が霊力を抜かねばならず時間がかかるってことらしい。
納得だわ。
誰か一人でも婚約解消に反対してたら、契約書が無効にならない。
俺とクズポンタンは当事者抜きで話が進んだし、後ろ盾だった九条ノ護家が率先して婚約破棄の話を進めてくれたから守護十戒の家でない大名家の有栖川宮家では言いなりになるしかなかった。
一応、有栖川宮家も十条ノ護家の分家だが、分家と守護十戒に名を連ねる九条ノ護本家とではやはり家格が違う。
もし有栖川宮家が十条ノ護家に応援を頼んで、十条ノ護家が出張ってきていたら俺も天ヶ崎さんちみたいにクソ長引いただろうなぁ。
「ほな、粗方終わったし最後に雑談して終わろか」
「そうですねぇ。こんな機会滅多にありませんし」
「あ、滉雅、アンタはちぃとくらい舞はんと仲良くなっときぃ。アンタ口下手も口下手なんやから、舞はんをあんまり苦労させたらあかんよ。誤解とかされんようにぎょうさん話してきなさいな」
「ぐっ……!」
「お小遣いあげるから、商店街に買い物に行ってきてもいいよ?」
「ふ、不要」
黎児様が懐から財布を取り出したのを、全力で拒否る滉雅さん。
い、いじられてるなぁ……。
本人はああいういじり、すごい嫌だろうけれど。
「デェト? 行っておいで。舞さんにはわたくしがお小遣いあげようね」
「大丈夫です!?」
「いただいておきなさい。滉雅様にお世話になるわけにはいかないだろう」
「あ……! ……いただきます……」
「ほほほ。素直でいい子ね」
と、出されたお金は千円。
目が飛び出た。
これ、前世では中学生のお小遣いでも少ないくらいだが、この時代では二、三万円分ぐらいの価値。
なにしろ一円の下に一銭という単位がある時代なのだ。
怖い怖い怖い、守護十戒本家怖い。
金銭感覚ぶっ飛び過ぎてらっしゃる。
「最近流行りの“かふぇ”では“おむらいす”が食べられるらしいから、行っておいでなさいな。ああ、“ぷりん”も美味でしたわよ」
「オムライス……プリン……!?」
「そうそう、わたくしは“こぉひぃ”っていう苦い飲み物の美味しさも最近気がついたんよ。黎児はんはまだ“かふぇおれ”やないとあかん言うてますけどねぇ」
「いやいや、かふぇおれはかふぇおれで奥が深いよ。こぉひぃ、砂糖と牛乳の割合によって味がまったく異なる。砂糖は砂糖で白砂糖、黒糖、蜂蜜でも当然違いが出るし、牛乳も入れる量によってまろやかさが格段に違って……」
「はいはい。そういうわけやから、婚約者はんと親交を深めて来なはれ」
と、背中を叩かれる滉雅さん。
なるほどなぁ、黎児様はカフェオレの魅力に取り憑かれてしまったのか。
カフェオレは奥が深いよな。
コーヒーの豆の種類、焙煎具合、牛乳の濃度、砂糖の量、種類で味が千差万別。
理想のカフェオレを追い求めたらそれは深淵に足を踏み入れるということ……。
っていうか、これってあれか。
……デートか。
まあ、婚約したんだしそういうこともあるか。
デート…………………………オムライス、プリン、食いてえ……!
「こ、滉雅様がご迷惑でないのでしたら、ぜひ」
だがそこは淑女らしさを失わず、行きたいアピールはオブラートに!
ぶっちゃけお金なくて商店街とか日用品や消耗品の買い物でしか行ったことねぇ!
クズポンタンとはデートどころか接触すら誕生日パーティーで婚約破棄されるまでなかったくらいだし!
カフェの存在も今初めて知った程度には無縁の場所だったしなによりオムライス! プリン! 食いたい! 絶対食いたい!
お願い、滉雅さん! デェトっつーかオムライス食べにいかせてくれぇー!
ケチャップの作り方とか、知らねーんだ!
もしお店の人に作り方を教えてもらえたら、お弁当予算が保証された今なら家でもオムライスやプリンが作って食える!
なぜなら卵って貧乏な我が家では週に一度二つ買えたらラッキーな高級品!
滉雅さんのお弁当をオムライス弁当にするという名目で、卵がオムライスを作れるくらいに買える!
余剰分でプリンも作ってデザートにつけるから!
行こう! オムライスとプリンを食べに!!
「お恥ずかしながら、娘は十以降、雑務以外の遊びで商店街へ行ったことはございません。さぞ様変わりしていることでしょう。どうか娘を見ていてくださいませんか」
「ご苦労をなされていたとお聞きしている。俺で楽しませることはできそうにないが、それでよければ」
親父の一声で滉雅さんが出かけることを了承してくれた。
当主様にお会いするからと九条ノ護家から着物や簪を借りているし、汚さないように気をつけなければいけないけれど……外へ出るのには問題ない格好。
すぐに九条ノ護家のお手伝いさんが巾着袋を持って来て貸してくれる。
そこにはお財布や紅、白粉も入ってて万端。
もしかして、デートを言い出したのって計画的犯行……?
「行こう」
「は、はい!」
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